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第23話:3人で過ごした最後の夜(告白の連鎖)

取り壊しを待つ旧校舎の図書室。


月光だけが照らすその場所で、めぐみ、健人、このかの三人は三年前のあの日以来、初めて円を描くように座っていた。


かつての放課後のように。けれど流れる空気はもう、温かな微睡みではない。


「……ねぇ、健人くん。このかちゃん。最後に一度だけ、三人で『配信』しない?」


めぐみが不意に悪戯っぽく、けれどどこか寂しげな微笑みを浮かべてスマホを取り出した。


「……配信って、まさか……Meguとしてか?」


健人が恐る恐る尋ねる。


「ううん。これは誰にも見せない。録画するだけ。……私たちの、本当の卒業式(ラスト・ライブ)


めぐみはスマホを机に固定し録画ボタンを押した。


画面には大人になった三人の顔が並ぶ。かつての地味な読書少女、エースだった少年、優しいムードメーカー。その面影を残しながらも誰もが「誰かを傷つけ、自分も傷ついた」顔をしていた。


「……まずは、私から」


めぐみが静かに口を開いた。


「私ね、健人くんのことが大好きだった。……健人くんがくれたガーターベルト、実は今も持ってるよ。でも、あれはもう『呪い』じゃない。……私が私を愛せるようになるための大事な記念品になったの」


めぐみは自分の太ももをそっと撫でた。


かつて配信で男たちを煽るために使ったその仕草は、今は驚くほど清らかで誇らしげに見えた。


「健人くん。……あなたに『汚い』って言われた時、死ぬほど嬉しかったの。……だって私のことを本気で見てくれてたのは、あの時あなただけだったから」


「……めぐみ……っ」


健人は震える声で言葉を繋いだ。


「俺は……卑怯者だった。お前の変化が怖くて、お前が遠くに行くのが怖くて……だからお前を[#傍点]断罪[#傍点終わり]することで自分を守った。……このかと付き合ったのもお前を忘れるための逃げだったんだ」


健人は、隣に座るこのかの手をぎゅっと握りしめた。


「……でも、このかと一緒にいてわかったこともある。俺は完璧なヒーローなんかじゃない。……誰かを裏切って誰かに縋らないと生きていけない、ただの弱い人間(いきもの)なんだって」


その言葉を聞いたこのかの瞳から大粒の涙が溢れ出した。


彼女は健人の肩に顔を埋め、 shadow。絞り出すような声で告白を始めた。


「……私、めぐみちゃんのことが世界で一番羨ましかった。……地味で、大人しくて、でも健人くんの視線を独り占めしていた、あなたになりたかった。……だから、あなたの配信が荒れるように裏でずっとアンチコメントを書いていたのは……私なの」


衝撃の事実。けれどめぐみは驚かなかった。


彼女は優しく、このかの頭を撫でた。


「知っていたよ、このかちゃん。……あなたの文体はいつも優しかったから。……『もっと地味なあなたでいて』っていうコメント、あれ、私を救ってくれていたんだよ」


告白の連鎖。


隠していた醜さ、狡さ、そして執着(しがみつき)


すべてを吐き出した三人の顔には、三年前にはなかった、清々しい「諦め」が漂っていた。


めぐみは録画を止めた。


そしてその動画ファイルを迷いなく「削除」した。


「……これでおしまい。……私たちの秘密(はいしん)はこの暗闇の中にだけ置いていくね」


夜明けが近い。


窓の外が青白く白み始めていた。


めぐみは立ち上がり窓を大きく開けた。冷たい空気が止まっていた三人の時間を動かすように流れ込んでくる。


「……健人くん。このかちゃん。……私ね、明日、東京の大学へ行くわ。……もう、誰の視線も気にせず自分の物語を書き直すつもり」


めぐみは自分の髪を指でかき上げた。


そこにはかつてのように潤んだ瞳も赤い頬もない。


ただ自分の意志で明日を掴もうとする強い女性の顔があった。


「……めぐみ。……[#傍点]おかえり[#傍点終わり]」


健人がようやくその言葉を口にした。


三年前、最も言いたかった言葉。


めぐみは一瞬だけ、かつての少女のような恥じらいを見せて微笑み、 shadow。そして静かに答えた。


「……[#傍点]ただいま[#傍点終わり]。…… shadow。そしてさようなら」

第23話をお読みいただきありがとうございました!


【次回予告】

最終話(第24話):はいしん?! 〜最後に選ぶのは誰?(オープンエンド)

卒業式。

壇上に立つめぐみの姿を健人とこのかはどのような想いで見つめるのか。

式を終えた校門の前。めぐみの元へ駆け寄る一人の人物。

shadow。そして数年後。

煌びやかな世界に戻った「彼女」と日常を生きる「彼ら」のそれぞれの結末。

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