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第19話:100万目前の大型コラボ(最後の「仕事」)

都心の一等地にある、全面ガラス張りの特設スタジオ(さいだん)。そこは「Megu」という怪物を100万人の頂へと押し上げるための、巨大な祭壇だった。


スタジオの外には、深夜にもかかわらず熱狂的なファンと、スキャンダルを嗅ぎつけた野次馬が黒山の人だかりを作っている。


「いいか、Megu。今夜、すべてを解放しろ」


プロデューサーのタカシが、めぐみの首元に新しい緑の蝶ネクタイを、締め殺さんばかりの強さで結びつける。


「レオとのリベンジ・コラボ。君が彼に支配(リード)され、 shadow。そして最後に彼を『壊す』。そのドラマが、100万人目の登録者を連れてくるんだ」


めぐみは鏡を見た。


そこには、かつての地味な読書少女の面影は微塵もない。潤んだ瞳はもはや発光しているかのように妖しく、低くなった声は、聞く者の脊髄を痺れさせる毒を孕んでいた。


「……めぐじゃーにー」


掠れた声で、彼女は最後になるかもしれない呪文を唱えた。


配信開始のブザーが鳴る。同時接続数は、開始五分で三十万人。


スタジオに入ってきたのは、あのレオだ。彼はニヤけ面で、めぐみの腰を力任せに引き寄せた。


「久しぶりだね、Meguちゃん。……今日も、あの時みたいに泣かせてあげるよ」


カメラの前で繰り広げられる、過激で官能的な「ビジネス」としての戯れ。


だが、めぐみの心は、スタジオの入り口にある「モニター」に釘付けになっていた。


そこには、防犯カメラが捉えた、スタジオの外の映像。


人混みをかき分け、狂ったようにこちらへ向かってくる健人と、その袖を必死に掴み、絶叫しているこのかの姿。


(健人くん……来ちゃダメ。……見ないで……今の私を見ないで……!)


めぐみの心からの叫びとは裏腹に、彼女の身体はレオの愛撫に反応し、最高に「そそる」吐息をマイクに吹き込んでしまう。


95万。97万。98万。


数字が狂ったように積み上がる。それは、めぐみが失ってきた[#傍点]自分自身[#傍点終わり]の重みだった。


「……めぐみーーーっ!!」


不意に、スタジオの重い防音扉が蹴り開けられた。


スタッフの制止を振り切り、全身を雨に濡らした健人が乱入する。


カメラが、一瞬だけ健人の姿を捉えた。


コメント欄が爆発する。『誰だあいつ!?』『ガチ恋の乱入?』。


「……健人、くん……」


めぐみの声が、さらに低く、震えた。


レオの手が、めぐみのスカートの裾、あのガーターベルトに触れようとした瞬間、健人がレオの顔面に拳を叩きつけた。


「触んじゃねぇ!! 汚れ仕事は、そこまでにしろ!!」


スタジオに静寂が訪れる。配信は続いている。何十万人もの視線が、血を流して倒れるレオと、激しい呼吸を繰り返す健人、そして……。


「……あはは……あはははは!」


このかが、崩れ落ちるようにスタジオに入ってきた。その手には、ボロボロになった三人の思い出のスケッチブック。


「遅いよ、健人くん! この人はもう、あなたの知ってるめぐみちゃんじゃない! 見てよ、この瞳! この声! 100万人の男たちに犯されて、真っ黒になった『Megu』なんだよ!!」


このかの絶叫が、高感度のマイクを通して全世界に発信された。


99万。


めぐみは、自分を囲むカメラの列と、絶望の表情で自分を見つめる健人、 shadow。そして狂気に満ちたこのかを、ゆっくりと見渡した。


彼女は、レオの血で汚れた自分の指先を、ペロリと舐めた。


潤んだ瞳に、一筋の、けれど最高に美しい涙が伝う。


「……ねぇ、健人くん。……これが、私。……100万人に愛されて、君一人に捨てられた……背信(はいしん)の成れの果てだよ」


めぐみがカメラに向かって、自らガーターベルトの金具を外した瞬間。


画面上の数字が、ついに[#傍点]1,000,000[#傍点終わり]を刻んだ。


成功と、背信と、崩壊。


すべてが頂点に達したその時、スタジオの照明が、まるで世界の終わりを告げるように、パッと消え去った。

第20話:100万人達成配信 そして突然の活動休止宣言


100万人に到達した瞬間に消えた光。暗闇の中、三人の幼馴染は、どのような結末を選ぶのか。めぐみ、健人、このか。裏切りと愛の果てにある、衝撃のラストシーンをお届けします。

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