049 楽園への階段
赤バニーお姉さんの言う通り、再びマナが階段を登ろうとしても、バチっと来ることは無かった。
そして赤バニーお姉さんを先頭に、シーニャとマナは階段を上っていく。
「すごく高いね、マナ」
「うん。だけど風を全く感じない。どうなってるんだろ」
もはや地上は小さくなり、木々は点が集まったように森を形成し、超えてきた大河も手で掴める程の大きさで見えている。すでに相当な高さまで階段を上ってきている。
これだけ高くに登れば強い風にさらされるはずなのだが、まったくの無風。風にあおられて転落する危険が無いという意味では願ったりかなったりだ。
「ふふふ、落ちないように登ってきてね」
先頭を行く赤バニーお姉さんが笑みを浮かべる。
つまり見た目通り階段の横からは落ちてしまうということだ。
「気を付けてねシーニャ。ゆっくりと一段一段登るんだよ」
つまづいたりしないようにと改めて注意を払うマナ。
大好きなシーニャの事が心配で、過保護のお母さんになってしまう。
「もう、そんなにおっちょこちょいじゃないよ!」
ぷーっと頬を膨らませて不満を訴えるシーニャ。
「そうかなぁ。何もないところで転んだりするし」
「あれは石とか木の根とかに躓いてるの。何もあるの」
「うーん、だったら、階段も気を付けてね」
「そうだけど、むむむ、もう!」
言い負かされて不貞腐れてしまったシーニャ。
(シーニャ可愛い)
そんな様子もまた可愛いもんだと、お花畑脳のマナは思った。
「ところでシーニャちゃん。楽園ってどんなところだと思う?」
二人のやり取りを見て自分も入りたくなったのかどうか。
赤バニーお姉さんは振り返るとシーニャに問いかけた。
「楽園ですか? うーん」
ほわんほわんと脳内で思い描く楽園を再現する。
「ガーヴァルがいなくてぇ、温かくてぇ、食べ物がたくさんあってぇ、ふわふわでぇ、みんなが笑顔になれる場所!」
「ふふふ、そうね。それは見てのお楽しみね」
「楽しみだね、マナ!」
「うん、まあ。シーニャと一緒だったらどこでも楽園だけどね」
「ふふっ、お熱いわね。さあ、もう少しよ」
そんなやり取りを経て、さらに上へと登っていく。
どれだけ登っただろうか。もはや地上の景色はほとんど見えない。一面が緑と茶色と青で形成された幼児の描いた絵のように大雑把な景色となっている。
そんな階段がようやく終わりを迎える。
最上階だ。
「ここは……」
階段の最上階は四角の平べったく白い床だった。
おおよそ25㎡くらい。学校にあるプールほどの広さ。
楽園というにはあまりにも狭い。
「あれ、なんだろ」
シーニャが見つけたのは丸い筒状のもの。
この床だけしかないフロアに一つだけ目立つ構造物だ。
「あれは転送装置よ。後に続いてね」
そう言うとバニーお姉さんが円柱の中に入る。
入口は見当たらなかったが、壁に見えるのはただの映像のようだ。
そして、中に入ったお姉さんはシュンっという音と共に消えてしまった。
「消えちゃった……」
「あそこに立てばいいのかな?」
もう少し説明があってもいいかと思うが、同じようにするしかない。
「マナ……」
転送装置への不安なのか、楽園にたどり着くことへの不安なのか。 シーニャがマナの手をぎゅっと握ってくる。
「うん。一緒にいこう」
きゅっとシーニャの手を握る。
いつだって一緒。どこだって一緒。これからだって一緒なのだ。
「うん!」
不安そうだったシーニャの顔はもう無い。笑顔で温かな表情だ。
そうして二人は歩き出す。
とうとう楽園にたどり着く。長かった旅もこれで終わる。
そんな思いを抱きながら、せーので足を踏み出して円柱の中に入ると――
先に行った赤バニーお姉さんと同じように、二人も消えてしまった。
お読みいただきありがとうございます。
次回、辿り着いた楽園。お楽しみに!




