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044 リヒトデア・シャインハイロウ

「この光は……」


 不思議な光。

 パラディースシフに付き従うかのように、真横に光が沸き上がっている。パラディースシフは爆速で疾走しているのにも関わらず。


「あ、あああ、もしかして、……おかあさん?」


 ワナワナと震えるシーニャが口を開く。


 光が強くなっていき、人の形を形成する。

 その光はシーニャの着ている服と同じ服を着た大人の女性の姿へと変化したのだ。


「おかあさん!」


 シーニャが光に呼びかける。

 だが光の像は言葉を返すことはない。ただニコリとほほ笑んだだけ。


「えっ! なに? 巫女の鏡が!」


 シーニャの首から下げている巫女の鏡が突然光り出した。


『先代とのコンタクト確認。リヒトデア・シャインハイロウを継承します』


「りひとであしゃいんはいろう?」


 オウム返しにシーニャがつぶやくと――


「きゃあっ!?」


 巫女の鏡から一条の光の線が空へと撃ちだされたのだ。


「シーニャっ! 大丈夫!?」


 ぶわりと空気が動いたことから、ただの光ではなくダメージを与えられる危ない類の光であることが感じられた。


「だ、だいじょうぶ……。今、継承って言ってた。もしかしてこれがお母さんの力なの?」


 光の母は言葉を返してはくれず、再び笑みを浮かべるだけ。

 母の力である強い光の一撃。そこでシーニャは気づいた。


「あのガーヴァルの傷、もしかしてお母さんが…………。……マナ! 私やってみる」


「分かった! 操縦は任せて」


 ひっくり返っていたシーニャは立ち上がると……トンッと背中をマナの背中に着けた。


 背中合わせに密着する二人。


 (マナの熱が感じられる。マナの心音が感じられる!)


 安心する温かさ。安心するリズム。

 それを感じながら、シーニャは右手で持った巫女の鏡を後ろから迫るガーヴァルに向けて…狙いを定める。


「いくよっ! リヒトデア・シャイン、ハイロウーッ!!!!」


 光が、打ち出された。


 先ほど空撃(からう)ちした時よりも強い光だ。

 シーニャの巫女能力に反応しているのかもしれない。


「縺?■縺ゥ縺ソ縺溘o縺悶′縺、縺?§繧九→縺翫b縺?↑」


 光が迫るガーヴァルが音を発した。


 そう思った瞬間のこと。

 ガーヴァルの黒く巨大な体から何本もの触手が生え、迫る光の帯へと突っ込んで行き……そして、(まばゆ)い光をかき消してしまった。


「そんなっ! 触手が邪魔して当たらなかった!」


 ダメージは与えているのだろう。いくつかの触手は焼け焦げたように煙が上がっている。


「ええーい! リヒトデアシャインハイロウ! リヒトデアシャインハイロウ!」


 シーニャが光を連射しようとするが……鏡はプスンと小さな煙を吐いただけ。


『クールタイム中。再使用には45秒が必要です』


「ええーっ! まなぁ、だめだったぁ。ちょっとだけ効いたのに……」


「分かった」


 マナは後ろを見ていない。だけど失敗した事は分かった。だからそう答えた。

 それに、分かったと言ったが次善の策があるわけではない。


 (考えろ、どうしたら乗り切れる!?)


 頭を回す。触手が邪魔をしたという事は、本体に当てれば効果があるかもしれない。でも今みたいに直接狙ったのでは防御されてしまう。

 仮に当てたとしても倒すところまではいかないかもしれない。


 (もう一撃が必要)


 倒すためにはもう一撃が必要だと感じた。

 だが、その「もう一撃」が用意できないのだ。

 そもそも人間はガーヴァルと戦う事を想定していない。

 天敵である上位存在に抗おうなどと思うはずもないのだ。

 巫女たちはこれまでの研鑽で撃退方法を編み出したかもしれないが、その他の一般人類は違う。

 あっても危険を冒して地上で狩りをするための弓くらいだ。

 そんなものではガーヴァルに通じないだろう。そもそも今は弓を持ってもいない。


 (そうだ……)


 マナは閃いた。

 この方法ならガーヴァルに通じるんじゃないかという事を。


 (だけどどうやって……)


 思いついたがそれは空想のこと。

 今の状況では実行は不可能だ。


『赤い髪のあなた……。娘を、頼みます……』


「えっ?」


 かすかに聞こえた声。空耳かと思って、右を向いた。


「シーニャのお母さん……」


 シーニャの母の像は確かにマナの方を見ていた。そしてこくんと頷いた気がした。


「お母さん! 待って!」


 光の像がほろほろと光の粒へと変わっていき、水面の下へと戻って行く。

 そんなシーニャの叫びを聞きながら、マナは先ほどの光の母の声を思い出していた。


 (多分、最後の挨拶だ。最後に何かをするための)


「あれはっ!」


 パラディースシフの前方に水面下から何かが浮かび上がってきた。


 それは転覆した船の底。


 (これを使えば!)


 きっと最後の力を振り絞ってシーニャのお母さんが力を貸してくれたのだとマナは思った。


「シーニャ、()()()()()! アタシにしっかり掴まって!」

「うん!」


 迫る転覆した船。

 シーニャは言われるがままに、マナの体に手を回してしがみつく。


「いっけぇぇぇぇぇ!」


 そして、パラディースシフは正面に浮かび上がってきた船の底に勢いよく乗り上げた。


 ぐんっと、体に重力がかかる。

 転覆した船をジャンプ台にして空へと舞いあがるパラディースシフ。

 前に跳ぶと言うよりは、ほぼ真上に跳んでひっくり返りそうだ。


「ファイナルバースト!」


 マナが叫び、ボタンを押す。

 その瞬間、宙に浮いたパラディースシフの後方ブースターが火を噴いた。

 これが最終加速装置ファイナルバースト。


『いい、マナ。このファイナルバーストは最終手段。使ったらもうエンジンは動かなくなる。だから注意してね』


 ファッツからの教えが頭をよぎる。


 (ありがとうファッツ)


「うぉぉぉぉぉ!」


 船が宙で逆さを向く。

 重力が反転し、船から放り出されそうになるのをしっかりと耐える。


「シーニャっ! 合わせて! こいつを、パラディースシフを、この勢いでガーヴァルにぶつける!  リヒトデア・シャインハイロウで、お母さんの光で、合わせて! 目標は、あの傷だっ!」


 宙がえりになったパラディースシフ。船首は迫るガーヴァルに向いている。

 マナはこの金属の船を砲弾としてガーヴァルにぶつける事を閃いたのだ。


 強大なガーヴァルだ。おそらくこの船だけではダメなことが想定できる。

 だから、この船と、もう一つ。リヒトデア・シャインハイロウ。

 この二つをガーヴァルの古傷にぶつけることで、ガーヴァルを倒すのだ。


 ――ボウンッ


 エンジンから爆発音が上がる。

 もう持たない。これが最初で最後のチャンスだ。


「いくよ、シーニャ!」


 宙づりになる船体に左手を伸ばして、そして右手はシーニャの手を握る。

 シーニャは片手でガッチリとマナの手を掴んで、もう片方の手で巫女の鏡を持ち、狙いを定めた。


「リヒトデア! シャイン! ハイローーーーーッ!!!!」

「ファイナル! アターーーーーーーーーーーーック!!!」


 迫るガーヴァル。

 無数の触手を生み出して迫る船を撃退しようと振り下ろしてくる。


 だが、その触手は巫女の光に打ち払われ、そして――


 ――ドウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ


「縺昴s縺ェ縺ー縺九↑」


 放たれた光と、高速で突っ込んだ金属の船体が、ガーヴァルの目の右下、かつての巫女エリネルベルトが付けた古傷で交差したのだ。

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