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043 因縁のガーヴァル

 ――ハイゼクレーラの町川岸


「おい、なんかおかしくないか?」

「ああ。よく見えないけと船の近くに黒いものがあるぞ?」


 川岸で巫女たちの出発を見送っていた聴衆から声が上がる。

 船は小さくなって、そろそろ肉眼では捉えにくくなっていた。


「まさか!」


 ファッツは望遠鏡を取り出すと、はるか先を進む船へと向け、じっと覗き込む。


「ガーヴァル! ガーヴァルが湯気の中に入ってきてる!」


 間違いない。あの黒い巨体、そしてギロリとする目はそれ以外の存在足り得ない。


「ファッツ! 巫女様は大丈夫なのか!?」


「ちょっと押さないで! 手元がずれて見えなくなる!」


 僅かな誤差で望遠鏡の中からパラディースシフが消えてしまった。

 急いで角度を調整して、再びその場を映し出す。


「大丈夫、まだ無事! マナちゃん、加速だよ加速! 危ない!」


「巫女様……」


 ファッツの実況だけでは状況が良く分からない。

 町人達はこの町に恵みをもたらしてくれた救世主の無事を祈る。


「あ、あれは……」


「なんだ? ファッツ、何があったんだ!」


「あの傷は、あれは……」


 ファッツが覗く望遠鏡の中。

 ガーヴァルが執拗に船を狙って触手を振り下ろしているのが見える。

 そんな最中、ファッツはガーヴァルの体に傷があるのを見つけた。


「目の右下にある傷……あいつは! あいつは忘れもしない! エリネリベルト様を沈めたヤツだっ!!」


「どういうことなんだファッツ!」


「忘れもしない! 忘れられるもんか! あのガーヴァルはエリネリベルト様の(かたき)! みんなは見てなかったかもしれないけど、私はずっと見てた! 手漕ぎの小舟で川を渡るエリネリベルト様の前に現れたガーヴァル。エリネリベルト様は最後の瞬間、強い光を放ってガーヴァルの目の右下を光で貫いたんだ。だけど、その後エリネリベルト様は……」


「そんなことが……」


「シーニャちゃん、マナちゃん! どうか無事でいて!」


 手持ちの望遠鏡ではここまでが限界。

 視界の先へと消えた二人の無事を祈る事しかできないのであった。


 ◆◆◆


「どうしようマナ!」

「最大船速に切り替えるから! シーニャは後ろ見てて!」

「分かった! 右後ろ!」

「回避っ!」


 シーニャの合図とともにマナが操舵輪を左に回す。

 ガーヴァルに襲われることは日常茶飯事であり、緊急時のシーニャとの連携は手慣れたものだ。


 船が左に移動し、振り下ろされた触手を回避する。

 衝撃で波が発生し、大きく船が揺れ動く。


「あれ? ガーヴァルに傷がある……」


 後ろをじっと見ているシーニャもそれに気づいた。


「本当に? ガーヴァルって傷着くの?」


 今まで傷のあったガーヴァルを見たことはない。

 まずもってガーヴァルが傷という形でダメージを受けるのかは分からないし、ガーヴァルに傷をつけるような存在がいるのかどうかも分からない。

 マナは一度だけ、触手が再生しているのを見たことはある。

 ホラの町の外でおじさんが殺された時だ。あのとき触手の先端は蒸発するように消え、再び何もなかったかのように触手が生えてきた。

 体だって同じじゃないのか。マナはそう思っている。


「マナ、左っ!」

「回避っっ!」


 今度は操舵輪を右に切る。

 船が右へと傾き、触手の一撃を回避する。


「もしかして弱点なのかもしれないよ」

「弱点、っていっても、攻撃する方法も無いし……。よしっ! 準備できた! シーニャ、しっかり船に掴まって! 最大船速出すよ!」

「掴まった!」

「よし! 最大船速!」


 マナがレバーを引くとエンジンの駆動音がさらに高く激しくなり、船がグンッと加速する。

 

「きゃぁぁぁぁぁ」


 急な加速に驚くシーニャ。船にぺたりと座り込んでしっかりと側面を掴む。


「どうだ、ガーヴァル!」


 このスピードなら追ってはこれまい。このまま対岸まで一直線で突っ切ってやる、とマナは意気込むものの――


「ま、まなぁ、追ってきてるよぉ」

「うそっ!? どんな感じ!?」

「まだ遠いけど、ちょっとずつ近づいてきてる。たぶんあと20秒くらいで追いつかれる」

「くっ!」


 進む先に目を凝らすが、対岸は全く見える気配がない。

 このままでは対岸どころか川の途中で捕まって沈められてしまう。

 先ほどまでは湯気の中だったため、ガーヴァルの狙いに狂いも生じただろうが、今は湯気のないクリアな視界。ガーヴァルの視線で体が爆発することも避けながらだと、狙い澄まされた触手の一撃を防げないかもしれない。


「シーニャ! 逃げ切るために方向転換するよ!」

「えっ!?」

「川下! 川の流れに沿って下ればもっとスピードが出る!」


 目的地である川岸を諦めて川下へと向かう。

 確かにスピードが出て逃げ切れるかもしれないが、目的地から大きく逸れることは間違いない。


 マナは操舵輪を左に切って、ぐぐぐとターンし、川の流れに乗った。


 風を切る音がさらに強くなり、加速したことが体感できる。


「シーニャ、どう?」

「だめっ! 迫ってくるスピードは遅くなってるけど、それでもあと1分くらいで追いつかれちゃう!」

「だめかっ!」


 打つ手はない。


 ハイゼクレーラの町に引き返すか?


 いや、ガーヴァルが一緒に着いてきてしまうかもしれない。そうしたら町は壊滅してしまう。


 先に進むしかない。


 目的地に着くことを捨てて逃げを選んだ。

 それでも、逃げ切ることはできない。


 マナの頭に終わりのイメージが沸き上がってきたその時だった。


 水面からキラキラとした光が立ち上ってきたのだ。

お読みいただきありがとうございます。

因縁のガーヴァルと対峙するマナとシーニャ。

その時不思議なことが起こった!(定型文

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