041 第4章エピローグという名のラブコメ
ファッツが必死に行っているパラディースシフの準備は今日中には終わらないらしい。
そのため寝床が必要なのだが、ファッツの家は散らかっているため二人が寝る場所なんかない。
そこで町の長の提案で空き家を使わせてもらえることになった。
空き家とはいえ、いつも手入れをしているので綺麗な状態。すぐに寝ることも出来る。
二人は自分の持ってきた申し訳程度の荷物と先ほど買い込んだものを空き家に持ち込んで、ひと休憩。
「ちょっと買い忘れたものがあるから行ってくるね」
思い出したかのようにシーニャはそう言った。
「一緒に行くよ」
「ん、大丈夫。軽いものだから」
「わかった。気を付けてね」
「うん。ありがとマナ」
そう言うとシーニャは仮宿を出て行った。
いつもなら危険だとかなんだとか理由を付けて絶対に一緒に行くマナだったが、めずらしくシーニャを一人でお使いに出した。
その理由は――
「はぁぁ、これ、どうしようかな……」
荷物の中にこっそりと隠していたものを取り出してベッドの上に広げる。
それは、白い水着。
先ほどの服屋でおやじがオススメしてきたものだ。
下着のように見えるそれはトップスとボトムスが別れたセパレート型で肩ひものないビキニタイプ。
「すごく細い……」
じっとボトムスを睨むマナ。一般的な水着の中では布面積は普通で、サイドも紐ではないので細くはないのだが、水着を始めてみるマナにとっては、紐同然の細い布と変わりはない。
これをどうやって渡せばいいのか。
勢いで買ってはみたものの、冷静になって考えたらこれを渡したらどんなことになるか。
「嫌われてしまう……」
面積の少ない布を手に持ったまま、ボスンと後ろに倒れ込んでベッドに体を受け止めてもらう。
「うーん……」
寝ころんだままもう一つのプレゼントを見る。
金色のラインが入った白いリボン。リボンと言っても最初から形があるタイプではなく、細長い一本のものだ。
こっちは水着と比べて渡しやすいはずだ。
とはいえ、どのタイミングで渡すべきなのか。
いざ渡すとなると恥ずかしくて、店を出てから今まで渡せずにいた。
「とりあえず、なんとかこっちは渡さないと……」
「ただいまー!」
「うわあっ!」
急にシーニャが帰ってきたのだ。
いつの間にか結構な時間が経っていたことになる。
マナは慌ててベッドに散らかしたものを自分のカバンの中に放り込んだ。
「あれ? マナ、どうしたの?」
「い、いや? なんでもないよ?」
今気づかれてはならない。さも何もなかったように振る舞い切らねばならない。
「そう? それよりもマナ、これ見て!」
「なに?」
帰宅早々、シーニャが今買ってきたであろう物を取り出してベッドに並べる。
「え゛っ!?」
それを見たマナは変な声が出た。
そこに赤色の下着のように見える水着が置かれたからだ。
「マナにプレゼント! 服屋さんで見かけてね、これは買いだって思ったの!」
ニコニコ顔のシーニャ。
それとは対照的に引きつった顔のマナ。
なぜなら、その水着はマナが買ったものよりも布面積は小さく、大事なところをかろうじて隠すことはできるが、それ以外はヒモだったからだ。
「だ、だめっ! こんなの着れないよ! 返してきなさい!」
「ええーっ、絶対にマナに似合うよ! ほら、すごく綺麗な赤。マナの髪の色とおそろいなんだから」
「色は問題じゃないって! 恥ずかしいじゃない!」
「そんなことないよ! いつものマナと変わらないから!」
「え゛っ!?」
また変な声が出た。
いつもと変わらないと言ったか、この子は。
確かにへそ出し太もも出しの格好をしていた。動きやすいし涼しいからだ。
だからって、この紐と一緒にされるのは心外だ。
「ねね、着てみてよ!」
「着ないっ! いつもこんな格好してない!」
「あっ、その、ごめんね……。そうだよね、こんな変態ハレンチストみたいな服をプレゼントされても困るよね……」
「そうだよ! あたしはこんな格好してないから!」
「うん。マナは健康へそ出しショーパンスタイルで腹筋美だから」
なにやらシーニャが言い出したが、何一つマナは理解できていない。
とりあえず振り上げてみた矛を振り下ろすことが出来なくなっているのもある。
無言でぷいっとそっぽを向くマナ。
「分かった。返してくる……」
しおしおとなったシーニャが紐水着を回収していく。
そんな様子を怒った素振りで見届けているマナ。
いつもは押しの強いシーニャもさすがにこれは駄目だと思ったのか、素直だ。
そうしてシーニャは再び仮宿から出て行った。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」
マナは大きなため息をついてベッドに倒れ込んだ。
(ああああああ! あんなに言っちゃったらもう水着なんて渡せないよ! 無理、無理! 絶対無理! あああああ!)
身悶えするマナ。
(まさかシーニャがアタシ用の水着を買ってくるなんて思わないじゃん! それも破廉恥の極みみたいな! アタシが選んだのが霞むくらいに破廉恥なの!)
自分が買った水着はあれに比べると破廉恥ではない。
だけど、ジャンル的には同じで、自分が拒否しておいて、先に買ってたからと言って理屈が通るものではない。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」
大きなため息をついたあと、綺麗に仕舞いなおして、荷物の奥底に封印することに決めたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
拙者ラブコメ大好き侍で候。
ラブコメ大好き侍にも流派がいろいろあって、拙者はラブコメを読むより書くほうが好きな侍で候(意味不明)
というわけで、第4章完結!
心が通じ合ったマナとシーニャはとうとう大河を超えることになります。
次回から第5章、大河を渡れ! をお送りします。
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