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異世界アウトドア紀行 ~食べて作って、愉快な仲間と気ままな冒険~  作者: 深嶋ねむり
第1章 -出会って、食べて、狩りをして-

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第2話

 森の拠点。


 満足フィッシュサンドを食して、少しだけ語らったリク達は、午後の活動に入ろうとしていた。

 今更ながら疑問に思った点がある。


「ラフィーネって、夜寝る時どうしてた?」

 昨晩は夕食を済ませてから疲れて眠くなったリクは、いつものように無意識でテントに戻って寝ていた。

 失念していたと言えばそうだし、そもそもラフィーネの安全をリクが心配する必要もないと言えばそうだが、少し気がかりではある。


「そこにぶら下がって、寝てた」

「ぶら下がる?」

 近くの木を指さして言うラフィーネに、少し困惑を覚える。

 蜘蛛系の魔族だからか、やはり吊られていると落ち着くのだろうか?


「こんな感じ」

 そう言ってラフィーネはおもむろに自らの両足を糸で縛って、先ほど指さした木に向かって指をクイッと引いた。

 すると彼女の体は引っ張り上げられて、逆さ吊りの状態に……


「ストォォッッップ!!!!!!」

 リクは叫んですぐさま顔を逸らした。

 白と薄紫が基調になったワンピースを纏っているラフィーネが、何の躊躇もなく自らを逆さ吊りにしたのだ。

 この先の光景は火を見るより明らかである。詳細が気にならないと言えば嘘になるが!


「昨日と同じようにしたよ?」

 質問してきたのにどうして見ないのだろう? と、心底分からなそうな表情をしているのだろう。

 無論リクはその表情も目に入れることは出来ないが。


「分かった! 大体分かったから、一旦降りてくれ」

「へんなリク」

 少々不服そうだが、蜘蛛系魔族美少女は、飲み込んで地に降りて来てくれたようである。


 そう、今更だがラフィーネは人間ではないのだ。

 

 魔族の生態はラフィーネの言葉からイマイチ掴めなかったが、彼女は蜘蛛としての特徴も併せ持っているようだ。

 普通の人間なら、逆さ吊りになって一晩過ごすなど拷問も良いところである。

 しかし蜘蛛であれば、糸で上から逆さに吊られているイメージが湧く。

 彼女にとっては快適な姿勢だったのかも知れない。


 リクの中に疑問が浮かんだ。

 そう言っても人型なわけだから、人と同じ寝方も快適なのでは?


「なぁラフィーネ、これでちょっと寝てみない?」

 リクが指さしたのは昼寝に使っていたハンモック、ここに転移していた時も熟睡していた魔性の寝床だ。

 これなら魔族様と言えどもリラックスできるのでは? と、少々試して欲しくなったのだ。


「んと、こう?」

 ラフィーネはゆっくりその曲線に身体を預けて横になる。

 最初は慣れない体勢にそわそわしていたが、次第に表情もリラックスしてきた。

「わるく、ないかも」


 1つ思いついた!


「ラフィーネの糸って、出した後そのまま残したり出来る?」

「ん、できるよ」

「ならさ! このハンモックと同じ形に編んで、こうちょっとだけ伸び縮みするみたいな感じは?」

 ”伸び縮み”のところで両掌を広げたり狭めたりするジェスチャーをしながら語ると、ラフィーネは大体分かってくれた様子だった。

「やってみる」



 近くの木に向かって、ラフィーネは掌を向ける。

 一瞬だけ指が小刻みに動いたような気がして、最後は握るように閉じてから手を引いた。

 まるでゆるく形作った結び目を引っ張るような、そんな動作。


 手が止まると、そこには純白の糸で編まれたハンモックが出現していた。


 再び見ても原理は分からない。

 ラフィーネがそうあれと手を動かせば、そこには望んだ質感の糸が出現するのだ。


 もはや見るのは癖になってきているが、リクは『神眼Lv.1』で注視する。


 ---------------------------------------------

 『ハンモック』

 特徴:アラクネ=ロードの糸で編まれた逸品。

 用途:休息用。

 それはまるで、永遠の眠りを体験するような。

 ---------------------------------------------


 うん、フレーバーテキストみたいなのが恐ろしい。


 とにかく見るからに綺麗で、寝心地も最高級そうなハンモックが出来上がったのだ。

 リクはひとしきり目を丸くしてからラフィーネの方を向くと、彼女は得意げな表情を滲ませている。

「やっぱすごいな、ラフィーネ」

「とうぜん。寝てみてもいいよ」

 薄っすらドヤ顔のラフィーネさんのお言葉に甘えて、リクはその純白の曲線に身を預けてみた。


 ……


 一瞬、視界がぼやけたところまでは記憶している。


 ラフィーネが細い指でつんつんと、リクの頬を突いていた。

 我に返る。寝ていたのだ。ほとんど自覚もないほどぐっすりと。


 確かに頭は横になる前よりもスッキリしている。


「俺、寝てた?」

「うん。すごい気持ちよさそうだったから、私もちょっとだけ寝てた」

 無機質な中にも少しだけ、やれやれみたいな表情が浮かんでいる。

 拠点の上に広がる空模様を見るに、寝たのは1時間程度だろう。

 昼寝にはちょうどいい塩梅だった。


 リクは起き上がる。


 改めて『神眼』でハンモックを注視してみたが、先ほど表示された内容から変化はない。

 つまりはラフィーネが言っていた通り、出現させた糸は残すことも出来るとこれで分かった。

 

 そうなればこのハンモックを量産してもらって売ったり……なども過ったが、気の早い話だろう。


 

 思えば、この世界に来てからサバイバル+αくらいの生活しかしていない。

 人の暮らす街ではどんな文明レベルなのか、全く情報がないのだ。

 地球にだって電波の通じない秘境はあるし、逆にこの世界の街が高度な情報社会を形成している可能性もある。


 あと気になるとすれば、魔法が存在するかどうか。


 少なくとも不思議なスキルは眼に宿ったし、目の前には暫定めっちゃ強い魔族の女の子もいる。

 もし魔法もあれば……と想像したリクの頭の中でいろんな可能性が広がった。


 火の魔法なら火起こしが楽になるのは勿論、工夫次第で料理に応用出来たり。

 土の魔法があれば、火と組み合わせて調理の幅は広がるし、クラフトに応用出来そうな気もする。

 水や風もそうだ。使い方次第で、アウトドアを楽しむ可能性は無限大になる。


 もし覚えて使いこなせたらの話ではあるが。


 そう物思いに耽っていると、横からラフィーネが顔を覗き込んでいるのに気が付いた。

 言われなくても分かる。これはそろそろお腹が減って来たと言う顔だ。


「夕飯作るか~」

「うん!」

 飯の話をすると、分かりやすく笑顔が咲いた。

 ラフィーネは一緒に時間を過ごすほど、表情が柔らかくなってきている。


 さて、真っ暗になってしまう前に暖かいご飯を食べよう。

 明日のことは食べ終わってからゆっくり考えれば良い。


 拠点の夕暮れには、焚火がパチパチする音と、食材を刻む小気味いい音が満ちていた。

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