第21話
カレントの街、北門付近。
片道3日の行程を終えて、リク達とパルマー商会の一行は、交易都市『カレント』にたどり着く。
石造りの立派な外壁があり、門も巨大で横には衛兵の詰め所もある。
街道側のこちらには冒険者や商人たちが通過待ちの列を作っており、その順番を待っているところだった。
「なぁカイル。今更だけど、俺らもギルドカードを見せれば入れるんだよな?」
「そうか、リクはこの辺来るの初めてだもんな。ギルドは国を跨いだ組織だから、基本どんな街でも身分証になるぜ」
「安心した。ありがとな!」
意外とゆるいと言うか、信頼で成り立っているシステムなのだろう。
冒険のための身分だけは証明するが、それ以外は自己責任とある意味では厳しい世界だ。
そうこうしている間に、リク達の番が回ってくる。
「では身分証を」
「はい。ギルドカードでお願いします」
「では拝借して。ふむふむ、登録から1週間足らずでDランクに昇格。とても優秀な冒険者のようですね」
「あはは。まぁ、頑張りました」
リクはぎこちない笑顔を浮かべながら返されたギルドカードを受け取る。
「カレントは諸国の様々な物が集まる交易の街です。どうぞ楽しんで行ってください!」
「なるほど! 食品が集まる市場とかもありますか?」
「市場でしたら、門を抜けて大通りを歩けば自然と着きます。きっと見応えがありますよ」
「わかりました。ありがとうございます!」
リクは門番に軽くお辞儀をして、その大きな門を抜ける。
その先の光景に思わず息を飲んだ。
多くの人が様々な目的を持って、四方八方を往来している。
ローヴェンの人口密度の比ではなく、並び立つ建物も数は勿論、大きさや階数も規模が違う。
異世界の大きな街に来た!——と改めて感じた。
「ではカイル君、リク君、ラフィーネ君。我々はこのまま換金と仕入れに向かうとするよ。帰りの出発は明日の朝だから、それまでは君達もこのカレントを楽しんでくれたまえ!」
「はーい! ラッセルさん達もまた後で!」
「素材の事もよろしくお願いします」
「あぁ。ではまた明日に!」
ラッセルは商人の本番はここからとばかりに、気合いの入った表情で部下を引き連れ、街の奥へと駆けて行った。
「さて、俺は市場に向かうけど、ラフィーネとカイルはどうする?」
「私も食べ物、見たい」
「俺も一緒に回りながら、気になるもんあれば買うくらいで良いぜ!」
「じゃあ、決まり! 行くか」
リク達3人は、街の景色を眺めて盛り上がったりしながら、街の中心にある市場へと向かった。
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カレント中央市場。
仕入れたばかりの新鮮な食材、諸国の珍しい品、様々な物を扱い出店が軒を連ねる圧巻の光景だ。
店舗を構える商店とは違い、皆その場の会話や商談を楽しんでおり、活気と熱量が溢れる場所である。
「リク、あれ何? いい匂い」
「確かにいい匂いだな?」
見れば大きな肉の塊(神眼によるとラム肉)を回転させながら焼いて、火が通った部分を削ぎ落としている様子だった。
それを生野菜と共にソースを絡めてから薄パンに挟んだもの。言うなればドネルケバブだ。
「あぁデュナーサンドか。2人とも見るの初めて? 美味いぜこれ!」
「似たようなのは食べたことあるけど、カイルは食べたことあるんだな」
「まぁな! ラッセルさんの依頼で何度もカレント来てるし、わりと毎回食ってるかも」
「これ食べたい!」
「分かった分かった。ちょっと待ってな~」
リクとしても久々のラム肉を堪能したかったので、財布に手を伸ばした——が、カイルが割って入るように手をかざす。
「おやっさん、デュナーサンドを3つ!」
「あいよ、作りたて持って行きな!」
カイルが会計を済ませて、リクとラフィーネにも渡してくれる。
2人は少し首を傾げながら受け取りつつ、屋台の横に空いたスペースまでとりあえず移動した。
「どうしたんだよカイル?」
「いやぁ、振り返ってみると今回の依頼って巻き込んだ形になったろ? これは俺からの詫び料みたいな?」
「あんな凶暴ハトとの戦いに巻き込んだとしては、随分安い話だなぁ~?」
「いただきます! はむっ——もきゅ、もぐ」
デュナーサンドで手を打ちたいカイル、意は汲みつつ一旦イジるリク、もう食べているラフィーネ。
それぞれちょっとズレてるようで、このメンバーらしい空気感がそこにはあった。
「まぁマジレスすると、ラッセルさんからちゃんと3人分の報酬も出るし、俺もこの街に来れて良かったから気にしてないよ」
「だよな? リクなら分かってくれると思ってたぜ!」
「……もう1個、食べたい」
リクとカイルの話は予定調和に着地し、ちょうど食べ終わったラフィーネが物足りなさそうに2人を見つめていた。
「カイル。俺は手打ちでも良いんだが、ラフィーネはそうでもないようだぜ?」
「ぷっ、ははっ! 了解。その程度ならお安い御用だ。俺らもこれ食ったら追加で買うか!」
「よろしく、着いたばかりで俺も腹減ってたし!」
カイルの詫び料は当初の倍額で決着することとなった。
そうしてデュナーサンドを堪能した3人は、引き続き市場を気ままに見て回る。
すると今度は、しばらくぶりの覚えがある。香ばしい匂いが漂ってきた。
ローヴェンではなかなか見つけることの出来なかった。あの目が覚めるような香り。
転移数日で手持ちは飲みきってしまった。気分転換には欠かせないあの飲み物!
「ラフィーネ、カイル。こっちに行こう!」
「ん、いいよ」
「どしたどした?」
リクは2人に声を掛けながらその屋台へと駆けて行った。




