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異世界アウトドア紀行 ~食べて作って、愉快な仲間と気ままな冒険~  作者: 深嶋ねむり
第2章 -出かけて、作って、嗜んで-

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第19話

 2日目、朝の街道沿い。


 ——誰だ? 朝獲れピジョンで上手いとか思った奴!


 過去の己に悪態をつくリクは、馬車を降りてカイルやラフィーネと共に敵を待ち構える。


 100メートルほど向こうから迫って来るのは、都会の景色でも見かけた馴染みのあるフォルムだった。


 ---------------------------------------------

 『アサルトピジョン』

 ピジョン属 アサルトピジョン種

 STR:D

 AGI:C

 DEX:D

 INT:E

 HP:D

 MP:E

 危険度:C

 特徴:単体危険度はD相当。

 ---------------------------------------------

 

 地面を歩く土鳩の見た目で、人の身長ほどもあるサイズが10体で群れを成している。

 より違和感をかき立てるのは、その発達したクチバシ。明らかに戦う鳥の面構えだ。


 アサルトピジョンなんて名前からして平和と程遠いが、この鳩はさながら全隊突撃を仕掛ける兵士のようだった。


「正面の3匹は俺が相手するから、後続を2人で頼む!」

「了解……はぁ~、もうやるしか」

 

 ため息混じりなリクと対称に、食いしん坊スイッチが入ったラフィーネは、期待に満ちた目で獲物たちを見据えている。

 彼女は迎え撃つ準備として、ダガーナイフを糸で括ってくるくると回転させていた。

 

 このやり方なら、ワイヤーとナイフでトリッキーに戦うスカウトとして、周囲の目を誤魔化せるだろう。

 先日まで主にリクとカイルが語り合って考案した戦法だ。

 

 準備が整った様子を見たカイルは前に出て、鳩の先鋒3匹と戦い始める。

 そこから斜め前に飛び出したラフィーネは、カイルの戦う場所を避けつつ糸付きのダガーを横凪に投げた。

 

 直線で突撃してきたアサルトピジョンたちは一斉にすっ転び、隙が生まれる。

 すかさずラフィーネは空いた左手を小刻みに動かして、クチバシや脚などの危険な部位を目立たないように括った。


 ここでリクとラフィーネは、カイルよりも前に出る。

 

 通りざまに確認すれば、既にカイルが1匹倒して2匹目にも傷を負わせていた。

 この程度なら時間の問題!——とでも言わんばかりの余裕が、その横顔から垣間見えた。


 リクは『神眼Lv.2』を発動する。


 イビルディアーの解体時に見えた、あの光る白のライン。

 生きた個体でも見えるかは未知数だったが、仮に無理でも鶏ハツ(心臓)の位置は凡そ把握している。

 

 少し手間取るかどうかの違いだが……リクの読みは当たった。

 

 ホーンラビットの時と同じく、状態表示は『捕縛』。

 イビルディアーの時と同じように、デジタル表示で半透明化された体内と、心臓に繋がる白いラインが視界に映った。


 リクの眼が青白く、微かに発光する。


 今はただ、その導きに従えばいい。

 ショートソードを構える。白線に沿って切っ先を刺し込む。引き抜いて心臓の状態を確認する。


 アサルトピジョンのデジタル表示された心臓には、ショートソードで開いた傷がしっかりと残っている。

 それが脈動する度に、生気がみるみる失われていった。


「次——」


 そう呟いて、近くに転がっていた鳩にも同じように止めを刺す。


 ラフィーネも作戦の意図は見失っていないようで、リクの見様見真似にダガーナイフを突き立てていく。

 残り羽数も少なくなって来たところで、先鋒との勝負がついたカイルも加わって、程なく敵は全滅した。


 これがラフィーネの能力を目立たないよう活かしつつ、的確に処理していく『止(と)め刺し戦法』だ!


 周囲が静かになったのを確認して、カイルが商会の人達に「もう出ても大丈夫」と声をかける。

 荷馬車の陰から顔を出したラッセル達は、アサルトピジョンの遺体がいくつも転がっている状況に目を丸くしていた。


「……8、9、すごい! 10体は仕留めてるじゃないか」

「俺らに任せて良かったでしょ? ラッセルさん!」

 カイルが得意げに鼻を鳴らす。

 今回はラフィーネの援護を受けずに1人で3体を相手したのだから、これはドヤ顔も許されるだろう。


「そしてリク君にラフィーネ君もだ。冒険者になったばかりと聞いていたが、やはりAランク討伐は伊達じゃないね。群れをこれほど早く片付けてしまうとは!」

「あ、ありがとうございます! ほんと2人のおかげって言うか、あはは」

 謙遜しつつもややこしくならないよう賛辞は受け取り、嘘は言ってない。

 安全にトドメを刺して回っただけとは言え、今回はちゃんと戦闘に参加したのだから上出来だろう。



 こうして人員や貨物の安否確認が済めば、大事な後処理の時間である。


 今回は商会スタッフの中に解体が出来る人もいたので、アサルトピジョンの遺体は手分けして処理することとなった。

 

 ここでもリクの『神眼Lv.2』は本領を発揮する。

 既に巨大な鹿を問題なく解体できているので、等身大の鳩くらいなら問題なく処理することができた。


 売り物になる素材、食用になる肉、続々と戦利品が積み上がって行く。

 その光景を見たラフィーネは、肉の方に目を輝かせていた。


 さて、噂のアサルトピジョン肉はどんなものなのか……


 ---------------------------------------------

 『アサルトピジョン肉』

 特徴:栄養価が高く旨味も強い。

 用途:食用。

 ---------------------------------------------


 大きく瑞々しい鶏肉みたいな見た目も併せて、確かに良い食材として扱われるのが頷ける。

 イビルディアーみたいな生食はさすがに適さないだろうが、使い勝手の良い鶏もとい鳩肉は多彩な料理に使えるだろう。


「リク、どんな料理作ってくれるの?」

「そうだなぁ。使い道がたくさんある肉だし、ちょっと考えるよ! カイルは素材どうする?」

「俺は換金で良いぜ! 服は作らないから、羽毛とかあっても持て余すしな」

 ラフィーネの要求は予想通り。カイルの方は念のため確認したが、ラッセルさん任せで問題なさそうだ。


「ではラッセルさん、肉は今夜皆さんの分も含めて俺が料理します。余った分と素材はお任せしても良いですか?」

「ふむ、リク君たちがそれで良いのなら、ぜひご相伴に預からせてもらおうかな。運搬や換金は勿論引き受けよう」

「ありがとうございます! 向こうの事情は分からないんで助かります」

「ああ。カレントにある私の伝手で、最大限に活かすと約束するよ」

 やり取り自体は、持て余した分をプロに任せると言う簡単なものだが、リク的には商人気分を味わえてちょっとワクワク出来た。


 戦利品の扱いが決まって積み込みも完了したところで、荷馬車は再度出発する。

 

 野営までに使える食材や調味料なども確認しながら、メニューを考えるとしよう。

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