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異世界アウトドア紀行 ~食べて作って、愉快な仲間と気ままな冒険~  作者: 深嶋ねむり
第2章 -出かけて、作って、嗜んで-

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第16話

 ローヴェン『鎧の剛腕亭』


 業火、轟音、豪快、まさに剛腕!


 リク、ラフィーネ、カイルの3人は夢中でこの食堂の名物『特製剛腕ピラフ』をかき込んでいた。

 以前食べた時と相変わらず、ライスに絡まったバターと鶏ガラのコク、食欲をそそるスパイスの香りやソーセージの満足感は絶品だった。


 人は美味いものを夢中で食べると無言になると言うが、夢中でかき込む3人はまさにそれだった。


「かぁ~! 喰った~!!」

 満面の笑みでカイルは腹を掌で抑えながら椅子にもたれる。

 食堂と言う居酒屋に近い環境もあってか、リクは居酒屋で見ていた常連客の姿を思い出した。


 振り返れば、ローヴェンに訪れてから1週間くらい経っている。森で過ごした時間も合わせると、転移してからもう半月近くが経過していた。


 リクとしても己を薄情とは思っていないので、1日に1回くらいは店のみんなの事とか、自分の抜けたシフトの心配をしたりはする。

 とは言え帰るための手がかりも全く無いので、思いを馳せるだけになってはしまうが。


「そういや、リクとラフィーネはDランクに昇格したんだろ?」

「うん。何かイビルディアー討伐の最終的な評価査定に時間かかったとかで、昨日レイラさんに言われたな」

「まぁあんだけのバケモンを討伐したとありゃ、新人でもEランクには置いとけないってなったんだろ」

「俺としては何度も偶然だって言ったんだけどな。実際……」

 当の打ち倒した本人であるラフィーネは、リクの目線も意に介さず、夢中でピラフを小さな口にかき込んでいる。


 あの戦いでリクは全く戦闘の役には立てず、カイルもツノ1本を折るのが関の山。結局ラフィーネが拳ではたいたのが直接の決め手だ。


 そんな話を馬鹿正直にすれば、騒ぎになるのは目に見えているので、最終的に全員の手柄として受け入れたが、あまり注目株みたいに扱われてしまうのは困りものである。


「Dランクになりゃ受けられる依頼の幅も増えるし、リクは何かやりたい仕事とかねぇのかよ?」

「うーん、つっても俺の実力じゃないし、あんま危ない依頼はやりたくないんだよなぁ」

 

 こういう時はカイルの呑気が羨ましい。


 カイルもイビルディアー討伐を大げさに誇って調子に乗るような事はしていないが、とは言え受けた賞賛に遠慮する素振りもない。

 実際に命は賭けたし、ダメージも与えたのだから、謙遜し過ぎる理由もないのだろう。


「悩んでるならよ、ちょっと俺の仕事って言うか、欲しいもの買うのに付き合ってくんね?」

「あぁ、俺の方は別にいいけど、ラフィーネは?」

「……むぐもぐ、ごくり。ん? リクがいいなら、いいよ」

 ようやくピラフを間食したラフィーネも、特に悩む様子もなく了承してくれた。


「んじゃ、決まりだな! 奥さんー、おあいそで!」

 カイルの喋り方とか雰囲気から出る”おあいそ”(お会計)の言い回しは、耳に馴染んで聞こえた。

 実際に口からは出たのは全く別の言語なのだろうが、自動翻訳的なシステムは、その辺の情緒みたいなものを考慮してくれるようだ。



 ---



 『パルマー商会』本店売場。


 その店内は、これまで入ったことのある武器屋や雑貨屋とは違って、ショールームのような佇まいだった。

 平積みの商品を手に取って会計するような形態ではなく、サンプル品やカタログ的な資料が置かれていて、奥には商談用のスペースがある。


 リクは勿論、カイルも含めて多くの冒険者はあまり訪れることが無さそうな空間だった。


 入店してカイルが受付に要件を伝えてから程なくすると、奥からオーナーらしき30代ほどの男が出てくる。

 彼こそ道中でカイルがふわっと説明してくれた、商会長のラッセル・パルマーだろう。


「カイル君、よく来てくれた。3人と言う事は、今話題のパーティメンバーとご一緒かな? ささ、皆さんこちらに座って」

 ラッセルは物腰柔らかな雰囲気で、商談スペースのソファに誘導してくれた。

 冒険者ギルドとは直接関係ない商人にまで、イビルディアーの件は轟いていたようだ。


「初めましてのお二人もいるからまずは自己紹介を。私はラッセル・パルマー、ここの商会長をしている。よろしくね」

 ラッセルはにこやかな笑顔で、リクとラフィーネと順に握手を交わした。

「えっと、初めまして。俺はリク・タテイシって言います」

「ん、ラフィーネ」

 リクもビジネスマナーに明るいわけではないので、失礼が無いか正直自信はない。

 ラフィーネはいつも通りの反応だが、別に王族の謁見でもないので、ラッセルには変わった女の子と思われるくらいで済むだろう。


「それでさっそく本題だが、カイル君はタングライト鉱石を購入したいんだったね?」

「そうなんすよ、ラッセルさん。剣がこの通りで、修理がてら耐久性も強化したいかなって」

 

 そう言ってカイルは、腰の剣を鞘から半分引き抜いて、先日壊れた魔石機巧のパーツや凹んだ刀身をラッセルに見せた。

 どうやら彼も、カイルとのこうしたやり取りには慣れているようで、顎に指をあてたまま「ふむ」と剣の状態を確認している。


「確かにここまで酷いと、打ち直すかいっそ買い替えた方が良さそうだ。とは言え後者は端から君の頭にない。カイル君の魔石機巧を組み込むには、刀身の形状も特製だろうからね」

「さすがラッセルさん! 俺の事よく分かってくれてますね」

「まぁ冒険者の中では珍しい商会のお得意様だからね。とは言え、タングライト鉱石か……」

 カイルの剣や魔石機巧について、和やかに喋っていたラッセルの表情が少し曇る。


「何か、あったんすか?」

「いやね。通常なら大した問題ではないんだが、今は在庫がほとんどないんだ。しかも君を含めて複数からの引き合いが来ている」

「あちゃ~、マジか。その口振りなら他は商店とか工房からの引き合いっすよね?」

「理解が早くて助かるよ、カイル君」


 カイルが普通に商談が出来ている事にも驚いたが、その上で両者には本音で会話する信頼関係もあるようだ。

 持ち前の陽気な性格もあると思うが、いつも大雑把に感じるカイルは、時折人を惹きつける側面がある。


「普段の取引き規模で言えば、君の要望を断るのが普通だ。でもね、私はセオリーだけで商売をするのはあまり面白くないと思っているんだ」

「待ってました!」

 カイルは膝をぱしん! と打って、ローテーブルに顔を乗り出す。

 

 リクはちょっとだけ苦笑いを浮かべる。

 おそらくこの先の交渉に巻き込まれる可能性が高い。と言うか、それを見越してここに連れて来られた事に気付いたからだ。


 今度はイビルディアー討伐みたいな命がけとか、過度に注目される事にならなければ良いのだが……

2章の投稿開始まで大変お待たせしました!

こちらの作品では、投稿について以下の流れに変更させていただこうと思います。


今後ある程度の話数がまとまった段階で、投稿させていただこうと思います。

最新話はカクヨムとアルファポリスにて更新しておりますので、ぜひそちらをご覧ください。


・カクヨム

https://kakuyomu.jp/works/2912051605365811982


・アルファポリス

https://www.alphapolis.co.jp/novel/469803277/605081908

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