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異世界アウトドア紀行 ~食べて作って、愉快な仲間と気ままな冒険~  作者: 深嶋ねむり
第1章 -出会って、食べて、狩りをして-

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第14話

 山脈の麓、岩塩の採掘場。


「ロロ、ロロロロロ、ロードぉぉ!!!!??」

 カイルは後ずさって目を見開き、驚愕の声を上げている。

 薄々予想はしていたが、やはりラフィーネクラスの魔族はそう言った反応をされるらしい。

 

 ここまでなるべく悟らせないように動いていたのは、正解だったようだ。


「まぁほら、カイルも魔族のルールは分かってるだろ?」

「そ、そりゃあ一緒に冒険もした仲だし、危険とかそう言う目では見てねぇけどよ」

「べつに、リクもカイルもおいしそうじゃない」

 ラフィーネさんは今日もブレないようだ。


「まさか回廊越えて出てくるロードがいるなんてなぁ」

「そんなに珍しいのか?」

 神妙な面持ちで語るカイルに、リクは当然の疑問をぶつける。


 カイルは魔族とロードについて知ってることを話してくれた。


 以前も話に出たように、魔物の中でも会話ができる存在を『魔族』と定義している。

 様々な種族がいて生態はそれぞれに違うが、概ね魔族は数が少ない。

 

 そして稀に、魔族の中で脅威的な進化を遂げる個体が現れると言う。

 それこそが、ラフィーネもその1人である『ロード』だ。

 

 発生条件は種族によって異なり、希少なため人間側が実態を知るのは困難である。


 そして2つの要因から、実際にロードを知る者は殆どいない。

 1つは、ロードとされる個体の多くが、魔族領の奥に居を構えていること。

 もう1つは、ロードになるとラフィーネのように、完全な人の姿を取れるようになるからだ。


 それこそ魔族領に最も近いローヴェンには、他のロードが潜んでいるかも知れない。

 並外れた能力を見せなければ、ただの人のように振舞うことも可能だからだ。

 

 冷静に考えれば、これが人と魔族の戦時下なら恐ろしいことである。


「ってな感じで、街でこのことが知れれば、みんな俺みたいな反応すると思うぜ」

「街のニンゲン、カイルみたいな顔になったら、こまる」

「って普段からこんな顔しねぇっての!」

「まぁまぁ、顔のことは置いといて落ち着けよカイル」

「てめ、リクも俺の顔に文句あるってのかオイ!…………ぷふっ」

 何だかおかしくなって、直後には3人の笑い声が響いていた。


「はぁ~、何か驚いて損した気分だぜ!」

「俺も最初はビックリしたけどさ、こうして一緒にいるとただの食いしん坊だろ?」

「むーっ」

 ラフィーネが初めて怒ったような視線を向けて来た。

 食いしん坊と言うワードに混じった、いじりのニュアンスを感じ取ったのかも知れない。

 

 殺気が混じっていないことは、リクとカイルにも分かっていた。


 ラフィーネは本当に表情が豊かになった。なんて、親心みたいな感想を抱く。

 そんなリク自身も、以前よりフラットな感覚でラフィーネを見ている実感があった。

 友達、仲間、きっとそんな関係になれたのだと思う。



 こうして3人の語らいが落ち着いた頃、人がぞろぞろと向かって来る気配があった。

 各々武器や鎧を装備していたり、杖を持った魔道士まで勢揃いだ。

 

 リク達の横に転がっている巨大鹿(だったもの)を倒しに来た討伐隊だろう。


 彼らから見れば、3人の冒険者が解体された魔物の横で談笑している光景だ。

 すぐさま駆け寄って来て、その場が大変な騒ぎになったのは言うまでもない。


 そんな喧騒がひと段落した頃。

「こいつを持ち帰る段取りが付いて良かったな、リク」

「そっか! 夢中で解体したのは良いけど、俺たちじゃ持ちきれないもんな」

「わたしはここで、たくさん食べても良かった」

 ラフィーネがどこまで本気かは未知数だが、3人でどうにか出来る量ではないだろう。

 カイルのこの表情を見れば、持ち帰る人手は後から何とかなるのが読めていたようだ。


 実際その後は、取れた鹿肉を分ける約束で、みんな喜んで運搬に手を貸してくれた。

 リク達からすれば使いきれない分のお裾分けだが、冒険者たちも滅多に味わえない食材に興味津々だった。

 

 こうして帰路を経てギルドに報告するまで、驚く程スムーズに事は運んだのである。


 ---


 ギルドの受付カウンター。


「まさか初っ端でAランク倒してくるなんてねぇ~、やるじゃん」

 初めてギルドを訪れた時に手続きをしてくれた、タレ目のシゴデキ受付嬢が褒めてくれる。

 表情や声に賞賛の気持ちも込められているが、やはりどこかフラットでむしろ安心だ。


「何かたどり着いた時には弱ってたんですよ。カイルもいたし運が良かったのかも!」

 嘘である。

 

「壮絶な、戦いだったんだぜ? レイラさんにも俺の活躍、見て欲しかったな」

 壮絶だったのは本当だ。

 声のトーンを落としてキザに決めてるカイルにはイラっとするが。

 

 今更だが、このシゴデキなお姉さんはレイラさんと言うようだ。


「んで報酬なんだけどさぁ、ギルマスに掛け合ったんだけど、あんま増額は出来なかったよ。ごめんね」

 事情を聞く限りでは無理もない。

 

 最初に採掘場で暴れた時には、現地に変異体を識別できる人員がいなかった。

 実際Bランクのドレッドディアーでも、大きさによっては撤退の判断になるらしい。


 持ち帰った素材や体の特徴からも、Aランク個体の討伐と正式に記録されたわけだが、用意された報酬額はBランク相当。

 元々金貨30枚だったのを35枚に引き上げてもらっただけでも、充分にありがたい。

 

 本来ならAランクの討伐は金貨50枚~が相場らしいので、確かに見劣りはするのかも知れないが。


「ちょっと前の無一文からここまで来たんで、俺の方は文句ないですよ!」

「私も、おいしいお肉が手に入ったから、まんぞく」

「2人とも……! 本当に良い子達なんだねぇ」

 カウンター越しから伸ばされた手に、リクとラフィーネは撫でられる。

 嬉しいけど何かちょっと気恥ずかしい。

 

「え? 俺は俺は!?」

「アンタの方はもう少し謙虚に生きな~」

「そりゃないぜー!」

 彼らのやりとりを見ていたギルド中に、笑い声がこだました。

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