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転生ギタリストは異世界で音を鳴らす  作者: 神凪狐龍
1章 失った音、始まる音

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8話 祝福の日



 お披露目会が終わり、私達は片付けを始めた。

 元あった位置に物を動かそうとすると、ミレナさんから、私達が今回作ったこのスペースは今後、試奏するための場所にすると言われた。

 どうやら店内で演奏してる姿がとても気に入った様だった。


 結局―

 ガルドさんは、あの後何も言わなかった。

 

「……じゃあな」

 

 それだけ言って、作業に戻っていった。

(……なんだったんだろう)

 引っかかる。

 でも、聞くことはできなかった。

 褒められた。

 それは、分かる。


 だけど――

 

(それだけじゃ、ない)

 あの視線。

 あの、言いかけた言葉。

 頭のどこかに、ずっと残っていた。

 でも、やることは変わらない。


 それから私達はまた、練習の日々に戻った。

 ギターを持ち弦を弾く。

 そして、カノンと音を合わせる。

 ただ、それだけだ。

 

「シオン!そこ、もうちょっと強く!」


「……ん」

 

 音を重ねる。

 何度も。

 繰り返す。

 少しずつ。

 少しずつ。

 そして、音は形になっていく。

 

 でも――

 

(これで、いいのか)

 ふとした瞬間に、浮かぶ。

 だが答えは、出なかった。

 だから。

 ギターを弾く、考えるより、先に。

 弦を鳴らす。

 そんな日々が、続いた。

 

「ねえシオン!」

 

 カノンの声。

 

「今のいい感じだったよ!」

 

 いつも通りの、笑顔。

(……変わらないな)

 それに少しだけ、安心する。

 

「もっとやろ!」


「……うん」

 

 私は頷き、音を重ねる。

 迷いも、違和感も、全部抱えたまま。

 それでも。

 前に進むしかなかった。


 ――そうして。

 季節が巡り。。

 風が変わり、空の色が変わり。

 気づけば――

 一年が、過ぎていた。

 

「シオン」

 

 ある朝、母さんに呼ばれる。

 

「早く準備しな!遅れるよ!」


「……わかった」

 

 分かっている。

 今日は――

 “洗礼の日”だ。

 七歳になった子供が、教会へ行く日。

 祝福を受け。

 スキルを授かる日。

 

「カノンちゃん家も来るってよ」


「うん」

 

 カノンも一緒に行くことは知っていた。昨日、カノン自身から聞いたから。

 準備が出来て、私と母さんは家を出た。

 朝の空気は、少しだけ澄んでいた。


 しばらく歩いた道の先に、白い石でできた建物が見えてきた。

 教会。

 その前に――

 カノンがいた。

 

「シオン!」

 

 いつも通りの声。

 でも。

 少しだけ――

 緊張しているようにも見えた。

 カノンは私に駆け寄り、私の顔を見てきた。


「一緒だね!」


「……そうだね」

 

 私は苦笑いしながら答える。私も緊張しているのがバレた。


 私達は並んで石の階段を上る。

 扉の前に立つ。

 開け放たれた扉の中から、静かな空気が流れてくる。

(……ここで)

 何かが、変わる。

 そんな気がした。

 

「いこ?」

 

 カノンが、小さく言う。

 

「うん」

 

 私は頷き、そして――


 私達は、扉を潜った。

読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


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