6話 重なり続ける旋律
あの日から。
私は、カノンと一緒に練習するようになった。
いつもの場所――
家の裏手で、私がギターを構え。
カノンが隣に立つ。
「よし……いくよ?」
「うん!」
弦を弾く。
ジャラン――
その上に、声が重なる。
まだ、少しズレるけど。
でも――
前より、ずっといいと思った。
(近づいてる)
練習は、ほぼ毎日だった。
練習を重ねる毎に音が、重なっていった。
「そこ、ちょっと低いかも!」
「……ん」
指の位置を直し。
もう一度弦を弾く。
ジャラン――
「うん!今のいい!」
カノンが嬉しそうに笑う。
(分かるんだ……)
音の違いを。
ちゃんと、感じている。
だから――
(合わせやすい)
言葉は少なくても。
音で、伝わる。
でも。
ずっと練習だけ、というわけでもなかった。
「ねえシオン、ちょっと休憩しよ!」
草の上に座る。
「シオンってさ、前から楽器やってたの?」
一瞬、言葉に詰まる。
「……ちょっとだけ」
「へぇ〜!だから上手いんだ!」
(……上手くはない)
そう思いながらも、何も言わない。
「カノンは?」
逆に聞く。
「わたし?歌うの好きなだけ!」
くるっと回って、笑う。
「気づいたら歌ってた!」
その言葉に、少しだけ納得する。
(だからか)
あの、自然な歌。
作られたものじゃない。
“感覚”で歌っている。
だから――
(合う)
そんな日が、続いた。
時々。
二人で街に出ることもあった。
「これ美味しいよ!」
屋台の串を差し出される。
「……ん」
一口かじる。
「おいしい…!」
「でしょー!」
カノンが笑う。
他愛ない時間。
でも――
(悪くない)
むしろ。
(……楽しい)
カノンと出会ってから数ヶ月が過ぎ、季節が、変わる。
そして――
ギターの音も、変わっていた。
指は、もう迷わない。
コードも、自然に押さえられる。
(弾ける)
そう思えた。
「シオン!」
カノンが声をかける。
「そろそろ、やってみよ?」
「……やろう」
私は頷いた。
これまで、毎日、何度も合わせてきた。
そして、少しずつ、形にしてきた。
音の流れ……繋がり……。
私は、ギターを構えカノンを見た。
二人の息を合わせる。
そして――
弦を弾く。
ジャラン――
今までとは違う。
繋がる音。
流れる旋律。
その上に――
――♫
カノンの声が重なる。
自然に。
迷いなく。
最初から、決まっていたみたいに。
音が、ひとつになる。
(……できた)
最後の音が、消える。
静寂。
「……すごい」
カノンが、小さく呟く。
「これ……出来てたよね?」
「うん、できてた」
私は短く答えた。
けど、胸の奥は、少しだけ熱くなってた。
(形になった)
一人じゃ、できなかったけど。
二人ならここまで来れた。
「ねえシオン!」
カノンが、ぱっと笑う。
「もっと作ろ!」
「うん」
私達の音は、まだ始まったばかりだ。
だけど――
確かに。
一歩、進んだ。
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