4話 形になった音
本日もありがとうございますm(_ _)m
あれから数日……。私はまた、ガルドさんの楽器工房にいた。
作業台の上には、未完成のそれが置かれていた。
(やっぱり……強度が足りない)
あれから、色々試したが、弦が耐えられない。
そこで、全部止まる。
「そんな顔してどうしたんだい?」
振り返ると、そこにはガルドさんの奥さんのミレナさんが柔らかく笑っていた。
「……足りない」
「足りない?」
「強度が……」
ミレナは少し考えて――
「うーん、それなら」
手をぽん、と叩いた。
「魔物素材を使ってみるかい?」
「……魔物素材?」
「えっと……ほらこれだよ。前に仕入れたことがあったんだよ」
そう言って、棚の奥から束を取り出す。
細く、しなやかな繊維。
「これは……」
「フォレストウルフって魔物の腱さ。丈夫でね、よく弓にも使われるんだよ」
(……いける)
手に取った瞬間、分かった。
さっきの弦とは違う。
「これ……使える」
ガルドさんがちらりとこちらを見た。
「ほう……。分かるのか」
「……これなら、張れる」
「やってみよう」
再び、作業が始まる。
腱を整える。細く裂き、撚る。
太さは六種類。
ガルドさんの手が動く。
無駄なく、正確に。
数日の試行を経て。
弦が完成した。
そして――
張る。
一本。
また一本。
緊張が走る。
だが――
弦は、切れなかった。
「……おお」
ミレナさんが小さく声を上げる。
「……いけるな」
ガルドさんが呟く。
六本、すべて張り終える。
形は、もう完成に近い。
「……あとは調整だ」
弦の張りを整える。
強すぎてもダメ。
弱すぎてもダメ。
耳を澄ませる。
ひとつずつ。
音を合わせる。
(この音じゃない)
少し回す。
(違う)
もう少し。
(……これだ)
一本。
また一本。
時間が、過ぎていく。
やがて――
すべてのチューニングが完了した。
「……できた」
私は小さく呟いた。
手の中にあるそれは、エルンとは違う。
だが――
(ギターだ)
「弾いてみろ」
ガルドさんが言う。
私はそれに頷き、構える。
廃材で作って貰ったピックを持ち。
息を吐き。弦に指を置く。
そして――
弾く。
ジャラン――♪
「……!」
響いた。今までとは違う音。
広がる。繋がる。
もう一度。
コードを押さえる。
弾く。
音が、重なる。
(出た……)
頭の中にあった音。
それが――
現実で、鳴った。
「……すごいねぇ。こんな音を出すエルン見たことないよ」
ミレナさんがそう呟いた。
「面白ぇもん作りやがったな」
ガルドさんが、笑って私の背中を叩いてきた。
……少し痛い。
私は言葉を返さず。
ただ――
もう一度、弾く。
ジャラン――♪
音が、広がる。この世界に、無かった音。
(……やっと)
指に、確かな感触が戻ってくる。
(戻ってきた)
音を鳴らすこと。それが、自分だった。小さく、息を吐く。
私のギターが出来た……。
そして――
私は、もう一度弦に触れた。
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