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転生ギタリストは異世界で音を鳴らす  作者: 神凪狐龍
2章 王都出立

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31話 近づく気配1


 あの初めての依頼を達成してから、数日が経った。


 あの日のことは――

 街の中でも、話題になっていた。

 

「……聞いたか?」


「あぁ、子供が大人の冒険者を倒したってやつだろ……」

 

 そんな声が、どこかで聞こえる。

 

(……広がってる)

 

 予想はしていた。

 でも――思ったより早い。

 私は、小さく息を吐いた。

 

 ジャラン――♫

 

 指を動かす。 音を鳴らす。

 いつもの場所。 いつもの時間。

 けれど――

 

(……違う)

 

 空気が、少し変わってる。

 視線や……気配。

 それが以前よりも、はっきり感じる。

 

「ねえシオン」

 

 私だけではなくカノンも感じているのか、少しだけ声を潜めて。

 

「なんか……見られてない?」


「……だね。見られてる」

 

 私は苦笑いしながら応えた。

 カノンも少しだけ肩をすくめる。

 

「やっぱりかぁ……」

 

 カノンの足元ではルナが、小さく鳴きながらソワソワしていた。

 やはり、少しだけ警戒しているようだ。

 ヴェルクの方は、静かに周囲を警戒していた。

 

(……ヴェルク達も感じてるか)

 

 森で感じたものとは違う。

 でも――

 

(……増えてる)

 

 確実に、“何か”の視線が増えていた。

 

「ねえ、ギルド行く?」

 

 カノンがいつもの調子で言う。

 

「……なんで?」


「この前のこと、ちょっと気になるし」

 

 カノンの提案に少し考えた。

 

(……確認、か)

 

 悪くないと思う。

 

「……行こうか」

 

 私達は数日振りにギルドへと向かった。



 私達がギルドに入ると――

 ギルド内の空気が、少しだけ止まった。

 集まる視線。

 前より、はっきりと向けられていた。

 でも――

 

「……ああ、あいつらか」

 

 ざわつきは、思ったより小さかった。

 恐れ。警戒。そして、少しの興味。

 

(……以前とは変わったなぁ)

 

 色々な感情。


 (……はぁ。面倒だなぁ)


 そう思いつつ、私達はカウンターへ向かった。

 

「あら、来たのね」

 

 受付のお姉さんが、少し苦笑する。

 

「この前は……大変だったみたいね」


「……少しだけ」


「“少し”で済む話じゃないと思うのだけれどね……」

 

 お姉さんは小さくため息をついた。

 でも――

 

「助かったわよ」


「……?」


「変なのが増えると困るのよ。ギルドとしても」

 

(……そういうこと)

 

 お姉さんの言葉に納得する。

 ギルド側としては、不穏な分子に居なくなって貰う方が有難いと……。

 

「ねえ、あの人たちって……」

 

 カノンが小さく聞く。

 

「処分とかされたの?」


「さすがにね。罰金と……資格の剥奪ね」


「へぇ……」

 

 流石に重い罰則が課せられたらしい。

 カノンも少し安心した顔をする。


 その時だった。

 ――ギィ。

 扉が開く音。

 何人かの冒険者が入ってくる。

 その中の一人が、こちらを見た。

 そして――

 一瞬だけ、目を細める。

 

(…………)


 私は少し警戒をしていたが。 

 でも、誰も絡んではこない。

 ただ、距離を取るだけだった。


 (これ…私達も危険なやつだと思われてない?) 


 私は周りの反応に苦笑した。

 

「ねえ、シオン」


「ん?」


「なんかさ」

 

 カノンが、少しだけ楽しそうに言う。

 

「ちょっと“冒険者っぽく”なってきたよね」


「……なってるのかなぁ?」


「なってるって!」

 

 カノンが笑い。ルナも、楽しそうに鳴き。ヴェルクは、静かに目を細めていた。

 私はその様子に頭を抱えた。


 

 ――その時。

 ふと。

 背中に、違和感が走った。

 

(……また)

 

 視線。

 でも――

 今までよりも、はっきりしている。

 

(……近い)

 

 私は振り向いた。だが、そこには何もない。

 いつものギルドの光景しかなかった。

 ざわめきに人の流れ。

 それだけだ。

 

(さっきのは……)

 

 確実に、私達を見てる“何か”がいる。

 でも、見えない。

 気配だけが――あった。

 

「シオン?」


「……なんでもない」

 

 私はカノンにそう答えた。

 でも――

 

(……気のせいじゃない)

 

 あの森の時と違う。

 教会の時と似た。

 

(……何かが)

 

 私達の成長に合わせて。

 何かが――

 私達に、近づき始めていた。

読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


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