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転生ギタリストは異世界で音を鳴らす  作者: 神凪狐龍
2章 王都出立

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27話 白い狐、黒い狼

まさかの予約投稿設定ミスってたという…


 森の中は、穏やかな空気に包まれていた。

 演奏が終わったあとも、狐はカノンの足元から離れようとしなかった。

 

「……ふふ、ほんとに懐いちゃったね」

 

 カノンが嬉しそうに笑いながら、その白い毛並みを撫でていた。

 狐は気持ちよさそうに目を細めている。

 

「ねえシオン」


「……ん?」


「この子に、名前つけてもいいかな?」

 

 その言葉に、私は少しだけ考える。

 

(……つける気満々じゃない)


 私はカノンの考えをよみ苦笑する。 

 でも――悪くないとも思った。

 

「……いいと思う」


「やった!」


 私が許可すると、カノンはぱっと顔を明るくし、名前を考え始めた。

 

「うーん……白くて、ふわふわで……音に反応してて……」

 

 カノンは狐を見つめながら、真剣に悩んでいた。

 

「月みたいで……きれいで……」

 

 一瞬、空を見上げて――

 

「――ルナ!」

 

 ぴたりと、言葉が決まった様だった。

 

「ルナ、ってどう?」

 

 狐に問いかける。

 すると――

 ふわり、と尻尾が揺れた。

 

「……♪」

 

 小さく、音のように鳴いた。

 

「いいって言ってるよね!?」


「……多分」

 

 カノンは満足そうに頷いた。

 

「じゃあ今日から、あなたはルナ!」

 

 その瞬間――

 ふわり、と空気が震えた。

 まるで――目には見えない“音”が、重なったように。


「……え!?」

  

(……?)

 

 ほんのわずか。

 でも確かに、カノンの方から魔力が“繋がった”感覚があった。

 その違和感に意識を向けていた――その時。

 ――すっ。

 

(……っ!)

 

 気づくと気配が、すぐ後ろにあった。

 振り向くと、そこには――

 あの黒い狼が、すぐ近くまで来ていた。

 静かに。じっと、こちらを見ていた。

 

「わっ……!」

 

 カノンが少し驚く。

 

「いつの間に……」

 

 でも、不思議と怖くはなかった。

 襲って来るような気配が無かったのだ。

 それに――

 

(……逃げない)

 

 これは――

 

(……待ってる?)

 

 そんな感じがした。

 

「ねえシオン」


「……ん?」


「この子にも、名前つけてあげようよ」

 

 カノンがそう言ってきた。

 

「……いいのかな」

 

 私は、小さく呟き。

 そして、視線を狼へと向ける。

  

「……うん。……名前、つけるよ」

 

 ゆっくりと、言葉にする。

 

「……嫌なら、離れて」

 

 確認するように言った。

 

 だが――

 狼は動かなかった。

 襲ってもこず。離れて行こうともせず

 目も逸らさず。じっと、こちらを見続けていた。


 

(……拒否はしない、か)

 

 それだけで、十分だった。

 私は、少し考えた。

 黒い毛並み。静かな圧。

 そして、音を聴いて現れた存在。

 

(……強くて、静かで……でも、繋がってる)

 

 そして、口を開いてその名を告げた。

 

「――ヴェルク」

 

 その瞬間。

 狼の目が、わずかに細められた。

 

 次の瞬間――

 ドクン、と。

 胸の奥で、何かが脈打った。

 まるで心臓ではなく、“魔力”そのものが脈打ったように。

 

(……っ!?)

 

 魔力が、流れる。

 いや、それは流れというより――“共鳴”だった。

 私から――狼へ。

 そして、狼から――私へ。

 繋がる。

 はっきりと、分かる。

 

「……シオン?」


「……今の……」

 

 言葉にしかけて、止まる。

 同じように、カノンも目を見開いていた。

 

「……もしかして、シオンも感じた?」


「……うん」

 

 二人で頷く。

 これは――偶然じゃない。

 確かな“契約”。

 私は、目を閉じる。

 意識を内側へ。

 すると――

 浮かび上がる。

 新しい項目。

 

 ――――――――――――――――――

【スキル】 ・テイム Lv.1

【従魔】 ・ヴェルク(影音狼)

 ――――――――――――――――――


 (……増えてる)

 

 さらに、意識を向けると――

 新たなスキルと従魔――

 ヴェルクの“状態”が分かった。

 

 そして。

 カノンの方を見る。

 

「……カノンも、見てみて」


「え?」


「ステータスって」


「う、うん!」

 

 カノンが目を閉じる。

 数秒後――

 

「……え!?なにこれ!?」

 

 ぱっと目を開く。

 

「スキル増えてるんだけど!?」


「……テイム?」


「そうそれ!」

 

 カノンは興奮した様子で頷く。

 やはり、カノンにもスキルを得ていた。

 

「あとね――」

 

 足元の狐――

 ルナを抱き上げて。

 

「この子……ルナのこともでてた!」

 

 嬉しそうに笑う。

 

(……やっぱり)

 

 私は、ヴェルクを見た。

 大きな狼型魔物、襲われたら絶対助からない様な存在。

 でももう――

 

(……ただの魔物じゃない)

 

 繋がっている。

 確かに。音で。魔力で。

 そして――

 意思で。

 

「ねえシオン」


「……ん」


「この子たち、もう……仲間、だよね?」

 

 カノンの言葉に、私は少しだけ考えて。

 

「……うん」

 

 短く、答えた。

 ルナが、嬉しそうに鳴き。

 ヴェルクは、静かに目を細めていた。

 

 森の中。

 音が繋いだ、新しい関係。

 それは――

 

 これから先、私達と共に歩む存在だった。

読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


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