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転生ギタリストは異世界で音を鳴らす  作者: 神凪狐龍
1章 失った音、始まる音

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25話 二人の進路


 魔法適性検査を受けてから――

 2年が過ぎた。


 あの日のことは、今でも覚えている。

 水晶に触れた時の感覚。

 ヴァルディス様の視線。

 そして――

 その日から感じる見られているという感覚。


 けれど。

 日々は、変わらず続いていた。


 私がギターを弾く。

 カノンが歌う。

 音を重ねて、曲を作る。

 そして、偶に魔法の練習を。

 

 そんな毎日。


 ――でも。


 その音は、確実に広がっていた。



―――――――――――――――――


 ある日のことだった。


「……シオン、お客様だよ」


 母さんが難しい顔をしながら呼んできた。

 どうしたんだろうと思いながら私は向かう。

 外に出ると、そこには見覚えのある人物――

 教会の使いの男が立っていた。


「……何か?」


「教会からの伝達だ」


 短く告げられる。


「王都にある教会本部から、学院へ入学する為の推薦が出ている」


「……推薦?」


 一瞬、意味が分からなかった。


「前に行われた魔法適性検査、およびその後の報告を受けてのものだ」


それは淡々とした説明だった。

(……その後の報告)

やはり、あの日から感じてた違和感は教会の監視だったのか……。

 

「君と、カノン。二名だ」


(……私達が?)


 突然の学院への推薦――

 何故、教会が私達を学院に推薦するのか……。

 それは、私の予想外のことだった。



 その日のうちに、カノンの家でも話があったらしい。

 夕方。いつもの場所。


「ねえシオン!」


 カノンが、少し興奮した様子で駆けてくる。


「聞いた!?学院の話!」


「聞いた」  


 私は短く答えた。



「すごくない!?王都だよ!?」


「……うん」


 すごい、とは思う。


 でも――


(……いいのか?)


 この街を離れること。

 今の生活を変えること。


 少しだけ、迷いがあった。


「シオンは、どうする?」


 カノンが、少しだけ真剣な顔で聞いてくる。


「……行く?」


 その問いに、すぐには答えなかった。


 私は考えていた。

 これからの音のことを。

 そして――


(もっと、遠くへ)


 今のままでも、音は作れる。


 でも。


(……足りない)


 

 もっと――

 この世界の音を知りたい。


  

 もっと――

 この音を広げたい。


「……行く」


 私は悩んだ末、短く答える。


 カノンの顔が、ぱっと明るくなる。


「ほんと!?」


「うん」


「よかった!じゃあ一緒だね!」


 嬉しそうに笑う。

 その顔を見て、少しだけ安心した。


 その日の夜。

 私達は、母さん達に話をした。

 教会から――王都の学院への推薦をもらったこと。 そして、それを受けるつもりだということを。

 一瞬、沈黙が落ちた。

 

「……王都?」

 

 母さんが、少しだけ目を見開く。

 ここから王都は遠い。 簡単に行ける場所じゃない。行ったら、しばらくは会えなくなる。

 

「……うん」

 

 私は短く頷く。

 隣で、カノンも小さく頷いた。

 

「学院って……あの、すごいところ、だよね」

 

 少し不安そうに呟いたのは、カノンの母さんだった。

 

「貴族の子とかも通うって聞くし……」

 

 しばらくの沈黙。

 やがて――

 

「……そっか」

 

 母さんが、小さく息を吐く。

 

「シオンが、自分で決めたんだね」


「……うん」


「なら――応援するよ」

 

 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 

「カノンも、いいの?」


「うん!」

 

 迷いのない返事。

 

「もっといろんな人に、歌聞いてほしいし!」


 カノンの母さんは少し驚いて――

 それから、優しく笑った。

 

「……そうだね」


「カノンが決めたなら、応援するよ」


「ほんと!?」


「うん」

 

 そのやり取りを見ながら、私は静かに息を吐く。

 

(……よかった)

 

 不安はある。

 でも、それ以上に――

 

(……新しいステージに……行きたい!)

 

 その気持ちの方が、強い。

 王都。

 まだ見ぬ場所。まだ知らない音。

 その先に、何があるのかは分からない。

 でも――

 確かに、進んでいる。 


 数日後。


 正式に、私達は推薦を受けることを決めた。

 ただし――


「入学は一年後になる」


 教会からそう告げられた。

 どうやら学院へは10歳から通う事になっているらしい。


「それまでに、基礎学力を身につけてもらう必要がある」  


 読み書き、計算、魔法理論。

 今の私達には、足りないものばかりだった。


 それからの一年は――


 今までとは、少し違う日々になった。


 朝は、勉強。

 昼は、手伝い。

 そして、夕方からは――


 練習。


 ギターを弾き。

 歌を唄い。

 音を重ねる。


 もちろんスキルも、使う。


 《音響構築》。

 《共鳴歌》。


 このスキルはあの時よりも、ずっと扱えるようになっていた。


「ねえシオン!」 


「……ん?」


「王都って、どんなとこなんだろうね」


 カノンが、空を見上げながら言う。


「いっぱい人いるのかな?」


「……いると思う」


「すごい人もいっぱいいるかな!」


「……多分」


 短く答える。

 でも、私もわくわくしていた。


(……楽しみだ)


 知らない場所。

 知らない音。


 そこにはきっと――

 今までにない“何か”がある。


 そんな、新しい音との出合いを――期待していた。





 音は、広がっていく。


 この街から。

 もっと遠くへ。


 まだ見ぬ場所へ。


 そして――


 その先で待っているものを、

 私はまだ知らない……。

第1章はここまでとなります。


次章から週2投稿にしたいと思いますm(_ _)m

予定では水、土曜日更新にしようと思います。



読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


この小説を読んで面白いと少しでも思って下さったのなら、↓の★★★★★、ブックマークで応援してくれると嬉しいです(ㆁωㆁ)



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