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転生ギタリストは異世界で音を鳴らす  作者: 神凪狐龍
1章 失った音、始まる音

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22話 深める知識


 音に、魔力を込めれる事を発見したあの日から――

 私達は、雨が降ってきた日は魔法の勉強をすることにした。


 今日は他の教本で初歩の詠唱の勉強だ。 

 紙の擦れる音だけが、静かに部屋に響いていた。

 机の上には、数冊の書物と、走り書きのメモ。

 私はその一つを手に取り、眉をひそめる。

 

「……詠唱……長いなぁ」


「それが普通なんだと思うよ」

 

 向かいに座るカノンは、少し困ったように笑っていた。

 広げられているのは、基礎魔法の解説書だ。

 だが、その内容は――

(効率が悪い)

 私の感覚では、そうとしか言えなかった。

 魔力の流れを整え、言葉に乗せて放出する。

 

 あの日――

 音に乗せて草花に影響を与えたことで、感覚としては理解できる。

 

 だが――

 その“言葉”が長すぎる。

 

「……これ……全部言わないとダメなの?」


「うーん……省略すると暴発するって書いてあるよ?」


「……だね」

 

 ぱらり、とページをめくる。

 詠唱の違いによる威力変化――

 精神状態との関連性――

 魔力消費量の増減――

 

 ――理論は、ある。

 けれど。

(どこか、型(・)に縛られてる)

 音楽と似ている、と私は思った。

 楽譜通りに弾けば、誰でも同じ音が出る。

 だが、それだけでは――響かない。

 

「……カノン」


「なに?」


「……ちょっと。……試していいかな?」

 

 カノンは一瞬きょとんとしてから、すぐに頷いた。

 

「うん。危なくない範囲なら」


「……多分、大丈夫」

 

 自信は、半分くらい。

 だが――

 確信もあった。

 私は目を閉じる。

 感じるのは、自分の内側。

 そこに流れている“何か”。

(これが……魔力)

 まだ曖昧だ。

 だが、確かにある。

 それを、意識して――

 整える。

 音を合わせるように。

 弦をチューニングするように。

 ゆっくりと。

 

「――」

 

 口を開く。

 だが、本に書かれている詠唱は、あえて使わない。

 代わりに――

 短く。

 必要最低限の意(・)味(・)あ(・)る(・)言(・)葉(・)だけを紡ぐ。

 

「……灯(・)れ(・)」

 

 次の瞬間。

 ふわり、と。

 私の指先に、小さな光が灯った。

 

「……え」

 

 カノンの声が、かすかに震える。

 私自身も、目を見開いた。

(できた……?)

 光は不安定だ。

 揺れている。

 だが――

 確かに、発(・)動(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

 

「今の……。詠唱してなかったよね?」


「うん」


「なのに……」

 

 二人の間に、沈黙が落ちる。

 その意味を、言葉にできないまま。

 やがてカノンが、小さく呟いた。

 

「……すごい」


「……いや。……まだ」

 

 シオンはゆっくりと手を下ろす。

 光は、すぐに消えた。

 

「……多分これ、安定してない。……たまたま形になっただけ」


「でも……」


「……再現できなきゃ。……意味がない」

 

 言いながらも、胸の奥がざわついていた。

 今の感覚。

 音を作る時と、同じだ。

(……いける)

 確信が、静かに根を張る。

 

「……もう一回やる」


「え、ちょっと――」

 

 カノンが止めるより先に、私は再び集中する。

 今度は、さっきよりも慎重に。

 流れを、掴むように。

(さっきは、偶然じゃない)

 再現する。

 意識して。

 音をなぞるように――

 

「……灯(・)れ(・)!」

 

 ――ぼっ。

 先ほどよりも、はっきりと。

 安定した光が、そこにあった。

 

「……ほんとに、できた」

 

 カノンの声は、驚きと、少しの畏れを含んでいた。

 シオンは、その光を見つめる。

 小さな火。

 ただの初歩的な魔法。

 だが――

(これは、違(・)う(・))

 この世界のやり方とは。

 確実に、何かが。

 

「……ねぇ……カノン」


「うん?」


「……これ。……誰にも言っちゃダメ」

 

 カノンは一瞬驚いたが、すぐに真剣な表情で頷いた。

 

「……うん。わかった」

 

 その選択が、どれだけの意味を持つのか。


 二人はまだ、知らない。

読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


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