20話 変わる日常
魔法適性検査から2日後――
私の机の上には、昨日借りてきた本が何冊も積まれていた。
なぜ、こんなにも本を借りてきたのか――
それは魔法適性検査から帰って来ていつもの練習をしている時だった――
「ねぇ、シオン」
「……?」
「私達魔力はそこそこあるって言われたよね?」
「……そうだね」
「なら、魔法!使えるよね!」
「……そうだね。でも、どうやって?」
「うーん……誰かに教えてもらう?」
「誰に?」
「……任せて!」
――そう言って、カノンは昨日近所に住むおにーさんから十冊近く魔法の教本を借りてきたのだ。
「……多いね」
私は苦笑する。
「とりあえず、魔法の基礎ってのを全部借りてきた!」
カノンはそう言って、本を一冊手に取って渡してきた。
「……えっと……“魔力とは、生命力とは別に存在する内的エネルギーであり――”」
「うん、もう難しい」
「早いよ……」
思わずツッコむ。
そして、次のページをめくる。
「……魔力は体内を循環し、意識によって外部へ放出される……か」
「それって、どうやるの?」
「……そこが問題だね」
私達は顔を見合わせた。
しばし沈黙。
「……とりあえず、やってみる?」
「やってみよっか」
そう言って、私達は外へ出た。
いつもの、家の裏手。
今日は風が、少しだけ強い。
「……とりあえず……手、出してみて」
「こう?」
カノンが手のひらを前に向ける。
「で、こう!……えーと。……こう……出ろ!」
「雑じゃない!?」
当然、何も起きない。
その後も私達二人は、あれやこれとや試行錯誤色々試した。
「……出ないね」
「そうだね……」
少しだけ、しょんぼりした空気になった。
だが――
「……待って」
ふと顔を上げた。
「魔力って、“流れ”って書いてあったよね」
「うん」
「音もさ、流れじゃない?」
カノンが瞬きをする。
「……あ」
何かに気づいたように、小さく声を漏らす。
「リズム、みたいな?」
「そう」
私はギターを手に取る。
軽く弦に触れる。
ポロン――
短い音。
「……これをただ鳴らすだけじゃなくて」
もう一度、弾く。
今度は、少しだけ意識を込める。
“流れ”をイメージする。
音が、繋がっていくように。
ポロン、ポロン――
「……なんか、さっきと違う?」
カノンが首を傾げる。
「わかんないけど……ちょっと、あったかい感じ」
シオンは自分の手を見る。
確かに、何かが流れた感覚があった。
「……もう一回」
今度は、少し長く弾く。
ジャラン――
その音に、意識を乗せる。
流れを、外へ。
すると――
「……っ」
空気が、わずかに震え。
風が、ふわりと揺れた。
「今の!」
「うん……!」
二人の目が輝く。
「これ……魔法?」
「かもしれない」
確証はない。
けれど――
「でも、近いと思う」
静かに言った。
「音に乗せれば……魔力、出せるかも」
カノンが、ぱっと表情を明るくする。
「じゃあ、歌でもできる?」
「多分……できると思う」
「じゃあ、やる!」
迷いのない声。
カノンは一歩前に出て、目を閉じる。
そして――
歌う。
優しい旋律。
風に溶けるような声。
その歌に、ほんの少しだけ――
“流れ”を意識する。
すると。
ふわり、と。
周囲の空気が、柔らかく揺れた。
「……すごい」
思わず呟く。
カノンが目を開ける。
「できた……?」
「うん。たぶん」
二人は顔を見合わせて――
笑った。
「ねぇシオン」
「…?なに?」
「これ、もっと練習したらさ――」
一拍。
「すごいこと、できるんじゃない?」
その言葉に、私も笑う。
「……たぶんね」
根拠なんて、ない。
けれど――
確かな手応えがあった。
音と、魔法。
それが、繋がった。
――そして。
その様子を。
少し離れた場所から、見ている影があった。
木の陰。
気配を殺し、じっと観察していた。
「……情報通りか」
小さく、呟く。
「音に魔力を乗せる……か」
興味深そうな声。
だが、その目は冷静だ。
「これは、確かに、広がる……か」
視線は外さない。
一瞬たりとも。
「……こりゃ、監視対象なのも頷けるな」
風が吹き、木の葉が揺れる。
その影は、いつの間にか消えていた。
――二人は知らないまま。
二人の音は、また少しだけ強くなった。
読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
この小説を読んで面白いと少しでも思って下さったのなら、↓の★★★★★、ブックマークで応援してくれると嬉しいです(ㆁωㆁ)




