↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ギタリストは異世界で音を鳴らす  作者: 神凪狐龍
1章 失った音、始まる音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/39

2話 始まりの楽器屋


 朝、目を覚ました瞬間――すぐに分かった。

 

 (やっぱり…夢なんかじゃなかった……)


 昨日は夢であれば覚めてくれと思いながら眠ったが、目が覚めても変わらなかった。

  

 見慣れない天井。

 小さな体。 


 そして、ギターが無いこの世界。


(……本当に、異世界なんだ)

 ため息をひとつ吐いて、布団から起き上がった

 。

 

「シオン、起きたなら手伝いな」

 

 母の声が外から飛んできた。

 

「……今いく」

 

 まだ慣れない声で返事をして、外に出る。

 朝の空気は冷たくて、少しだけ気持ちよかった。

 井戸まで水を汲みに行く。

 桶を持ち上げようとしたその時――

 ふわり、と水が浮いていた。

 

「……え?」

 

 思わず声が漏れる。

 近くにいた男の人が、手をかざしていた。

 水はまるで見えない器に入っているみたいに、そのまま持ち上がっていた。

 

「ん?どうした?」

 

「……それ」

 

「水魔法だよ。便利だろ?」

 

 その人は当たり前みたいに笑った。

(魔法……)

 前世の世界では、空想のモノだった魔法がここにはあった。

(やっぱり……ここは、そういう世界なんだ)

 黙って桶を差し出すと、水はするりと中に収まった。

 

「……ありがとう」

 

「おう」

 

 それ以上の会話はない。

 でも、それで十分だった。

  

 朝の手伝いを終えたあと、私は一人で街へ出た。

 石畳の道を歩きながら、私は並ぶ店たちを見て周った。

 

 その中に――その店はあった。

 

(……あれは)

 木でできた看板。

 描かれているのは、弦の張られた楽器。

(楽器屋……!)

 自然と、足がそっちに向いていた。

 扉を開けると、乾いた木の匂いが鼻をくすぐる。

 店の中には、いくつものバイオリンのような形状の楽器が並んでいた。

(見たことない楽器だ……)

 その時……

  

「いらっしゃい」

 

 店の奥から声がした。

 出てきたのは、店主であろう年老いた男性だった。その後ろからは、同じくらいの年の女性も顔を出していた。

 

「珍しいな、子供がこんなところに」


「……楽器、見てもいいですか」


「構わんよ」


 許可をもらって、私は店の中を見て回る。

 店に置いてあったのはどれも同じ楽器の様だった。

   

(弦の数が少ない……それに、フレットもない……?)

 

 それは構造がシンプルすぎた。

 私は、試しに一つを手に取ってみた。

 

 (構造が単純すぎる……)

 

 そっと弦を弾く。

 ――ポン、と軽い音。

 

「……」

 

 悪くはない。

 でも。

(足りない……)

 押さえる位置を探すために指を動かした。

 だが――

(安定しない)

 音程が曖昧になり、思った通りの音が出なかった。


「どうだ、その"エ(・)ル(・)ン(・)"は?」


 私が、この楽器……エルンについて考えていると、店主が声をかけてきた。

 

「……音域が足りない」


「……ほう?」


「あと……音程が、固定できない」


 私は言葉少なく応えた。

 

「固定……ねぇ……」

 

 店主は腕を組み。

 私は、エルンのネック部分に指を置いて。

 

「……ここに、目印をつける」


「目印?」


「押さえる位置を……決めるための」

 

 私がそう言うと店主の目が細くなった。

 正直怖い…………。

 

「坊主」


「……坊主じゃない。私……女だよ」

 

 そう言うと店主は目を見開いた。


「そ、そうかそれはすまんかったのう……」


「いい……別に……」


 そういうと、店主は奥さんに頭を叩かれていた。

 私ってそんなに女の子に見えないのだろうか……。

 

「……こほん!それはそうと……。今のは、お前が考えたのか?」


「……うん」

 

 私が考えたものじゃないけど、説明するのが面倒だから頷いた。

 

「……作れる?」


「目印自体は付けれるが……」

 

店主はエルンを見ながら言う。

 

「基準はどうする? 適当じゃ意味がないだろ?」


「……それは」

 

 一瞬、言葉が止まる。

 

 でも。

 私の頭の中には、もうある。

 

 形状も、音も。

 

「私が……決められる」

 

 小さく、呟く。

 

「音の並び……分かるから」

 

 店主の目が、わずかに変わる。

 

「このままじゃ……弾けないから」

 

 それだけだった。

 しばらくの沈黙。

 やがて――

 

「……面白い」

 

 店主が、ふっと笑った。


「お前、名前は?」


「……シオン」


「そうか。ワシはガルドだ」


 そう言うと、ガルドさんは奥へと引っ込み、一本の木材を持って戻ってきた。

 

「やってみるか?」


「……いいの?」


「ただし」

 

 ガルドさんはにやり、と笑って。

 

「簡単にはいかんぞ?」

 

 私は、その問いに小さく頷いた。

 チャンスだと、そう思った。

 足りないなら。

 無いなら。

 作ればいい。

 エルンを見つめる。

 そして、その向こうに――

 まだ存在しない楽器の形を思い描く。

 前世で手にしてたギターの姿を。

 

「……やる」

 

 私は小さな声で応えた。

読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


この小説を読んで面白いと少しでも思って下さったのなら、↓の★★★★★、ブックマークで応援してくれると嬉しいです(ㆁωㆁ)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。