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転生ギタリストは異世界で音を鳴らす  作者: 神凪狐龍
1章 失った音、始まる音

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10話 創音の目覚め


 カノンの洗礼が終わったあと――

 周りの空気は、明らかに変わっていた。

 ざわめきは収まらない。 ひそひそとした声が、あちこちで広がっている。

 

「ユニークスキルだって……」


「初めて見た……」


「すごい……」

 

(……やっぱり、珍しいんだな)

 そして、カノンはというと――

 

「え? え? なに?」

 

 まだ状況が分かっていない様子で、きょろきょろしている。

 そんなカノンに、神官様が声をかけた。

 

「……君と、保護者は別室へ」


「へ? なんで?」


「スキルの詳細を確認する必要がある」

 

 その声は、少しだけ厳しい声色だった。

 カノンの母親が慌てて前に出る。

 

「は、はい……!」


「シオン、あとでね!」

 

 カノンはそう言って、手を振った。

 

「……ん」

 

 私は片手を上げ、短く返す。

 けど――

(……大丈夫かな)

 少しだけ、不安が残る。

 ユニークスキル――

  珍しいのであろう。 周りの反応も、普通じゃなかった。

(……変なことにならなきゃいいけど)

 考えているうちに――

 

「次」

 

 次の名前が呼ばれる。

 

「シオン!」

 

 ぴくり、と体が反応した。

(……来た)

 私は前に出た。

 一歩、また一歩と神官様へ近づく。

 皆の視線が、私に集まるのを感じた。

(……見られてる)

 さっきのカノンの影響だろう。 興味と期待が混ざったような視線。

 だけど、気にしないようにした。

 そして、神官様の前に立つ。

 神官様が、こちらを見る。

 

「……落ち着いているな」


「……別に」

 

 私はそう、短く返す。

 神官様は、少しだけ目を細めた。

 

「では――始める」

 

 手が、かざされる。

 その瞬間――

 光が、溢れた。

(……っ)

 目を閉じるほどではない。 でも、はっきりと分かる。

 身体の奥に、何かが流れ込んでくる。

(これが……)

 温かい。 でも、それだけじゃない。

 音。

 どこかで、響いている。

 形のない“音”が、頭の中に広がっていく。

(……これは)

 私は、理解してしまう。

 組み立てる。 重ねる。 繋げる。

 音を、“作(・)る(・)”感覚。


(……ああ)

 私はその感覚を、自然と受け入れていた。


 やがて――

 光が、収まるとあたりはまた静寂に包まれていた。

 

「……っ!これは!」

 

 しばらくして、神官様の驚いた声が静寂に響いた。

 

「まさか……またユニークか!?」

 

 ざわり、と空気が揺れる。

 

「ステータスを確認しなさい!」


「……ん」

 

 目を閉じる。

 意識を内側へ。

 すると――

 浮かび上がる。

 文字。

 情報。

 ――――――――――――――――――

【ステータス】

名前:シオン

年齢:7

種族:人族


レベル:1


HP:55

MP:90


ユニークスキル:《音響構築(サウンドクラフト)》


スキル:

・弦楽器 Lv.2

・音感強化 Lv.1

・魔力操作 Lv.1

・集中 Lv.2


加護:

・音精霊の加護(小)


称号:

・祝福を受けし者

・創音の担い手

・転生者


―――――――――――――――――――――

 

(……これが、ステータス)

 加護や称号……。

 これは見なかったことにしよう……。

 そして。

 その項目に、目が止まる。

 ユニークスキル――

 

《音響構築(サウンドクラフト)》

 

(……やっぱり)

 どこかで、納得していた。

 さっき感じた“感覚”。 あれが、そのまま形になっている。

 

「……どうだ?」

 

 神官様が問う。

 

「……ある」


「何を授かった」

 

 私は一瞬、考えた。これを言って良いのか。

 でも、隠す理由はない。

 

「……ユニークスキル」

 

 沈黙。

 そして――


 ざわっ……!


 今までとは明らかに違うざわめきが広がった。

 抑えきれない、ざわめき。

 

「また……ユニーク……だと?」


「あり得ない……同日に二人……?」


「そんな記録……聞いたことがない……!」


 教会の人達が凄くざわついていた……。

 ただの驚きじゃない。動揺と、恐れに近い何かを感じる。

 そして、目の前の神官様は言葉を失っていた。

 手が、わずかに震えている。

 

「……名は?」

 

 さっきよりも低く、慎重な声。

 

「《音響構築(サウンドクラフト)》」

 

 告げた瞬間――

 空気が、凍りついた。

 

「サウンドクラフト?」


「……音を、構築……?」


「そんな系統……聞いたことが……」


「いや、確か隣の伯爵領で似たスキルが……」


「音楽系……か……?」

 

 ざわめきは、もはや抑えられていない。

 明らかに、異常事態。

 そのとき――

 

「……静まれ」

 

 低く、鋭い声。

 一瞬で、場が凍る。

 奥にいた、年配の神官様が前に出てきていた。

 ただの神官じゃない。

 この場の空気が、それを物語っている。

 

「記録官を呼べ。至急だ」


「は、はい!」


「本件は通常報告ではない。教会本部への直通案件とする」

 

 どよめきが、さらに広がる。

(……そこまでかよ)

 内心で呟く。

 視線が、痛いほど突き刺さる。

 さっきとは違う。

 興味じゃない。

 値踏みと、警戒。

 

「……シオン」

 

 神官様が、ゆっくりとこちらを見る。

 その目にはもう、子供を見る色はなかった。

 

「君も、親御さんと別室へゆきなさい」

 

 一拍置いて――

 

「……これは、看過できる事ではないな」

 

 小さく、そう呟いて。

 

「……ん」

 

 私は短く頷き母さんの所までいく。

(カノン……大丈夫かな?)

 胸の奥に、わずかな不安がうまれた。

 そして同時に――

(……面倒なことになりそうだな)

 確信に近い予感もあった。


 私は母さんと並び、修道女の案内で歩き出す。

 視線に追われながら。

 扉の向こうへ。

 

 その向こうはもう――

 

 今までの日々には戻れない、そんな予感がまっていた。

読んでくださりありがとうございますm(_ _)m


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