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魔錬精機  作者: 渡瀬 理央
祈りの国編

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エルビアンとの出会い

 陽は落ち、夜風が身に染みる。10人程で囲む焚火の中にいる老婆は口角を上げ、歯の抜けた笑顔を見せた後、キョウに手招きをした。

 「こんな時間まで街の外で何してたんだい?あんた、学生さんだろ?」

 キョウは老婆の隣に腰を下ろす。

 「海より深い事情がありまして…」

 「あぁあんた、ゲストか。こんな辺境の土地に。ついてないねぇ」

 「僕のことをこの土地に縁のある人はゲストって呼びますね。そこからもう、分からない」

 「そんな立派な赤目をしてりゃ酔っ払いだって気が付くさ」

 おかしい、キョウは純粋な日本人だ。瞳も髪も黒。今の自分はフリストのような赤目なのだろうか。確かめる術はない。

 「ババアの昔話を聞く気はあるかい?お前さんの疑問をいくつかは解決出来るやもしれんよ」

 老婆は焚火に薪を放り投げ、視線は焚火に向けたまま呟いた。

 「是非、お願いします。僕の名前はナナオ・キョウ。生まれは日本です」

 キョウもまた、焚火を見つめた。火は不思議だ。見ているだけで心が落ち着く。

 「日本ね、聞いたことはあるよ。私はエルビアン。若い頃はこの国で技術顧問みたいなことをやってた。今じゃ免罪符一枚用意出来ない老いぼれさね」

 エルビアンはどこか自虐的に笑った。それはエルビアン自身になのか、この国のシステムについてなのか。私の言うことは全て真実とは限らないけど、と前置きをしてエルビアンは語る。

 「さて、お互いの自己紹介も終わった事だし、昔話を始めようか。そもそも、ここは何処なのか。それは地球の深部だとも言われてるし、地球とは別の惑星と言う奴もいる。中には魂の帰る場所なんて説もある。それはまだ誰にも証明されちゃいない。ただ、名前がないと不便だろう?だからキョウにとっての地球って奴の名前はここではジルチって名前がついてる。誰がつけたのかまでは私も知らん。キョウだって自分が地球にいたって証明出来るかい?誰もが分かっていても出来やしないのさ」

 エルビアンは落ち着いた口調で語り続ける。キョウの中にある無数にある疑問の1つが氷解していく。正しい学びは人を謙虚にする。気が付けばキョウは足を正座に組み換え、これから語られるジルチの歴史に胸が熱くなった。エルビアンは雄弁に語る。それは知識なき者へ神託を授ける巫女のようだし、何も知らない幼児に1+1=2の仕組みを林檎を使って優しく教える教師のようだ。

 「2つの世界がある。そこまでは事実だ。そして、2つの世界を片道切符でも往復でも、どちらでもいい。渡った者は赤目になる。これも事実だ、例外は無い。私達の国では赤目はゲストって呼ぶのさ。それは国によって呼び方は様々さ。賢者だったり、救世主だったり、異端児だったり、破壊者だったり。過去の赤目が国に与えた影響によるところが大きい」

 焚火の中で空気が爆発し、パチン!と大きな音を上げた。

 「ゲストは私達の知らない知識を与えてくれることも多い。両者の文明レベルでは大差が無い、と言われているがそれは先進国と発展途上国くらいの差さ。お互いの国内外だって格差は有る。生きていくだけならジルチの人間の大多数は何も困っちゃ居ない。それでも人間ってのは欲深くてね。出ちまうのさ。中には。自分だけもっと上へもっと先へってね」

 それにゲストについてもう一つ御伽草子があってね、エルビアンはおどけた表情を見せた。

 「ゲストがジルチに着いた時、ゲストは赤目以外に見た目の変化が起きるらしい。本人の資質によるものが大きいが、精神が最も不安定で成長率の1番高い歳の頃になるって話さ」

 キョウは自分の少し余った丈の衣服を見て笑うしかなかった。

 「エルビアン、その御伽草子も真実だ。僕はジルチに来る前の年齢は35歳、今より背も高かったし手足も長かった」

 キョウは門番達が大男に見えた理由にも合点がいった。よもや、自分がフェルンのような等身になってしまったかと戦々恐々としていたが、気鬱だったようだ。

 「レッドフィクションもどうしてどうして、なかなかに優秀だったんだねぇ」

 「レッドフィクション?」

 「簡単に言えば赤目の研究所だね。良い噂も。それ以上に悪い噂もあった。定番の人体実験だとかね。今じゃ各国からの援助も次第に打ち切られて、毒にも薬にもならない好きものの集まりさ」

 なるほど、確かに地球に宇宙人がやって来たと仮定した場合、研究対象にならないはずがない。

 「さて、前置きが長くなった」

 エルビアンは両手に持ったマグカップを傾けた。酒か、コーヒーか、ジルチ特有の物なのか、中身は分からない。

 「ジルチに生きる人間にとっては当たり前、常識。火は熱い。氷は冷たい。そのくらいの話だ。だが、ゲストにとっては非常識。価値観の崩壊待ったなし。そんなお話も聞かせてやろう」

 キョウはもう一度、居住まいを正す。

 「錬金学と精霊学の融合」

 キョウかエルビアン、どちらかは分からない。唾を飲み込む音が聞こえた。

エルビアンの由来はZZガンダムのヒロインの一人「エル・ビアンノ」から。外見のイメージも彼女が歳を重ねたら。

キョウ君とエルビアンの関係は幽助と幻海師範のような関係になってくれたらなぁと思っています。

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