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魔錬精機  作者: 渡瀬 理央
花の国編

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第二次龍の巣撃滅妨害戦

 梅釈天(ばいしゃくてん)を打ち取った2人に余韻に浸る暇などあるはずもなく、キラー・ペインを目指す。緋色研究の人数も把握していない国士無双(こくしむそう)隊に分かっていることは《魔錬精機(まれんせいき)》を狙ってくる。これだけだ。その為、梅釈天を倒したとはいえ国士無双隊唯一の魔錬精機、キラーペインが追手に狙われる可能性は充分にある。慎重にルート選択するサーヤを先頭にキョウが続く。

 赤い谷を何度も抜け、2機はキラー・ペイン、黒いチコリ機と合流することに成功した。ルークの狙撃の邪魔をしないよう、チコリ機へ通信を入れる。

「戻った。キラー・ペインは襲われていないようだね。良かった」

「梅釈天はどうなりました?」

「とったよ。向こうが2機以上で来る可能性を考慮して合流を目指した」

「それは僥倖。こちらも敵襲の気配は無く、確実にビーアゲハの数は減っていますわ」

「あとどれくらい減らしたら撤収予定なんだ?」

「予定数はとうに上回っていますわ。正直、今すぐにでも撤収してもリッパー王子の戦力は大分削れています。ただ、敵の増援が止まりません」

 キョウの背中に嫌な汗が流れる。このまま戦い続けたらどうなる?キョウの頭の中で最悪のシナリオが描かれる。

「チコリ!引き上げだ!僕達がここに居ることを知られるのはマズい。このまま持久戦に持ち込まれたら逃げ場すら無くなるぞ」

 敵は正体不明の狙撃機には気付いている。リッパー王子ならそれをキラー・ペインと紐付けるくらいしてくるだろう。残った狙撃ポイントも少ない。逆算して先回りされる恐れも、嶺上開花(りんしゃんかいほう)の位置すらもバレるかもしれない。それに加え、緋色研究の追手も考慮するとここは降りだ。

「僕達は充分稼いだ。ここで調子に乗ると敵に逆転手が入る。退こう」

「俺も賛成だ。初動に比べて敵の動きが鈍い。まるでわざと的を差し出しているようだ」

 ルークがスナイパーライフルを射撃体勢から待機態勢へ持ち変える。

「全機撤退!嶺上開花、火を入れて!いつでも出れるように!」

 チコリの判断は早かった。死線を生き抜いてきたキョウの進言とたった一人で戦い続けた兄からの《嫌な予感》。それはチコリにはまだ持っていない戦場の感。従わないわけにはいかない。

 赤い土煙を上げ、4機は嶺上開花へ向け走り出す。モニターではハングリー・パンサーも引き上げているようだ。キョウが機体を反転させる。

「ルーク!僕が殿(しんがり)を務める。最悪、敵に見つかったらサヴァンをちらつかせる」

「頼むよサヴァン。ハングリー・パンサー達を拾ったら嶺上開花は即発進だ」

 バッド=バットを振り返ることなく3機は更に進む。キョウはその場で待機し、ハングリー・パンサーが自分の居る座標を追い越し、赤い谷をスラローム状に抜けるのをモニターで確認した。

「今だけは出てくるなよ…」

 キョウの嫌な予感はまだ消えていない。悪寒を振り払うように機体に鞭を入れる。

「キョウ!私達は着いたよ!後は貴方とハングリー・パンサーだけ!」

 今日の相棒、サーヤから通信が入る。

「ハングリー・パンサー達を収容したら直ぐに発進してくれ!バッド=バットは飛行タイプだ。空中収容で構わない!」

「オッケー。玄関は開けておくから」

「念のため、カタパルトの1番にキラー・ペインを待機させておいてくれ。僕は2番に入る」

 全力疾走するハングリー・パンサーの最後尾へ合流するようにキョウも赤い谷をジグザグに進む。上空では龍とビーアゲハ達の戦いは終わっていない。激しい銃撃音と炎の轟音が響く。遠方で何機が落ちてくるビーアゲハを確認したが、ハングリー・パンサーならともかく、バッド=バットは敵に周知済。追撃に入るわけにはいかず、背を向け走り出す。

 嶺上開花とハングリー・パンサーの現在位置が重なった。キョウも嶺上開花を肉眼で確認する。次々と収容されるハングリー・パンサーへ追い付くように加速させる。

 バッド=バット以外の全ての錬精機を収容した嶺上開花は浮上を開始する。チコリは操縦室からブリッジへ駆け、艦長室へ飛び込む。

「全速でこの空域から脱出します!」

 軽量化を施した嶺上開花の後方ブースターが火を噴く。あんなに大きかった龍の巣が次第に小さくなっていく。

 バッド=バットも地上から空中へ飛翔する。この距離ならばビーアゲハ達から捕捉される心配は無い。嶺上開花へ着艦すべく加速する。しかしキョウの確信めいた悪い予感はここで当たる。

「頭痛の奴か!」

「マドカ!!」

 突如現れたマドカの駆る紅孔雀(べにくじゃく)。契約は最高位精霊光。その恩恵はスピード、パワーだけでなく、光の屈折率をも捻じ曲げ、夢幻(むげん)と名付けられたそれはレーダーを完全に無効化する。

「キョウさん!」

 ライチから悲鳴にも似た通信が入る。

「必ず追い付く!先に行ってくれ!」

 キョウは霊剣フルールを振りかぶり、紅孔雀へ襲い掛かる。マドカは2振りの小太刀を十字に構え受け止める。

「こいつ、前よりもパワーが上がってる!?」

「今日はやる気だ。落として連れていく」

「戯言を!」

 小さくなっていく嶺上開花から光が差す。その光は紅孔雀を射抜く。

「土産だ。キョウ、悪いが後は頼む」

 キラー・ペインから最後の援護射撃を受け、紅孔雀は赤い翼の一翼を失う。

「1枚落ちくらいじゃ引かないよな?」

 キラー・ペインへ行かせない。そのためにもキョウはマドカを挑発する。

「貴方を秒殺して緑の魔錬精機へ行かせてもらう」

 マドカはキョウから距離を取ると1枚失った赤い翼を広げる。

「…天照(アマテラス」)

 呟いたその言葉は、日本でマドカの代名詞となった必殺の一撃だった。

キョウ君VSマドカさん第3Rです。

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