↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔錬精機  作者: 渡瀬 理央
花の国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/58

赤い谷の戦い

 嶺上開花(りんしゃんかいほう)はその夜の内に移動を開始した。住居ブロックを切り離した成果がここにも出ている。格段に機動力は上がり、空母として運用するに利便性は増している。勿論、ブリッジクルーの練度が上がって来たのは言うまでもない。

 今回の主戦場となる龍の巣のやや後方。幾つもの谷がそびえる「赤い谷」。溶岩の影響で赤土を多く含む土壌の、茶色とは言えない赤い谷の谷底へ嶺上開花は陣取った。

「ここなら前方と上空だけに注意すればいいでしょう。ただし、左右に逃げることは出来ませんが」

 夜も更ける中、明日の戦闘へ向け理想的なポジションにつけたことは僥倖だった。ここでチコリ艦長はブリッジクルーへ半休を、搭乗機の最終チェックが終わった操縦士へ全休を言い渡す。

「嶺上開花の仕事はここで終わりです。私も明日使うビーアゲハのチェックに入りますわ」

 今の国士無双(こくしむそう)隊に機体を遊ばせておく余裕は無い。前回、黒に塗装され、通信特化にカスタマイズしたチコリ機を出すべきだと進言したのはオペレーターのライチだった。


 整備室は既に整備を終えた操縦士は自室へ戻り、明日の作戦に向け仮眠をとっている。最後に残ったのは空と白兵戦の主力。陸と遠距離戦のダブルエースだった。2人の機体はディッシュのピーキーなセッティングのおかげで、チェック箇所が多すぎ、どうしても他の機体に比べて時間が掛かってしまう。

「しかし、君のメカニックは優秀だな。初見のキラー・ペインをここまで仕上げてくるとは」

 隣に並べたバッド=バットとキラー・ペイン。操縦室を開けた状態であれば声も届く。

「アイツはちょっとおかしいよ。こんなに錬精機に詳しいくせに操縦は歩くことすらままならない」

「向こうもそう思っているはずさ」

 雑談を交わしながら作業を進める2人の足元へチコリが駆け寄ってくる。

「お二人が最後ですか?明日は私も出ますわ」

「反対はしないが。キラー・ペインの誘導はサーヤだろう?」

「あら、艦内通信でサーヤにはキョウさんの誘導をお願いしましたわ。私が兄上の誘導へ回ります」

 確かにチコリは艦内放送で配置換えの知らせを入れた。ただ、整備室は稼働中はクレーンを始めとした重機の稼働音で聞こえていた作業者は1人も居なかった。新しい施設にはよくあることだ。

「お二人もなるべく早く休んで下さい。明日の作戦に支障が出ては困ります」

「僕はもう終わるよ。ルークはまだやっていくのか?」

「俺もこれで終わりだ。明日の作戦開始まで10時間。風呂に入って寝るとしよう」

 機体の横に併設された螺旋階段を降り、2人は自室へ戻り、チコリは自機の最終チェックが終わったのは朝の2時だった。


 翌朝、予定通りに花の国から出撃を確認したライチは、バッド=バット、ビーアゲハのサーヤ機以外は全ての錬精機が配置についたことをチコリに伝えた。

「バッド=バット及びサーヤ機はカタパルト上で待機。キョウさんは緋色研究、龍の標的変更、敵の発見。その全て対応して頂きます。優先順位は伝えた通りに」

「了解だ」

「龍の巣はまだ動かないようですわね。では…全機、作戦開始(スクリメージ)!」

 戦火の口火を切ったのはキラー・ペインによる超長距離射撃だった。前方に待機するハングリー・パンサーを追い越し、弾丸は空中から接近するビーアゲハの動力部を貫く。

「まずは1つ…チコリ。次のポイントへ移動する前にあと5はやっておきたい。谷の風が思ったより強い。修正する」

 動力部を打ち抜いたにもかかわらず、先程のルークの狙撃は納得出来るものではなかったらしい。

「兄上、敵の接近が思ったよりも遅い。ここで10。お願いしますわ」

 次々と発射される弾丸。伏せ撃ち状態のキラー・ペイン。空の薬きょうが1つ増えると同時に爆発音が遠方より響く。

「敵もこっちの射線に気付く頃合いだ。誘導を頼む」

 ルークの落としたビーアゲハの数は7。チコリの希望10には届かなかったがまだ序盤。発見のリスクを考慮し、次のポイントへ向かう。

「よっしゃ!俺達も行こう!」

 戦闘用にこん棒を両手に持ったハングリー・パンサーの集団が地に落ちたビーアゲハの四肢と頭部を潰して回る。墓場荒らしと勘違いさせるほどに。操縦室以外は徹底的に潰す。敵も龍の巣が本命である以上、こちらに戦力を注ぐ余裕はない。上空では銀龍とビーアゲハが接敵したようだ。巣の主はまだ出てこない。

「兄上、ポイントBは龍に近すぎる。ポイントEへ誘導しますわ」

 敵の索敵範囲に入らず、発見を許さない。用意したポイントの中から最適を選び伝える。キラー・ペインと黒のビーアゲハは地面を蹴る。

「谷風に加えて龍の熱が厄介だな…」

 微調整を繰り返しながらもルークは狙撃の手を休めない。最初は3発に1回だった命中精度が撃つ度に上がっていく。ポイントEでは10機を静かに落とす。

「兄上。これ以上は敵が踏み込んでくると危険です。次はGへ」

「ここの風が馴染んできたのにね」

 ルークは集中力を欠くことなく2つ目のポイントでも大きな戦果を挙げた。銀龍もルークの狙撃が自身に向かってくることがないことに気付いたのか、こちらへ敵意を向けることはなかった。

 敵ビーアゲハ達も正体不明の狙撃に気付いてはいるが、野盗と見紛う野蛮なハングリー・パンサーの仲間が何処かに居る。今はそのくらいの認識であくまで本命の銀龍を狙う。その判断が命取りになることを彼等は気づいて居ない。相手は花の国の魔錬精機、精霊命を宿した生粋の狩人。

 次のポイントへ向かう途中、チコリの機体にアラートが鳴り、キョウへ通信を入れた。

「キョウさん。お客様ですわ。相手は梅釈天(ばいしゃくてん)。今日は兄上の援護はありませんがお願いします」

「行ってくる」

「バッド=バット、サーヤ機、どうぞ。どうかご無事で」

 ライチは操縦士へブリッジの願いを込めて送り出す。

「バッド=バット出ます」

「サーヤ機、出るよ!」

 カタパルトから発進した2機はビーアゲハ達に見つからない様、チコリから送られた座標を目指す。梅釈天がキラー・ペインに接敵する前に仕掛ける。キョウの全力ドライブにサーヤは着いて行くことが出来ず、徐々に距離が離れていく。

 龍と花の国、緋色研究。そして国士無双隊。4つ巴の戦いが始まった。

 戦闘パートからのスタートです。相変わらずキョウ君にはいつも大変な役割を担ってもらってますね…ブラック企業も真っ青です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。