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魔錬精機  作者: 渡瀬 理央
花の国編

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凱旋

ルークの提案はキョウには意味が解らず、チコリを見るとやれやれ、といった様子で説明をしてくれた。

「いいですか?サヴァンとは要するにジルチの危機に対して己の判断で現場を動かせる人材。その権利は多岐に渡りますが、徴兵もその一つです」

「つまり、僕がリーダーでルークとチコリを雇えと?」

「そういうことだね」

「ジルチの危機にもなっていないのに?」

「緋色研究はジルチにとって充分脅威さ。奴等の狙いは魔錬精機なんだろう?魔錬精機が全て破壊された後、奴等はどんな動きを見せるかは未知数。つまり、危険なんだよ」

 地球に例えるなら核を力ずくで回収する集団。想像するだけでも確かに危険だ。魔錬精機も回収され、そのまま緋色研究の戦力として流用される可能性もある。

「ルークはそれで良いのか?花の国の第三王子なんだろ」

「これは個人的な予想なんだがね、花の国は遠くない未来に2つに割れる。その時にキラー・ペインの操縦者である俺と実兄妹のチコリは両方から狙われる」

「保守派の第一王子と革新派の第二王子か」

 第一王子のフェンと第二王子のリッパーは主張が正反対で、今回の龍の巣破壊作戦もリッパーが押し切り、フェンは最後まで反対したらしい。現状ではリッパーの「自然とは言え、我々に害をなす者まで受け入れる必要はない」という主張に民意は傾いているそうだ。二つの勢力が武力を用いた場合、魔錬精機をどちらの勢力が保持しているか。それはを直接勝敗に左右する。

「そこで、だ。俺はどちらの勢力にも興味は無い。第三勢力として名乗り上げるつもりも無い。サヴァンの小隊員になれば、当然どちらからも手は出せない」

 更にルークは続ける。

「キョウは緋色研究を狙っている。緋色研究は魔錬精機を狙っている。その魔錬精機と操縦者の俺が常にキョウの近くにいる。分かりやすくて良い絵じゃないか」

 ルークの提案は確かにキョウにも大きなメリットがある。350万クロムの輸送費に加えて、いつ現れるかわからない、マドカ達のターゲットが側にいる。こちらから探すどころか、向こうからやってくるはずだ。

「チコリはそれで良いのか?」

「私は兄上と居れれば。それが最上の願いですわ」

 キョウは腕を組み、目を閉じ考える。「旨い話には罠がある」ルークからの提案にキョウのデメリットが見当たらないことこそが不安材料だった。強いて挙げれば花の国との関係悪化だろうが、そもそもキョウにはルークとチコリ。作戦前に挨拶を済ませた数人しか知り合いは居ない。目を開け、ルークの黒机の前に立ち、手を伸ばした。

「乗った。キラー・ペインが同伴することが条件だ。宜しく頼む」

「キラー・ペインは俺とチコリしか操縦出来ないようロック済だ。言ったろう?君は戦士より司令官向きだとね」

 2人は握手を交わし、遅れてチコリが手を乗せた。

「ファースト・ガーデンに着いたら俺達3人以外を全員降ろし、そのまま大霊峰を目指す」

「あそこは中立ですからね、おいそれと手は出せないはずですわ。そのまま大霊峰で龍を降ろしてから私達の今後の身の振りを考えましょう」

 3人は目を合わせ、頷く。艦内放送でオペレーターから間もなくファースト・ガーデンに到着するとの知らせが入った。

「さて、最後のファースト・ガーデンになるのかな、チコリ。見納めだ」

「次に帰る時は兄上が王ですわ。それまでは内戦なんて哀れな発想しかない、愚兄達に預けておきましょう」

 サード・ガーデンは着陸し、すぐ隣に並ぶファースト・ガーデンへ全ての乗員は凱旋を果たす。負傷兵以外はそのままファースト・ガーデンの中心部、花の国の王宮に当たる建物《フラワーパレス》を目指す。歓迎ムードの街中に比べて厳かな雰囲気を感じながら、リッパーの待つ軍部へルークを先頭に入室する。待っていたのは花の国の第二王子、リッパー。ルークよりも大分年上、30代くらいの印象を与え、自分は戦場へ出ないにも拘(かか)わらず、軍服を着用しているのが印象的だった。葉巻を加えていたリッパーは灰皿に置くと、全員を一瞥する。

「諸君、ご苦労だった。今回の作戦の成功は我が国にとって、非常に大きな一歩だと歴史に刻まれることだろう。引き続き我々は自然の驚異と戦えると証明し続けようではないか!」

 右手を大きく掲げ、戦士を鼓舞する。ここに居るのは3人を覗いてリッパー派閥の戦士達だけである。室内に大きな歓声が響く。歓声を静寂に変えたのはルークが右手を挙げた時だった。

「リッパー様、1つ宜しいでしょうか?」

「申せ」

 ルークが整列から一歩前へ踏み出す。

「申し上げます。私とチコリはサヴァンの命によりキョウ・エルビアン・ナナオの小隊へ編成されたことを報告致します」

 リッパーは眉を上げたが冷静さはまだ保っていた。

「それは誠か?ナナオとやらはここに居るのか?」

 今度はキョウが一歩前に出る。

「本当だ。花の国の人間ではないので敬語は省略させて頂く。ルークの言った通りだ。2人は僕の小隊で運用することになった」

「キラー・ペイン、サード・ガーデンは置いていけ。それならば認めてやろう」

「それは出来ない。そもそも、貴方に認めてもらう必要はない。勘違いするなよ?これはお願いじゃない。慈善の報告だ」

 あくまでも正当な立場で話を進めるキョウだが、花の国のお膝元、フラワーパレスで自分の信者に囲まれたリッパーは己の立場もあり、強気な態度を崩せない。

「小僧。戯言(たわごと)はそれ位にしておけ。サヴァンは万能じゃない」

「サヴァンの権利で徴兵は認められている。このまま話しても平行線だな。行こう」

 キョウは踵を返し、サード・ガーデンへ向かう。ルークとチコリも続く。リッパーは苦虫を嚙み潰した表情で葉巻に手をかける。その手は怒りで震えていた。

フロントのキョウ君。バックのルーク君。チコリの役割は考えていますが後々。

やっとチームの骨格が出来ました。長かった…

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