総力戦
再度、龍の巣へ向かったキョウの目に最初に入ってきたのは、今まで戦ってきた銀龍と、これまで見たことも無い。頭が2つある金の龍だった。銀龍と双頭の金龍は互いを守るように動き、ビー・アゲハ達は苦戦しているようだ。刃こぼれ1つないフルーフに思わず声を掛ける。
「お前だけが頼りだ、頼むぞ」
雲を掻き分け、龍の巣の前へ出る。ここが勝負所。精霊空も分かっているのか、バッド=バットは今日一番のスピードでビー・アゲハ隊に合流した。
「ルーク、僕は銀からいく。金の方の足止めを頼めるか?」
「人使いが荒いじゃないか。ま、やるだけやってみるよ」
ルークの超長距離狙撃は、お互いフォロー出来る距離に近づこうとするタイミングで銃弾がそれを拒む。次第に2匹は離れていく。
好機と見たキョウは銀龍へ一足に飛ぶ。ビー・アゲハ達に気を取られている銀龍は危険な蝙蝠の接近に気付かなかった。ビー・アゲハの群れの中を影すら踏ませぬステップで最前線に踊り出る。スピードを殺さず、炎を吐く銀龍に対してすれ違い様に銀龍の首を狙う。炎の弾を真っ二つ斬り、その先の銀龍は首と胴体が別れた。
「これで3つ目」
地に落ちる銀龍の首と胴をモニター、肉眼で確認した。残りは双頭の金龍1匹。口から大きく酸素を吐き出し、深呼吸するキョウの背後からバッド=バットの脇を銃弾が抜ける。
「手柄を立てたところ悪いね。私の射線に入るな。言ったはずだが?」
抜けた弾丸は双頭の金龍の腹部に着弾。一瞬遅れて血の花が咲く。
「済まない」
「次は無いと思いたまえ」
「肝に銘じる」
実際、肝を冷やしたキョウだったが、今回はルークの言うことが正論だ。ビー・アゲハ達はルークの射線に入ることなく戦い続けている。油断したわけではないがモニターのチェックを怠ったキョウの落ち度だ。ルークの射線から離れ、意図的にもう一度、深呼吸をする。
先行しているビー・アゲハ達に追いつくと既に戦闘は始まっていた。双頭の金龍はこれまでの銀龍と違い、間断なく炎を吐く。右の頭が炎を吐き終えたら、次は左。炎を吐いていない口も休んでいるわけではなく、上下の牙で襲い掛かっている。それだけではなく、銀龍はしてこなかった攻撃パターンとして、尾を乱暴に振り回して力任せの殴打も見せた。
闇雲に突っ込んでもやられる。炎を避けながら突破口を探る。1匹目の様に背後から闇討ちを仕掛けようと回り込むが、双頭の金龍は尾で追い返す。(弱点は背中か?やけにケアするな)次にバッド=バットを金龍の頭より上に位置取る。最後の手斧を投げつけるが、右の口から放たれた炎球によってあっさりと融解した。(頭のケアもしっかりしてるな)
「ルーク、相手の左肩を狙えるか?」
「キラー・ペインには大きすぎる的だ」
「頼んだ」
ビー・アゲハ達を隠れ蓑に、バッド=バットを相手の右肩側に移動させる。モニターを注視し、キラー・ペイン放った銃弾の着弾と同時に相手の右背後に回り込む。
「ぐぅぅっ!?」
素早く回り込んだバッド=バットを待っていたのは二本目の尾だった。左腕部に直撃した破壊力の塊はバッド=バットの甲殻をあっさりと抜き、フレームが剥き出しになった。
頭のいい奴だ。敢えて弱点と思わせての2枚腰。痛すぎる手傷は負ったが、得るものはあった。双頭にもギミックがあるかもしれない。決断を迫られた。正面から行くか、それとも頭を狙うか。
これ以上のダメージは危険水域に入る。この2択は間違えられない。一瞬の思案の後、キョウの選択は正面からの真っ向勝負。壊れた左手は鞘を抑えるに固定し、右手一本で双頭の金龍に挑む。
ルークとチコリによる正確無比の射撃、ビー・アゲハ達も絶え間なく攻撃を繰り返している。恐れることは無い。右手に持ったフルールを胴体ごと貫く勢いで突貫。血飛沫を吹き、突き刺さったフルールは金龍の装甲を抜くも、キョウのイメージと違い勢いを殺され止まった。「固い、速い、強い」
ディッシュの言葉を思い出す。何が足りない?質量×速度=破壊力ならば質量は申し分ないはずだ。霊剣フルールは既に2匹の銀龍を仕留めている。だとすれば足りないのはスピード。キョウはフルールを鞘に納めた。剥き出しの左手はまだ動く。もう一度、双頭の金龍の正面に立つ。恐らくワンチャンス。
右手でフルールを抜くと同時に腰から左手を連動させ、半円を描く。左手で鞘の角度を三次元的に修正する。抜き放たれた刃はこの戦場で誰よりも速く、鋭い。
双頭の金龍は装甲を完全に抜かれ、2つに別れた。
キョウが咄嗟に行ったのは居合切り。左手と腰を連動させることにより、通常の抜刀よりも何倍もの速度を誇る。精霊空、霊剣フルール、キョウのイメージ。全てが噛み合った結果、花の国に作戦成功をもたらした。
霊剣フルールは西洋刀をイメージしていましたが、折角、鞘があるなら居合だろ!と、やや強引に登場させました。実際、居合は先制攻撃では有効みたいです。




