散
恐らく、きっと、多分、マドカはもう死んでいる。
こんな時にだけ鋭い自分の読みと勘が嫌になったが、一縷の望みにかけてまどかの手関節に親指を添える。掌屈、背屈を繰り返し橈骨動脈を探し当てようと試みるが脈を感じることは出来なかった。
何が起きた、起きているか全く理解が追い付かない。RMリーグ最終対局日に、チームオーナーから戦力外通告を言い渡され、妻が死んでいる。
理解出来ない理解出来ない理解出来ない理解出来ない理解出来ない
京はマドカであったものを抱き寄せた。強く抱いた。壊れてしまうかもしれない。大丈夫。既に二人とも。一人は心を。一人は体を。壊れたて。腕を回して抱きしめた肩越しに、持っていた白菊の切り花を握り潰すと音もなく、ハラリと花びらが舞った。
どれくらい時間が経ったかは分からない。京は自分の心拍が平常値に達したことを自覚し、大きく深呼吸を3回した。そして電気を点けようとしたが灯りの下でマドカを見ることを本能が拒否した。
暗い室内でソファーから離れ、テーブル添えられた2脚の椅子の1つに腰掛ける。
スマートフォンを取り出し、警察へ電話をかけた。事故か事件か。事情を分かる範囲で説明すると警察の対応は迅速かつ適切だった。なるべく、周囲の物に触らないようにと説明されたことまでは覚えている。
次に、救急へ電話説明する頃には警察車両が到着した。
事件、事故か判断がつきかねると警察官だけでなく鑑識課員、捜査一課と名乗った刑事。ドラマでしか聞いたことのない職業の人間達に矢継ぎ早に質問を受ける。
京が答えたのは「最後に連絡をとったのは対局終了直後のスマートフォンへのメッセージ」「普段は点いている玄関ポーチライトが消えていた」「普段は玄関の鍵は開いているが閉まっていた」「家の中の電気は普段は点いているが消えていた」「ソファーでまどかを発見したが脈は無く、抱きしめた」
これだけだ。あとのことは全て「分からない」と答えた。
質問を受けている間に救急が到着し、マドカを病院へ緊急搬送するための準備をしていた。警察が到着したタイミングで居室の電気は点いていた。担架に運ばれ、これから病院へ向かうまどかの顔は閉眼しているが、穏やかで、美しかった。白日の元、愛する人ともう一度話たい。もう一度笑って欲しい。
叶わないと分かっていても願ってしまった。15年間。願っても叶わないことを誰よりも経験していたはずなのに。願ってしまった。
以前から、タイトルかダサすぎると自覚してはいたのですが、
なかなか「これだ!」と言うネーミングが見つからず。
また変えるかもしれませんが一応、Ver2です。




