会議
一晩、外で過ごしたシャムルとディッシュ、ニコの体調を考慮して6人がエルビアンの家に集合したのは午後6時を過ぎたころだった。
仕事を終えたキョウがシャワーを浴び、シャムル、ライカ、ニコに初対面の挨拶を済ませる所から会議は始まった。教皇、侍女、ゲストと立場は様々だが、キョウがジルチの事情に疎いこともあり滞りなく済んだ。
「で、教皇様は何がお望みなんだい?申し訳ないがここには年寄りと学生と赤目のガキしか居なくてね」
口火を切ったのはやはりエルビアンだった。そして、対応するのはやはりライカだった。
「教皇様が望むのはクロック様との1体1での対話です」
「あの男は弁も立つ。丸め込まれて終わりじゃないかい?」
「そうならない為にもあなた方の協力が必要なのです」
キョウ、ディッシュは思う。自分達に協力出来ることなどあるのだろうかと。特にキョウはディッシュに「助けて欲しい」と事前に言われただけだ。今のキョウには仕事もある。家族も居る。いくら友人が助けを求めているとはいえ、度の過ぎる協力要請は断るつもりだ。
ライカは続ける。
「肝心なのは教皇様が《何も知らない》と思い込んでいる状態のクロック様と対話をすることです。彼等がひた隠しにしていた、祈りの国の内情を知ったと感づかれてからでは相手方も相応の準備はしてくるでしょう」
クロック達大司教は教皇という国民の総意を隠れ蓑に自分達だけが有利な法律、条令を通し続けている。最終決定権を持つ教皇がそれを良しとしなければ通っていなかったものだらけだとしても。
初めてシャムルが口を開いた。
「私が逃げ続けた結果なのは私自身が分かっています。祈りの国と謳いながら、あまりに祈りは遠く、届いていない。ですが、まだ間に合う。そう思っているのは私だけでしょうか?間に合った暁にはもう2度と、焚火だけが頼りの夜は来ないと約束します。国民が大好きだった、光景を取り戻してみせます」
エルビアン、キョウ、ディッシュは3人共、あの夜の侘しさを知っている。我が家の灯りが見えるのに届かないもどかしさを。そして、あまりに不条理なこの国の歪さを。
シャムルは3人を見た。その瞳には並々ならぬ決心、反省、覚悟。様々な表情が入り混じっていた。
「ライカさん。具体案は?」言葉短くディッシュが問う。
「私の考えた案を提示させて頂きます。まずは聖騎士団。彼等を誘き出します。教皇様不在の大霊峰から出撃となれば、他の大司教達を残し、総司令官であるクロック様は出ざるを得ない。大将自ら最前線に立つか、後方待機となるか。そこはまだ不透明ですが。そこにディッシュさんと教皇様がバイク、もしくは車を使いクロック様に接触。彼が門限制度や免罪符など知らぬ存ぜぬと言ったところで、この街の住民であるディッシュさんが何よりの証拠になります」
陽動と接触。この2つに協力して欲しいとライカは言った。恐らくニコはシャムルの護衛に当たるだろう。
「エルビアンさんには陽動チームと接触チームの無線の中継地点として、この家でそれぞれに状況報告、情報共有を臨機応変にお願いします」
「ま、妥当な采配だね」
司令塔にエルビアンを置き、接触チームはシャムル、ディッシュ、ニコ。残る手駒は2つ。つまり、ライカとキョウが陽動チームということだろう。
「私は作戦開始前に陽動用の錬精機1機、手配しておきます。キョウさんにはディッシュさん謹製の錬精機があると聞いていますが」
ライカがキョウを見る。
キョウは揺れていた。この依頼を受けるか否かを。キョウが降りたとて誰一人責める者は居ないだろう。それは分かっていた。分かっていたが普段は軽口しか言わない男が真剣に「助けて欲しい」と言った。この国の未来を嘆いていた女達が「大好きだった」と言った。
「やれるよ。ディッシュのバッド=バットは聖騎士団なんかじゃ捉えきれない」
キョウの赤目が鋭さを増した。
「陽動とは言え乱戦になる。僕1人でいい。ライカさんはエルビアンのフォローを頼む」
司令塔が潰されれば作戦は失敗。エルビアンにこそ護衛が必要だろうとキョウは判断した。
「キョウ、本当にいいのか?レーダー妨害完備のバッド=バットとはいえ、相手は国防隊の最新錬精機だ。操縦者の腕だってお前より上だろう?」
「自分の錬精機に自信が無いのか?」
「舐めんな。俺のバッド=バットは最高だ」
「じゃあ大丈夫だ。それに策が無いわけじゃない」
6人はそれぞれ自分のやるべき事を理解した。この作戦はまだまだ甘い、詰めるべきところがある。
エルビアンとライカを中心に作戦会議は日付が変わるまで続いた。
投稿予約を試してみたのですが、うまくいかず。結局、書き上げたと同時に投稿しています。
仕事が休みの日を使ってもう一度挑戦してみます。




