懺悔の報酬
シャムルとディッシュは小高い丘の上にいた。午前中は街中をバイクで走り回り、本屋、雑貨屋、古着屋と巡り屋台で昼食を済ませた。雑貨屋で買ったサングラスが大活躍したのは言うまでもない。
街を出て石畳の道を抜け、奇しくもキョウが初めてジルチの空気を吸った場所に2人は来た。バイクを止め、靴を脱ぎ、草原へ大の字で寝転びディッシュは空を見上げ、シャムルは側臥位で山々を見つめる。
「大霊峰が見えるわ」
「主としては心配ですか?」
「クロックがいるもの、心配ないわ」
「クロック様の敏腕は有名ですね」
「ディッシュ、今から言うことは教皇、シャムルどちらでもないシャルルとしての世迷い事よ」
「どうぞ、ここには俺とシャルルしか居ません」
「クロックに謝りたい」
「理由を聞いても?」
「彼が教皇になるべきだった」
「国民の総意はそうはなりませんでしたね。かく言う俺もクロック様に投票はしませんでした」
「ミスキャスト。配役を間違えた喜劇なんて滑稽でしかないわ」
「幕が上がってしまったからには終劇まで演じ切るしかないのでは?」
「観客も馬鹿じゃないわ、演出家も脚本家も。全員気づいているのよ。王様は裸だって」
「次の教皇指名まで裸の王様は踊り続けるのでしょうか?」
「2年は長いわ。踊り疲れるには充分に長い」
「シャルル」
「何?」
「頑張ったね。俺には想像することも難しい世界だ。でも頑張っていることだけは分かる」
ディッシュは身体を起こし鞄から紙袋を取り出し、シャムルへ渡した。
「頑張ってる人へのプレゼント」
シャムルも立ち上がり紙袋を開ける。中身は削り出しのブレスレットだった。
「アクセサリーを作ったのは初めてです」
「ディッシュ」
「は、はい」
「つけて」
ディッシュは汗ばんだ手をズボンで乱暴に拭き、受け取ったブレスレットをシャムルのか細い手首に嵌めた。
「似合う?」
キラキラと乱反射する手首を振りニコニコと笑うシャムル。その笑顔は大霊峰へ移籍以前の聖女の笑顔だった。
「最高に」
「あなたも最高よ」
二人は手を繋ぎクルクルと回り、踊った。観客の前で踊らされ続けている教皇は、今だけは自分の意思で踊る。
一方、キョウ君は職場の年上女性に気に入られ、それを現場の先輩達にいじられながらも充実した日々を送っています。




