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魔錬精機  作者: 渡瀬 理央
祈りの国編

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序章2

 革命が起きてからは早かった。RMリーグはとどまることを知らず青天井で人気は今も上がり続けている。

パンデミックの影響や、PCは勿論、スマートフォンで気軽にオンライン対戦出来る環境も大きな補助輪となった。

 プレイヤー人気も高まり露出と収入、仕事量が極端に増えたことで麻雀プロにとってRMリーガーかそれ以外か。それこそがプレイヤーにとっての分水嶺となった。RMリーガー以外の大多数は今もなお、閉鎖された世界でRMリーガーという蜘蛛の糸をが垂れてくるのを待っている状態だ。

 七尾京はRMリーグ元年当時、27歳と言う年齢であった。40代のプレイヤーが上澄みの麻雀界において若さはそれだけで「異彩」となった。更に運も味方した。キャリア10年未満、実年齢30歳までがエントリー可能な新人プロの登竜門「獅子龍戦」を27歳のキャリア7年目で獲得した。時代と運が七尾京を味方した。

 そして京は選ばれた。麻雀プロ総勢3500人の中から40人。1.14%しか選ばれない世界最高最強への舞台へ。思えばドラフトで3位指名ながらRMリーガーになれた日が七尾京のプロ雀士史上最高の1日だったかもしれない。

 京を指名したチームは「ホワイトラビッツ」東京だらけのRMリーグチームと違い、神奈川県を本拠地に置き、メインスポンサーであるラビット運輸の本社も神奈川県厚木市に居を構えている。

 RMリーグ8年の歴史の中でホワイトラビッツは優勝経験こそないものの、7位以下で終えたシーズンは1度もない。3年前には2位というチーム過去最高成績を収め、京もチームに貢献出来た自負はある。「大崩れしないけど大爆発もない地味なチーム」それが世間でのホワイトラビッツに対する評価である。その評価は京自身にも当てはまるものだった。対局後のインタビューでは1位と4位、勇者と蛮勇の選手が呼ばれることが多い。話すネタが多いからだ。2着率が全選手トップの京にインタビューが回ってくることは珍しく、この日も3着で対局を終えた京はインタビュールームに用はなく、チームメンバー、チームスタッフに軽く挨拶をし、帰り支度をしていた。

 対局スタジオの出口へ向かう途中、京のスマートフォンがメッセージを伝えた。

 「対局本当にお疲れ様だよー。京ちゃん1番強かった!京ちゃん1番かっこよかった!結果も実力も麻雀の神様がシーズン終わったら教えてくれるよ」

 妻のマドカによる対局日恒例のメッセージ。勝負の世界で生きている人間への配慮が凝縮されている。それもそのはず、結婚を機に引退したが「元奨励会3段 元女流棋士5段 天宮マドカ」将棋ファンなら1度は耳にしたことがある名前である。妻もまた、数年前まで勝負の世界に生きていた。

 定石が整備され、戦略AIによる研究が加速度的に進んだ将棋界において、天宮マドカがたった一人で考案し、現代将棋に一石を投じた戦法「アマテラス」は当時、女流棋士の間で大流行した。研究が進んだ現在では弱点も見つかりB級戦法と揶揄されることもあるが、アマチュア棋士の間では今もなお研究テーマになっている人気の戦法。それを彼女は一人で実戦に耐えうる武器として練り上げた。

 定石をなぞりつつ、駒の損得に囚われない、盤上を俯瞰で見ているような、それでいて勝利へ光速の美しい寄せは「天女(てんにょ)流」と称され、将棋界初の女性棋士誕生を夢見るファンも多かったが彼女が選んだ道はプロ棋士ではなく麻雀プロとの結婚、そして引退だった。

 現在は将棋界を完全に引退。それでも家事の合間に気まぐれで将棋道場へ足を運んだり、インターネット対局を配信することはある。配信は不定期ながらなかなかの人気で、一度、本家本物の「アマテラス」を披露しアマチュア6段を瞬殺した配信は「天女ちゃんはいるんだ!」と言うなかなかなハッシュタグと共にトレンド入りしたほどだ。結婚を機に本人は七尾マドカを名乗っているが全く浸透せず「天女ちゃん」と応援チャットが賑わうのが通例だ。

 そんな愛する妻からのメッセージに頬を緩ませていると更に京のスマートフォンに通知が届いた。今度はメッセージではなく、電話だ。電話帳に登録されている為、表示された名前は「オーナー」京は咳払いをし、周囲を確認すると電話をとった。

 「お疲れ様です、七尾です」

麻雀も将棋も大好きです。

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