6話 犯人
「お前…今、なんて言った?」
勝が蘭の方を向いて、蘭に聞く。
「え…?どういうこと…?」
蘭は勝の発言の意味を分かっていない。勝は険しい顔をしている。
「だから、今言った言葉もっかい言ってみろ…」
勝は自分らしくないようなどすの効いた声で蘭に言う。
「えっと…星五先輩が言ってた通り、突き落とされた時と同じ衝撃を与える方が早いんじゃないって言ったんだよ。」
蘭はさっき言った言葉をもう一度勝に伝わるように言う。蘭が勝に同じことを言った途端、勝の顔がさらに険しくなった。
「ようやく違和感の正体が分かった。言葉の違和感だったんだな…」
勝は頭を抱える。
「お前、なんで突き落とされたなんて言った?」
勝は蘭を指さしながら言う。
「…!」
蘭の顔から汗が出る。でも蘭はすぐに表情を変えた。
「僕、校庭で見たんだ!誰かが青流を突き落としてるの…!」
蘭はアリバイを言う。
「…あれ?校庭から中庭側の屋上のフェンス近くって、見れなくない…?」
恵理が蘭に近づく。
「恵理の言うとおり、蘭が校庭にいるとしたら、校庭側のフェンスしか見えないはずなんだ。だって、校庭は校舎を中心にして南側にあるからな。それとは逆で青流が落ちた中庭は、校舎を中心にして北側にある。真反対の位置にあるのに、見えるはずがない。」
勝が少しずつ、蘭を追い込む。
「…」
蘭は黙ったままだ。
「だとしたら、突き落としたと知っているのは犯人だけ…つまりこれが故意に起こされた殺人未遂の事件だとしたら、犯人は蘭、お前だな?」
勝は蘭をもう一度指さした。だが蘭は黙秘を辞めない。
「…っ!」
蘭は勝たちがいない隙間を狙って、廊下を走る。
「…待て!」
勝たちは走って蘭を追う。走っている間、青流は勝の背中を見ていた。
(私のために、あんな必死に…?)
青流はピロティで足を止める。同時に勝と恵理も足を止めた。根子田は蘭を追いかけ、校庭に行く。
「青流…?」
勝は青流の背中をさする。青流は頭を両手で押さえる。
青流にとって、勝は救いだった。
「全く!またテスト赤点なんですか!?」
「それが俺という人間で〜す!」
まだ出会って1週間しか経っていないのに、勝とずっと一緒にいたいと思えた。青流がそう思えたのは、勝の持ち前の明るさ、そして自分とは違う何かを感じるからだ。
勝も、同じことを考えていた。青流はバカな自分に必死に勉強を教えてくれる。そんな青流を勝は尊敬していた。
だが、それは逆を言うと申し訳なさを感じやすいということ。2人の心情は…
(私は、なんで勝さんに勉強を教えられないんだ…?こんな自分で…いいんでしょうか…?本当に申し訳ない…)
(あぁ…なんで俺、青流に迷惑しかかけてないんだろうか…見捨てられたくない…)
二人は、大きな勘違いをしているのであった…
「…勝さん…」
「え?」
青流が勝の名前を呼ぶ。
「青流…まさか…記憶が…?」
勝は状況を察し、涙ぐむ。
「…えぇ。私のためにあんな必死に…ありがとうございます。勝さん。恵理さん。」
「青流ぅ…!!」
勝は青流に抱きつく。
「ごめんな…俺のせいで、こんな大ごとに…」
勝は泣きながら青流に謝る。
「いえいえ…!悪いのは、ちゃんとしてない私の方で…」
青流が何かを言いかけたその時、
「あああああああああ!?」
校庭から根子田の悲鳴が聞こえる。
「え…何…?」
恵理が青ざめながら校庭を見る。
「行きましょう!根子田さんに何かあったのかも…!」
青流たちは走って根子田と蘭の方に向かった。
「あああああああああ!?」
校庭から聞こえてくる根子田の悲鳴。いったい根子田の身に何があったのか…そして蘭は一体何故、青流を突き落としたのか…?
次回 魔力




