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友情マギカプリ 〜魔法が使えるスマホアプリを開発して、二つの世界を守ります〜  作者: 秋乃 透歌
第一章:機械世界の協力者

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第五話:第一の攻防

 翌日、九月十七日。第一の攻防があると計算された日。

 私は、ミカエラと共に学校から帰宅した。それから、カバンを置く間も惜しんで、制服から私服に着替えた。動きやすくて手足を守れる服装を心がけ、デニムのパンツに灰色のパーカーを合わせた。靴もスニーカーにするつもりだ。髪ももう一度しっかりポニーテールに結び直す。そして、絶対に忘れられないスマホを、ポケットにしまった。よし、準備万端。


「真保、準備できた?」


 ミカエラの確認に私は頷いた。そのタイミングで、スマホが震えて、師匠からLINAのメッセージを受信したことを知らせた。


『予定通り公園にいるぜ。いつでもどうぞ』


 師匠には、私の家から最寄りの公園に、車を用意して待っていてもらう約束になっていた。そのメッセージに『了解』のスタンプを返して、私は、ミカエラを連れて出発した。


「師匠」

「よ。今日は、ボーイッシュな服装だな。バトルモード結構」


 そう言った師匠は、いつもと似たりよったりな服装だった。バトルモードはあまり意識していないのかもしれない。


「お嬢様は助手席へどうぞ」


 冗談めかした案内に、私は助手席に乗り込んで、シートベルトをしっかり締めた。


「それでは、出発」


 公園を出発した師匠の車は、そこから順調に二十分ほど走って、優香と静流さんの住む大きなマンションの前へと到着した。私は、優香へ到着を知らせるLINAのメッセージを送った。程なくして、マンションのゲートを内側から開けて、優香と静流さんが出てきた。優香は、私と同じくバトルモードらしく、スニーカーにハイソックスと七分丈のパンツ、襟付きシャツという服装だった。それでも組合せのセンスで可愛らしい雰囲気を感じさせるからさすがだ。一方、静流さんの服装はシンプルで、青いデニムに、二枚重ねに見えるデザインのTシャツ姿だった。手には竹刀袋を持っていた。


「それでは、目的地に向けて、出発」


 師匠はそう宣言して、アクセルを踏んだ。

 渋滞に巻き込まれることもなく、予定通りに三十分。第一の攻防の開始時刻である十八時に三十分の余裕を持って、巌根神社にほど近いコインパーキングに到着した。

 巌根神社には、既に社務所が閉まっている時間ということもあり、人は全くいないようだった。四人プラスオコジョで敷地へと歩き入りながら、感じる罪悪感を意識して無視した。日没後のこの時間、空には夕焼けの気配も残っているけど、刻一刻と暗くなっていく。最低限の電灯しかない境内は、もう暗く感じるくらいだった。私は、ふと思いついて、主神殿に向かって手を合わせた。これから騒がせてしまうかもしれません。

 主神殿に向かって右手奥へと進んだところに、今回の攻防の対象である要石があった。


「うわー、大きいね」


 優香が思わず口にした通り、大人三人がかりで抱えるような大きさの丸い岩が、半分だけ地上に顔を出して埋まっていた。その上部には、しめ縄がぐるりとかけられていた。


「十八時から十分間、これを守るのね」

「守るって言っても――壊そうとしても、壊れなさそうだけど」


 とんとん、と要石を叩いて、静流さんが感想をつぶやいた。確かに、私も、そう感じた。第一の攻防、もしかして簡単なんじゃないか?


「これくらいの大きさの岩なら、中級以上の攻撃魔法ならあっさり砕けちゃうよ。アンデザイトだけでなく、プルナスでも余裕だよ」

「……そんなの相手に、どうやってこれを守るの?」

「俺、木刀なんか持ってきたけど、意味ないかも」


 静流さんは、木刀を右手だけで振るった。ぶん、と風を切る音がした。


「意味ないなんてことはないさ。よし、じゃあ、手短に準備をしよう」


 師匠がそう言って、ポケットからスマホを出した。でもそれは、師匠のいつものスマホではないようだった。


「昨日の今日で、一台しか準備できなかった。予備のMPU搭載スマホだ。これは優香ちゃんに。――静流ちゃんは、悪いけど、今日は木刀で頑張ってくれ」


 師匠は、そのスマホを優香に手渡し、続けた。


「マギカプリで、基本的な攻撃と防御の魔法を使えるように設定しておいた。時間があれば、好きな魔法をショートカット登録しておくと便利だけど。まずは、ロック解除のための音声を登録してくれ」


 優香は、師匠の指示で、三回ほど『マギカプリ、オープン』と発声した。これを登録することで、優香の声だけに反応してロックが解除されるようになるのだ。


「これを『魔法使用モード』で使うんだが、その前に、安全装置を解除して欲しい。これは、真保ちゃんもやっておいてくれ。メニューから、開発者用コードの入力を選択して、9を九回入力する」


 あ、そうだった。


「私、前回、プルナスに向けて魔法を撃った時、安全装置付けたままでした。だから外れたり、弱かったりしたんだ」


 突然の実戦だったし、頭がそこまで回っていなかった。師匠の指示通りのコードを入力すると、『安全装置を解除しますか?』のメッセージが出たので、OKを選択した。


「これで、遊びやゲーム専用のマギカプリが、実戦にも使える状態になった訳だ」


 これで準備万端だ。


「よし。じゃあ、基本的な作戦を相談しよう」


 師匠はそう言って、その場を仕切り直した。


「まず、攻撃チームと防御チームに分かれる。攻撃チームはオレと静流ちゃん。防御チームは真保ちゃんと優香ちゃんだ」


 要石を守らなくてはいけないのだから、防御は分かる。でも、攻撃が必要だろうか。


「バスケットボールのディフェンスをイメージして欲しい。攻撃チームは、シュートを打たせないように相手にプレッシャーをかける。オレの攻撃魔法と、静流ちゃんの木刀だ。一方の防御チームは、シュートを打たれた時に、弾いたり守ったりする。真保ちゃんと優香ちゃんは、防御魔法で相手の魔法を防いでくれ。――以上」


 師匠の作戦は、それだけだった。すごい作戦が続くと思っていたので、思わず拍子抜けしてしまった。


「以上ですか」

「雑だけど、細かい想定は意味ないと思う。柔軟に動けるようにしておこう。――そして、ミカエラちゃんには、最も重要な任務を与える」

「わ、わ。何かな?」

「それは、時間稼ぎだ。バトルが始まる前に、アンデザイトとプルナスへ話しかけて、可能な限り時間を稼ぐ。理想を言えば、制限時間を忘れさせて、攻撃を打たせないのがベストだ」


 確かに、それはとても有効な作戦だ。制限時間を忘れさせることができなくても、時間稼ぎが長ければ長いほど、守備に成功する可能性が高くなるはずだ。


「分かったよ。やってみる」

「時間稼ぎも、みんなで協力してやろう。基本的には――」


 師匠が、さらに言葉を続けようと、何かを言いかけた。そのタイミングで――。


「っ――!?」


 ぞわり、と嫌な感じがした。何これ。気持ち悪い。ここにいたくない。

 視線を上げると、私だけでなく、師匠も、静流さんも、優香も、同じように顔色を悪くしていた。

 何かがおかしい。でも、そんなことより。とにかく、ここから離れないと――。


「アンデザイトの【人払い】の魔法だよ! みんな、深呼吸して! レジスト――ここにいたいと強く思うんだ!」


 ミカエラの声が、なんとか私をこの場に留まらせた。深呼吸。私は、ここにいたい。ここにいる。ここで、二つの世界を守るんだ――! すると、ふっと体が軽くなった。レジストに成功したんだ。


「優香!」


 私は、まだ体をふらふらとさせている優香へと駆け寄った。優香の手を握り、彼女の肩へ手を置いた。


「優香、しっかり! 深呼吸して、気持ちを強く持つ! あなたは、ここで、二つの世界を守るんでしょ!」

「真保ちゃん……。そうだよ、私は、ここで――あ、なおった」


 途中から、優香の声が明らかに軽くなった。見回すと、師匠も静流さんも、顔に明るさが戻っていた。良かった。なんとかなったみたいだ。


「ミカエラ、ナイス」


 私は、ミカエラへと称賛の言葉を送った。


「任せて。いよいよこれからだよ」


 その声が合図になった訳ではないだろうけど――。

 ざりっ、と境内に敷き詰められた砂利を踏む音が聞こえた。その音に目をやると。そこには、二つの人影が現れていた。一つは、見たことのある、金髪黒衣の女性だった。黒いローブを身に着けていて、その金髪の生え際、額の右側に鬼を思わせる角が一本生えていた。プルナスだ。とすると、もう一つの人影が、アンデザイトか。彼を見た時、まず目が行くのは、頭の左右に対称に生えた歪曲した雄山羊の角だった。見間違いようのない、魔法世界の魔族の特徴だった。麻色のローブを着ているが、そのシルエットは、間違いなく大柄な男性のそれだった。二人は、まだ距離はあるものの、確かに私達へと向かい立っていた。


「アンデザイト。プルナス」

「お前が、唯一、機械世界に辿り着いた魔法騎士か。ミカエラ=プライマルシールド。よくぞ、この時、この場所に辿り着いたと褒めておこう」


 アンデザイトが、そう口を開いた。声だけ聞けば、落ち着いているのに良く通る、年配の教師のような印象を受けた。それでもその内容は、敵の名前など把握済みだと宣言する、敵意に満ちたものだった。


「ボクの名前を……。なるほどね。たった一人の魔法騎士なんて、相手にもしないのかと思ったけど、フルネームで覚えてくれているんだね。ボクがよっぽど怖いみたいだ」

「私の目的の前に立ちふさがる者には、敬意を持って向かい立つ。それだけだ」

「アンデザイト先生。相手にする必要もないかと。魔法も使えないオコジョが、飛び跳ねて見せているだけですので」

「そして、機械世界の人間達よ。先程の【人払い】の魔法を受けてなお留まるということは、お前達も、私の目的の前に立ちふさがる障害で間違いないな?」


 ぐっ、と前方から圧力を受けたかのように感じた。魔力なのか、気迫なのか、何かが吹き付けたようだった。


「プルナス。事前の報告より、二人ほど多いな」


 ふと、アンデザイトは、横に立つプルナスに声をかけた。吹き付けていた圧力がなくなり、私は安堵の息をついた。だめだ、気迫だけで負けそうになっている。


「申し訳ありません。二人は協力する可能性があると把握しておりましたが、それから仲間を増やすことに成功していたようです」


 その静かな声の途中で――ピッ、と小さな電子音が聞こえた。師匠がスマホで設定しておいた、十八時を知らせるタイマーだった。

 第一の攻防が始まった。そして、作戦の第一段階は、とにかく時間を稼ぐことだ。


「アンデザイト。本当に、二つの世界を切り離すつもりなの?」

「そうだ。それが私の目的だからな」

「どうして? 二つの世界は、今は安定している状態だって聞いた。わざわざ切り離したりする必要はないんじゃないの?」

「確かに、二つの世界は、今は安定しているとも言える。だが、厳密には、より結束する方向に動いており――いずれ、完全に同一化してしまうだろう」

「完全に同一化?」

「その通り。二つの世界は混ざり合い、一つの世界へと姿を変えるだろう」


 二つの世界が、一つの世界になってしまう。それは、確かに、大きな混乱を招くだろうけど。今、無理やり二つの世界を切り離すほどの理由にはならない気がした。


「それが、どうして、二つの世界を切り離す理由になるんだ?」


 師匠が私の疑問を代弁してくれた。それを受けて、アンデザイトは、頷いた。


「現状の二つの世界は、数十の細いゲートで、限られた行き来があるだけだ。しかし、世界が完全に同一化すれば、ゲートに頼らずとも、お互いの世界に行くことができるようになる。そうなれば、何が起こるか分かるか?」


 ミカエラを含め、こちらのメンバーは答えを返せなかった。


「侵略だ。――戦争を多く経験し、大量虐殺が可能な兵器を持ち、新たに手を伸ばす土地に飢えた機械世界の人間は、間違いなく魔法世界を侵略する」

「それは――」


 ミカエラが、何かを言い返そうとして、言葉を止めてしまった。侵略。そんなことが、本当に起こるのだろうか。理路整然と言葉にされてしまえば、確実に起こる未来のように感じてしまうけど。


「だから、今のうちに二つの世界を切り離してしまおうと考えてるんですか?」


 語気は弱いが、優香も時間稼ぎに参戦した。


「そうだ」

「二つの世界を切り離した影響で、二つの世界に大きな災害が起きる可能性があると聞いた。それは本当なのか?」


 冷静な声色を失わないまま、静流さんが優香の後を継いだ。そうだ、災害の話は、重要な論点のはずだ。


「災害か――可能性ではなく、間違いなく起きるだろう」

「大災害が起きることが分かっていて、それでも二つの世界を切り離すって言うの!?」


 ミカエラが、叫ぶようにして言葉を叩きつけた。


「そうだ。私は、愛する魔法世界を守りたい。こども達に、平和な世界を残したい」

「矛盾してるよ! 大災害は、魔法世界にも起こるんでしょ?」


 ミカエラの言う通りだ。守りたい世界を、壊そうとしている。


「確かに、その通りだ。だが、災害からは立ち直れる。一方で、侵略は私達の全てを奪い尽くしても止まることはないだろう」

「そんな……」


 ミカエラは絶句してしまう。


「アンデザイト先生。そろそろ五分です」

「そうか。では、質疑の時間は終わりだ。――その要石、破壊させてもらおう」


 問答無用だった。口を挟むことはできない。その感覚を、師匠と静流さんも感じ取ったようだった。二人の気配が、走り出す前のそれに変わった。時間稼ぎは終わり。

 第一の攻防は、第二段階に入った。


「ヤアアッ!」


 静流さんが、気迫の声を上げた。腹の底から放たれる、鍛錬された大声だ。アンデザイトとプルナスの注意が、完全に静流さんに向けられた。

 その瞬間を見計らったように、左手に持ったままの木刀を構えることなく、静流さんが駆け出した。あっと言う間にトップスピードになる、全力疾走だった。


「マギカプリ・オープン!」


 師匠も駆け出しながら、マギカプリの音声認識を解除した。私も続かないと。


「優香。やろう!」

「うん」


 私は、優香に声をかけると、スマホを取り出し、マギカプリを起動した。


『マギカプリ・オープン!』


 期せずして、二人の声が重なった。私はショートカットから【水の盾】を選択、いつでも撃てるようにスマホを構えた。

 そのタイミングで、相手との距離を詰め切った静流さんが、急ブレーキをかけながら木刀を構えた。


「機械世界の剣士ですか。前衛は、足を止めるに限ります。【影の拘――」


 プルナスは、右手を掲げて魔法を放つ。ミカエラを抑え込んだ、影の魔法だ。

 しかし――。


「小手えっ!」


 静流さんの声と動作が、プルナスの魔法を追い越した。


「きゃっ!」


 静流さんの木刀が巻き込むように振るわれた。手の甲を強かに打ち付けられて、プルナスが悲鳴を上げた。先手を取った。しかし、そこで、静流さんは足を止めてしまった。


「あっ……」


 静流さんが漏らした声は、先程の気迫を失った物だった。


「覚悟が足りなかったな。【風の殴打】」


 アンデザイトが魔法を放った。彼の左腕を振るう動きに合わせて、矢の魔法より大きくまとめられた風が、静流さんの体を真横へと吹き飛ばした。


「お兄ちゃん!」


 優香が悲鳴を上げた。


「【風の障壁】」


 静流さんの体が、地面に叩きつけられる――そう予感した直後に、アンデザイトが再度の風魔法を唱えた。驚くことに、静流さんはふわりと着地した。――手加減された。


「心配するな。機械世界の人間を、いたずらに傷つけるつもりはない」

「こちらもお忘れなく! 【炎の瀑布】っ!」


 師匠の声とともに、炎が巨大な滝のように流れ落ち、行く手をふさいだ。


「目眩ましは無駄です。【雷の大槌】っ!」


 プルナスの声に、大きな雷の一撃が、炎の滝を突き破ってこちらへ飛んできた。いけない、防御を。


「【水の盾】」

「えっと、【土の盾】っ!」


 私が生み出した水流の防御と、優香が生み出した土の防御が、重なるように雷に立ちふさがった。衝撃と轟音。そして、魔法の消失現象。キラキラとした黄、青、茶の光の粒が舞う。攻撃は防げたけど――効率が悪い。私と優香と、交互に防御するべきだった。


「前に出るには鍛錬が足りないな。【風の殴打】」


 アンデザイトの魔法が、師匠に襲いかかった。魔法の直撃を受けた師匠は、その場で倒れてしまう。――師匠!


「真保っ!」

「よそ見している暇はありませんよ」


 ミカエラとプルナスの声が同時。私が気付いた時には、プルナスが目の前まで走り寄っていた。その勢いのまま私とプルナスはぶつかって――。


「っ!」


 私は、悲鳴を飲み込んだ。突き飛ばされて、地面に転がったのだ。私の肩から放り出されたミカエラも、地面に体を打ち付けている。


「真保ちゃん! 【風の――」

「【雷の武装解除】」


 優香の魔法に割り込んで、プルナスの魔法が放たれた。


「あっ――?」


 優香は、手がしびれてしまったように、スマホを取り落とした。


「これで終わりです。【風の斬――」


 まだ!


「【風の矢】っ!」


 私は、倒れたままで向けたスマホをタップした。攻撃を察知したプルナスは、大きく体勢を崩しながらも放たれた矢をかわした。


「やりますね」


 地面に左ひざをつき、こちらを振り返ってプルナスが言った。


「だが、これで終わりだ。【風の斬撃】」


 いつのまにか私のすぐ側まで移動していたアンデザイトが、強力な風魔法を放った。研ぎ澄まされた鋭さを持つ、破壊の力を秘めた風。びしり、と音を立てて、要石が真っ二つに割れた。切断されたしめ縄が、ばさり、と音を立てて地面に落ちた。


「あ……」


 私は、破壊されてしまった要石を眺めることしかできなかった。

 アンデザイトが、私の視界の端で、プルナスを助け起こした。そして、二人の姿がゆらりと揺れたかと思うと、どこへともなく消えてしまっていた。終わってしまったのだ。


「真保。大丈夫?」


 ミカエラの声で、ようやく私は我に返った。私は、なんとか立ち上がった。視線をやると、優香は落としていたスマホを拾い上げていたし、師匠と静流さんもそれぞれ体を起こしたようだった。良かった、みんな無事だ。

 それでも、第一の攻防は。


「負けた――」


 私の声は、人のいない神社の境内に、虚しく響いたのだった。


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