第68話~賢者の塔~
リピタの町を出発してから30分、帆船の窓から外を見ていると、今までで一番大きな空港が見えてきた。
「えっと……あ、乗客の皆様~。本船はこれよりツコーレ共和国の首都セルバの空港に着陸します~。揺れがございますので、どこかに掴まる等対策をお願いします」
そのアナウンスの少し後、空中帆船内部はそこそこ揺れたものの、特に問題は無く着陸した。船から降りた僕たちは、空港内の観光案内所に行ってガイドブックを貰い、休憩スペースで一旦相談を始めた。
「例によって何処に行こうか決めないで首都に来たんだけど、どうしようかな……」
「うーん。ちょっとガイドブック見せてもらえませんか?」
リュエルがそう言ったので、ガイドブックを渡した。
「……そうですね。ここなんかどうでしょうか?」
そう言って見せてきたのは、空港から歩いて20分程の所にあると書かれている『賢者の塔』のページである。およそ900年前にこの国を創設したと言われるとある賢者が、今は失われた古代の魔法を書き記した魔導書を大量に詰め込んだ場所らしい。
塔全体に古代魔法『時流遅延』が永久的に掛けられているらしく、塔そのものや内部の魔導書等の物は普通に比べて劣化の速度が1万分の1まで抑えられており、建てられた当時のままで塔や保管されている古代魔導書等の物が残っていることもあり、古いもの好きな人たちや、古代魔法を研究している研究者、魔法を極めたい人たちがこぞって見学に来る人気観光地と化していったとのこと。
「私としてはそこに行きたいと思う。魔法使いやってるから、やはり訓練だけではなく魔導書から知識を得ることは大切だしな」
「私もミラと同じじゃ。大賢者となって沢山の魔法や術の知識を得たが、古代魔法について書かれた本があるなら、きっとまだ私の知らない現代魔法もあるかもしれんからな」
「成る程ね。じゃあそこにしようと思うけど良いかな?」
ミラとフィンドルがそこに行きたがっていて、他の皆からの反対意見も無かった為、賢者の塔へ魔法知識を得るのも兼ねて見学に行くことになった。
休憩スペースから立ち、空港から出ると、遠くに周りの建物よりも高い塔が見えた。あれが恐らく賢者の塔だと思われるので、一応ガイドブックを見て確認したところ、特徴的な外観が一致したのでそこに向かう。
15分程歩くと、目的地である賢者の塔に到着した。中に入ると、図書館なんてレベルではない量の魔導書がズラリと並んでいた。
「うわぁ…… ここの塔の魔導書全部で何冊あるのかな? 読みきるのは無理そうだね」
「2階が精霊術と召喚術の魔導書、3階が生活系魔法の書、4階から最上階の1個下の階までが古代魔法、最上階が禁忌の秘術魔導書…… どれから読もうかのう」
「1階の魔導書の一部だけでも読んでおこう。全部は何年掛かるか分からないし」
ここにずっと滞在するわけではないので、普段の冒険に使えそうな1階と3階の魔導書を読むことにした。一冊一冊がかなり分厚く、数時間掛けても本棚1つ分読むのがやっとであった。
「ふぅ…… 流石に何時間もぶっ続けで本を読むのは辛かったのぅ」
「次々に興味が湧く知らない魔法が出て来て読んでたらいつの間にかこんなに時間が過ぎてたしな」
「じゃあ、今日はおしまいってことでいい?」
「ああ。もちろんだ」
フィンドルとミラが満足したようなので、今日はひとまずおしまいにして、宿を取ることにしたので、ガイドブックを見ながら有名どころのホテルに向かった。運良く空いているらしく、直ぐに泊まれるとのこと。チェックインを済ませて案内された部屋に入る。
「明日はどうするの? 毎日本ばかり読んでるのもつまらないと思うから違うところに行かない?」
「まあ、そうだな。私とフィンドルは良いが、他の皆が退屈だろうし」
「そうじゃな。ミラの言うとおりだと思うぞ」
2人からの了承も得たのでそうすることにした。詳しい行き先は明日決めることにしたので、今日は食事をとって風呂に入った後直ぐに眠りについた。
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