第65話~精妖たちの始祖~
次の人のお祈りをする為の準備をしていた精霊たちの元に駆け寄って行った黒フードの人物たちは、とても人とは思えない速度で動き、彼女たちを謎の魔道具で拘束した。
「しまった…… 警戒していてこの体たらく!」
出せる力を解放して彼女たちを助けようと動こうとすると……
「そこのお前! 動くな! この俺様の背けばコイツらをあの世に送ってやるからな」
「くそぉぉぉ!!」
行動が遅れたせいで助けることが出来なかった。無闇に動けば彼女たちの命が危ない。ここは大人しく奴の指示に従うことにした。
(こんな時に時を止める術があれば!! いや、そもそも僕がすぐ動いていれば……)
そう心の中で後悔していると、奴等が何か喋り始めた。
「良いかよく聞け貴様ら。我々は今からこの町を滅し、『デゼアラム教壊団』の拠点とするのだ! そこの人間や亜人族どもは今から我々の奴隷となってデゼアラム様の為に働くことになる!! 逆らえば容赦はしない!」
デゼアラム教壊団。ルスツカゼ神殿の時にも風の神像を破壊しに来るという事をしに来た奴らか。あらゆる宗教を目の敵にしているから、きっとここも何らかの宗教だと思ったのだろう。どうにかこの状況を打破しようと考えていると……
「うるせぇ! 何で俺らがお前らみたいなゴミ屑の奴隷になんかならねぇといけねぇんだよ! さっさとその娘らを放せ!!」
「ゴミ屑はまだ肥料とか燃料に使えるからいいですけど、コイツらみたいな使えない『奴』はなんの役にもたたないどころか、周りに災厄をばらまく魔物ですよ!」
「さっさと天罰喰らって死ねや! この屑共が!!」
突然お前ら奴隷にすると言う宣言をされた冒険者や商人、ここに元々住む精霊や妖精たちは猛烈に反発し、思い思いに奴らを罵倒する。中には直球な暴言を連呼する人も居た。
「そうか。そこまで貴様らが反抗するならば仕方ない。見せしめることとしよう」
そう言って奴らが捕まえた精霊たちに刃を向けて殺ろうとした時、不意に声が聞こえた。
「よくも私の子供たちを傷つけてくれましたわね…… あなたたちの所属する団体は未来永劫許しませんよ!」
声の方を見ると、神聖霊樹の中から水色の髪、銀色の瞳を持った美しい女性が出現した。
「なんだ貴様は!」
「私はシェイン。この世界に居る精霊・妖精たちを生み出した者ですわ」
「何ぃ!?」
突然の登場に黒フードの集団も含めて全員が彼女の方向を見る。
「よし、今だ! クルル、一緒にお願い!」
「……分かりました。お任せ下さい」
この僅かに出来た隙を使い、クルルと共に全力で加速する。人質が殺られては意味がないので、奴等が襲ってくる前に素早く精霊たちを拘束している魔道具を破壊、救出する。
「ちっ! おい貴様ら! 待て!」
僕とクルルにやっと反応した奴等が襲いかかってくるも……
「そうはさせませんわ」
先ほどの銀髪の女性シェインが僕とクルルを追いかける奴等の前に出現し、妨害した。
「くそ! どけェェ!!」
黒フードの集団は魔法で強行突破を試みたが、全て消されてしまった。
「私の子供たちに仇なす貴殿方をこのまま逃しておくわけにはいきません。この場で死んで頂きましょうか」
そうシェインが言った瞬間、周囲に威圧が撒き散らされる。
「我が子に仇なす者は容赦はしませんわ『ライフコラープス』」
彼女が魔方陣を展開し、奴らに向けて手を翳す。すると、全員が突然苦しみ始めた。それから30秒程経つと、だんだん奴らの身体が光の粒子と化して消えていった。
「がはっ! げほっ!」
ほぼ全員が消滅したが、今回のリーダー格とみられる人物が、彼女の魔法に瀕死になりながらも耐えていた。
「あらまあ、私の魔法に耐えたのね。やるじゃない」
「た、頼む…… 命だけは助けてくれ」
「え?『この町を滅す』つまり、この町の精霊や妖精たちを皆殺しにすると言う宣言をした人を見逃すと思って?」
そう言って彼女は、瀕死状態の奴に向けて止めの雷撃を放って消し飛ばした。
「凄かったな。でも、何で一思いに消し飛ばさないで長めに苦しめたんだろうな」
「うーん。まあ、奴等がやろうとしたことがシェインの逆鱗に触れたんだろうね。もし私がシェインの立場だったら、同じ事をするかもしれないね」
「あれがシェインの最大級の裁きの鉄槌なのでしょうね」
「成る程」
こうして、この町を滅ぼそうとしたデゼアラム教壊団の一員は、逆に滅ぼされることとなった。
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