第63話~精妖の集う町 リピタ~
「ここはなんて町なんだろう? アナウンスとかないから分からないな」
「どうします? 船の修理自体は1日あれば終わるみたいですし、それまで船の中で待つという選択肢もありますが」
「まあ、これも何かの縁だ。こうして船に不測の事態が起きなければこの町の存在すら知らなかったのだから。急ぎの用事は無いし、依頼の途中でもないなら観光していくのも私は良いと思う」
10分間の話し合いの後、特に急いで首都に行こうとしているわけではないので、この町を観光していくことに決めた。
「成る程。ここは精妖の集う町『リピタ』と言うのか。言われてみれば確かに精霊や妖精たちの数が他の町や村・都市に比べるとかなり多いな。と言うかほぼ全員だが」
「これだけの精霊や妖精たちが集まって町を作るなんて珍しい…… と言うか初めて見ました」
「それにここの精霊や妖精たちは、私やクルル、ミラに対して凄い好意的じゃ。何故かは分からぬが……」
空港を出るまでに何回も精霊や妖精たちに声をかけられていたミラやフィンドル、クルルの3人。その他の先ほど緊急着陸した船に乗っていた人間たちにも沢山声をかけているのを見た。それらの状況から判断すると、どうもここの精霊や妖精たちは人間に対してかなりの好意を抱いているようで、他の種族よりも僅かに有利な扱いを受けている。だからといって他の種族を蔑ろにしているわけではないようだ。
「理由なんてどうでも良いじゃない。好かれていると言う事は、少なくとも種族関連の差別を受けることはないって事だからさ。冒険するにはうってつけだと思うよ」
「まあ確かにその通りだな」
そんな事を話しながら町内を散策する。精霊や妖精たちが住む町だけあって所々に林が点在していて、建物の高さも平均身長の低い精霊や妖精たち基準の為、低めである。ただ、宿屋や観光施設は人間に合わせられている所が多いのを見ると、リピタの町は人間たちの観光地としてかなり人気のようだ。
そうして一通り町内を散策した後……
「うーん。どこに行こうか全く思い付かないな。よし、空港の職員に聞いてみよう」
「そうですね」
再び空港に戻り、近くに居た職員の精霊に観光名所を知らないかと訪ねたところ『目の前の通路を右に回った所にある観光案内所の妖精に聞いた方が良いよ』とのことなので、言われた通り観光案内所に行ってそこに居た妖精に聞いた。
「……あの、すみません。この町の観光名所を教えてほしいのですが」
「あ、はーい。ちょっと待ってて下さいね~」
そう言って妖精は奥のスタッフルームに入っていった。5分後、1人の妖精を連れて出て来た。
「お待たせしました~。こちらが妖精の『アルカ』です。この町の観光地巡りをする間、案内をします」
「みんなが楽しく観光できるように僕、案内頑張るからよろしくね!」
「うん。こちらこそよろしくね。それにしても、私たちだけの為にスタッフを割いて大丈夫なのでしょうか?」
「勿論です!」
場所だけを聞いて行こうとしたら案内の妖精アルカまで着いてきた。しかも、観光の間ずっと案内してくれるという。凄いサービスであると僕は思った。
そして、空港を出た後アルカの案内で町を歩いていた。
「じゃあまずは、この町を守護している神聖霊が宿る木『神聖霊樹』に行こう。そこで祈ると良いことが起こる可能性があるかもしれないんだ。それに、美味しい料理を出す店もあるよ」
「へえ、そうなんだね。ちなみにどんな良いことが起こるかわかる?」
「えっとね、傷が一瞬で治癒したり、強力な状態異常が消え去ったり、体力と魔力の回復、恋の後押し等、他にも沢山あるよ!」
ただ祈るだけで、確率があるとはいえ色々な良いことが起こるなんてものすごい樹木だ。その樹木を悪用しようと言う馬鹿な輩が出てくることが無いように願うばかりである。
そんな説明を受けつつ20分程歩いていくと、商店街の直ぐ側に樹齢何千年と言われてもおかしくないレベルの大木があった。
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