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ゲームセンターの熱戦と、過去の断片



ヒロトとミユキ(シルヴィア)が近づいていく中、ミユキがまだ彼の手を握っているのを見るや否や、リカが猛スピードで突進してきて、二人を強引に引き離した!


ユウトが爽やかな笑顔を浮かべて声をかけてくる。

「よお、ヒロ。朝早くからずいぶんと楽しそうじゃん?」

ヒロトは重いため息をつきながら、頭を押さえて返した。

「どこが楽しそうに見えるんだよ……。俺は今朝、マジで死にかけたんだからな……」


ユウトは爆笑しながら彼の肩を叩いた。

「ハハハ、冗談はよせって!」

ヒロトはガックリと頭を垂らし、真剣なトーンで言った。

「冗談じゃねえよ……」


その時、リカが鋭い視線をミユキに向けて、問い詰めるように言った。

「ねえ、ミユキん! なんでヒロの手を握ってたわけ?」


シルヴィアはその後の言葉をほとんど聞いていなかった。彼女の頭の上には疑問符が浮かび、耳に残った最後の単語に全神経を集中させていた。首を傾げて不思議そうに言う。

「え? ……私の名前はミユキだ。なぜ『ミユキん』なのだ?」


リカの表情が一瞬で怒りからいつもの調子へと戻り、得意げに胸を張った。

「え? 何言ってるの? 友達同士で使う可愛いニックネーム(愛称)に決まってるじゃん! だって私達、もう友達でしょ? ヒロトのことを『ヒロ』って略して呼ぶのと同じだよ。私の本名はリリカだけどみんな『リカ』って呼ぶし、ユウトは……まあ、ユウトはユウトだから省略する必要ないよね」


シルヴィアはその言葉を口の中で転がすように、感心した様子で繰り返した。

「ミユキん……ミユキん、か。ふむ、響きが良いな」

リカはさらに得意満面になって鼻を高くした。

「でしょ? 私、ネーミングセンス抜群だから! ――って、待って! 話をそらさないでよ! なんでヒロの手を握ってたの!?」


シルヴィアは少し気まずそうに視線をそらしながら答えた。

「いや……その、あまりの人の多さに少し息苦しさを感じてな。それに、お前たちが『電車』と呼ぶあの乗り物が恐ろしくて、つい……」


後ろからヒロトが慌ててフォローに入る。

「まあまあリカ、混雑のせいで偶然そうなっただけだよ。そんなに大騒ぎするなよ」


リカは一転してヒロトを鋭く睨みつけ、彼の目の前にドカドカと詰め寄った。身長差があるため、思いきり上を向いて彼を睨みつける。彼女は頬をぷくーっと膨らませて、怒りを露わにした。

「嘘落としなさい! あんた、めちゃくちゃ嬉しそうな顔してたじゃない! 大嫌い、ヒロのバカ!」


言うが早いか、リカはくるりと向き直ってシルヴィアの手をガシッと掴んだ。

「ミユキん! 行こう、私達だけで歩こ。あんなバカ二人、放っておいてさ!」


リカは早足で歩き始め、シルヴィアを引っ張るようにしてゲームセンター(アミューズメント施設)へと向かった。ヒロトとユウトはその後ろを静かについていく。歩きながら、リカは洋服のトレンドや最新のファッションについて熱心に語り、さらには「イギリス」での生活や、日本を気に入ったかどうかなどをシルヴィアに質問攻めにしていた。


しかし、シルヴィアの目は完全に点になっていた。彼女は「イギリス」という場所がどこなのか見当もつかないし、リカが熱弁している現代のファッションについても何一つ理解できていないのだ!


後ろを歩くヒロトは、シルヴィアの背中をハラハラしながら見つめ、心の中で必死に祈っていた。

(頼むからシルヴィア……変なことを言ってボロを出すなよ、マジで!)


その時、隣を歩いていたユウトがふっと声をかけてきた。

「ヒロ」

「ん? なんだよ」

ユウトは前方を歩く少女を見つめながら、静かな声で言った。

「ミユキんってさ、めちゃくちゃ美人だよな」


ユウトのあまりにストレートな言葉に、ヒロトは一瞬で顔を真っ赤にし、照れ隠しに首の後ろを掻いた。

「まあ……お前の言う通りだけどさ」


まさにその瞬間、前を歩いていたリカが突然振り返り、二人をじっと睨みつけた。その表情はまるで「捨てられた哀れな子猫」のようで、目には嫉妬と悔しさの涙が浮かび、両頬を風船のように膨らませていた。隣のシルヴィアも、二人の会話が聞こえたのか顔を赤くしている。


リカは子供のように大声で叫んだ。

「ヒロの分からず屋! 万死に値するわ!!」

「ちょっと待てよ! なんで俺だけ怒られなきゃいけないんだ!?」ヒロトは悲鳴を上げた。


ユウトは爆笑しながら、ヒロトの脇腹を小突いた。

「じゃあさ、リカについてはどう思うんだよ、ヒロ?」

ヒロトは親友の意図を察し、リカに聞こえるように声を張り上げた。

「あ、ああ! リカだってめちゃくちゃ可愛いよ! まるで夏のひまわり(太陽)みたいに元気で眩しいしさ!」


その言葉を聞いた瞬間、リカの顔に満面の笑みが戻り、先ほどの悔し涙は一瞬で消え去った。彼女はシルヴィアの手をさらにきゅっと力強く握りしめ、嬉しさのあまりスキップでもしそうな勢いで歩く速度を上げた。


ユウトは感心したように肩をすくめた。

「へえ……お前、女の子の機嫌を取るのが本当に上手いな」

ヒロトは胸を張り、ドヤ顔を浮かべた。

「当然だろ! 伊達に長年オタクをやってねえよ!」


ユウトはクスッと笑って首を振った。

「お前は本当に果報者(ラッキーな奴)だな、相変わらず」

「あ? どういう意味だよ?」

「さあね……その鈍い頭で自分で気づきなよ、この大馬鹿」ユウトははぐらかした。

「なんだよそれ。……あ、そうだ、お前の方こそどうなんだよ? 中学時代から付き合ってた彼女とは上手くいってんのか?」


その質問が出た瞬間、ユウトの笑顔が消え、静かで冷めた声が返ってきた。

「あ、ミオリのこと? ……ああ、俺たち、別れたよ」


「――えええええええええええええっっ!?!?」


ヒロトは大絶叫してその場に急停止した。その声の大きさに、周囲を歩いていた通行人たちが一斉に振り返って彼を怪訝そうに見つめる。ヒロトは自分の大失態に気づき、慌てて何度も頭を下げながら、周囲の人々に平謝りした。


ユウトは頭の後ろに手を当てて苦笑した。

「おいおいヒロ、頼むからそんな大袈裟なリアクションしないでくれよ」

ヒロトは信じられないという顔で詰め寄った。

「だって、驚かない方が無理だろ! お前ら二人、学年全体でも誰もが認めるおしどり夫婦ベストカップルだったじゃねえか!」

ユウトは小さくため息をつき、遠い目で空を見上げた。

「まあ……人生そういつも思い通りにいくわけじゃないし、楽しいことが永遠に続くわけでもないからさ」

ヒロトは好奇心を抑えきれずに尋ねる。

「なんで別れたんだよ?」

「お前には関係ないだろ」ユウトのトーンが少し冷たくなった。


ヒロトはわざとからかうように、ニヤニヤしながら言った。

「さては、その無駄なイケメンフェイスのせいで浮気でもしたな?」

その瞬間、ユウトがゆっくりと振り返り、ヒロトを冷徹極まりない目線で射抜いた。その瞳の奥にある絶対的な圧力に、ヒロトの背筋に冷たい戦慄が走る。ユウトは低く、地を這うような声で言った。

「俺の見た目を、別れの理由に結びつけるな」


ヒロトはツバを飲み込み、恐怖のあまり両手を上げて後退した。

「じょ、冗談だって! ただの冗談だから!」

次の瞬間、ユウトの恐ろしいオーラは綺麗に消え去り、いつもの爽やかな笑顔に戻った。

「分かってるよ、俺も冗談さ。だけど……理由については、今はまだ話せないんだ」


ヒロトは重苦しくなった空気を変えるため、ユウトの肩をガシッと掴んで言った。

「よし、着いたぞ! 今日こそはあのゲームでお前をボコボコにしてやるからな!」

ユウトもヒロトの肩を掴み返し、不敵な笑みを浮かべた。

「寝言は寝て言え。いつものように返り討ちにしてやるよ」


四人はついに、巨大なゲームセンター(アミューズメント施設)の中へと足を踏み入れた。店内は信じられないほど広く、シルヴィアはその圧倒的な光の点滅、押し寄せる人の波、そして機械から大音量で流れる奇妙な電子音に完全に圧倒され、その場に立ち尽くしていた。スピーカーからは*(VICTORY!.. YOU LOSE!.. FIGHT!)*といったフレーズが絶え間なく鳴り響いている。


シルヴィアが不安そうに身を縮めると、リカが不思議そうに彼女の手を引いた。

「ミユキん、もしかしてこういう賑やかな場所って慣れてないの?」

後ろからヒロトが慌てて割って入る。

「ああ、彼女はイギリスのめちゃくちゃ田舎の出身だからさ。こういう大都会の騒がしい場所は人生初なんだよ」

リカはヒロトをビシッと指差して怒鳴った。

「あんたは黙ってて! ミユキんは自分で喋れるんだから。ね、そうでしょ、ミユキん?」

ミユキ(シルヴィア)は緊張で体を硬くしながら、小さく頷いた。

「あ、ああ……そうだ」


リカは「よし!」と言うと、シルヴィアの手を引っ張って、ダンスゲームの筐体アトラクションへと猛ダッシュで走っていった。

女子チームが去った後、ヒロトは両替したコインをジャラジャラと持っているユウトに視線を向けた。

「準備はいいか?」

ユウトは前髪をサッと掻き上げ、自信満々に言った。

「いつでもいいぜ」


二人はいつもプレイしている定番の対戦格闘ゲームの筐体へと向かった。一対一の真剣勝負。ヒロトが選んだのは、もちろん彼の最愛のキャラクターである「シルヴィア」。対するユウトは、聖騎士「ユリウス」を選択した。


運命のゴングが鳴り響き、激しいバトルが幕を開けた! 実力は完全に互角。一瞬の隙を突いた猛攻、それを紙一重で凌ぐ鉄壁の防御、画面をド派手に彩る連続技コンボが炸裂し、第一ラウンドは劇的なヒロトの勝利で幕を閉じた!


ヒロトは勝利の雄叫びを上げて大笑いし、ユウトは悔しそうに筐体のボタンを叩いた。

「もう一回だ!」

第二ラウンドはユウトが取り返した。二人は完全にトランス状態(極限の集中)に入り、怒涛の勢いで対戦を重ねていった。気がつけばなんと、トータルで40戦を消化しており、その戦績は【20勝20敗】という信じられないタイ記録だった。


その時、他のゲームを一通り終えたシルヴィアとリカが二人の後ろに戻ってきた。ちなみに女子チームの結果は、ゲームのルールが全く分からないシルヴィアが全敗し、リカの完全勝利だった。


シルヴィアがふと大画面に目を向けると、そこにはヒロトが操作しているキャラクターの姿があった。彼女は驚きに目を見開いた。

「え……? それ、私に酷似していないか?」

隣からのぞき込んだリカが、あっと声を上げた。

「あ、これね! これは『シルヴィア』だよ。ヒロの最推し(ワイフ)キャラクターなんだ。そういえば、あいつの部屋、この子のポスターとかフィギュアだらけだったっけ」

リカはそこでハッと何かに気づき、シルヴィアの顔をじっと見つめた。

「そういえばミユキん、ヒロトから聞いたよ。ミユキんもシルヴィアのことが大好きなんだってね? なのになんで、自分の大好きなキャラクターの見た目を知らなかったの?」


その決定的な一言に、シルヴィアも、そして背後でそれを聞いていたヒロトも完全に硬直した。あまりの動揺にヒロトの手元が狂い、画面の中のシルヴィアは無惨にもユウトのユリウスに一撃を叩き込まれてK.O.となった。戦績はユウト21勝、ヒロト20勝。


ヒロトは筐体を叩いて悔しがった。

「ああクソッ! もう一回だ! 今のはノーカウントだろ!」

ユウトはニヤリと笑ってコインを入れ替えた。

「これが最後の一枚だ。泣いても笑っても次がラストバトルだな」


シルヴィアはリカの追及から逃れるため、必死に話題を変えようと、今度はユウトが使っているキャラクターを指差した。

「あ、あの……そちらにいるのは、聖騎士ユリウス様ではないか?」

レバーを握りしめているユウトが答える。

「ん? ああ、そうだよ」

シルヴィアは身を乗り出して尋ねた。

「お前も、この物語シリーズが好きなのか?」

ユウトは画面に集中しながら言った。

「まあ、人並みにはね。ユリウスのデザインは格好良くて好きだけど、ヒロトみたいにこのゲームに人生捧げてるレベルの重度のオタクってわけじゃないよ」


そして、激闘の最終ラウンドの幕が閉じた――結果はヒロトの劇的な勝利!

トータルの戦績は【21勝21敗】、奇跡的なドロー(引き分け)となった。

ヒロトは「くっそおおお!」と叫び、ユウトも「チッ、あと20戦延長するか?」と悔しがった。


そんなゲームバカ二人の後ろから、リカが容赦なく手を伸ばし、二人の首根っこ(襟元)をガシッと掴んで強引に引き剥がした。

「あんたたち、いい加減にしなさい! 他のゲームもやるって約束でしょ!」


その後は四人全員で、レースゲーム、ダンスゲーム、そしてバスケットボールのフリースローゲームなどを全力で楽しんだ。


気がつけば楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、四人がゲームセンターの外に出た頃には、空は綺麗な夕焼け(茜色)に染まっていた。全員、体力を使い果たしてクタクタでお腹もペコペコだった。

ヒロトが伸びをしながら言った。

「あー、腹減った。これからどうする?」


すると、後ろからシルヴィアがヒロトのシャツの裾をツンツンと控えめに引っ張った。

「……ヒロト」

ヒロトが振り返る。「ん? なんだよ」

シルヴィアは上目遣いで、じっと彼を見つめて言った。

「……まさか、あの約束を忘れたわけではあるまいな?」

ヒロトは首を傾げた。「約束? 何のことだっけ?」

シルヴィアは頬を膨らませて怒った。

「ピザとアイスクリームだ、この大馬鹿者!」


ヒロトはハッと手を叩いた。

「あ、忘れてたわ……。よし、みんな! 今日は俺の奢りでピザを食べに行こうぜ!」


その言葉を聞いた瞬間、全員に歓声が上がった。特に、念願のピザにありつけるシルヴィアは、満面の笑みを浮かべて誰よりも大喜びしていた。



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