春のお茶会での喜劇② 後半ストゥデミア視点
オイドクシ公爵令嬢がやってきたことに気づき、フロリアナの前にあった挨拶の列は新人のために開けられていたにもかかわらず、その行動を無視し、第二王子に媚びを売りに行く姿に、良識がある子息令嬢がいい顔をするわけがありません。
そして、第二王子をまだ狙っている令嬢も、第二王子を名前で呼ぶオイドクシ公爵令嬢をよく思うわけもなく、鋭い視線が向けられています。
「ルベニウス様、この間のお祭り以来ですねぇ」
「そうだな」
噂を肯定する二人の発言に、どこからともかく呆れたようなため息が聞こえてきました。
デビュー前の貴族の子供が保護者も護衛もつけず、第二王子をつれて街中に行くなど、常識的に考えてありえません。
高位貴族と王家にとっては、恥ともいえる事態を隠すでも誤魔化すでもなく、堂々と話すなど、とても貴族の常識が身についているとは思えませんね。
「ヴィア、わたくしってば存在感がないのでしょうか? それとも、小さな恋人の前には第一王女という身分など、何の意味もないのでしょうか?」
「まあ、フィリーってば……」
あまりにも自然に寂しそうに言うフロリアナの様子は、演技とはとても思えず、周囲の良識のある子息令嬢はより一層、第二王子とオイドクシ公爵令嬢への不信感を募らせていきます。
フトゥルムが生まれてから、フロリアナは以前よりもどこか一皮むけたように見えます。
生きることを望みながら、どこか諦めをいだき、私という存在を支えにすることで立っていたのに、今は自分の足で前に進もうとしているように思えます。
きっと、小さな命の誕生に立ち会ったことで、フロリアナの心の中で何かが変わったのかもしれません。
それなら、私は今まで以上にフロリアナと共に道を切り開き歩いていくだけですね。
「それにしても、小さな恋人は久しぶりの再会に随分夢中ですわね。第二王子殿下の周囲にいるご令嬢たちがあんな目で見ているのに、少しも気にしていらっしゃいませんわ」
「そうですね、恋する方々には周囲の視線など、少々の刺激でしかないのかもしれません」
視線の先では、オイドクシ公爵令嬢が第二王子の横にいた令嬢をおしのけ、自分の腕を第二王子の腕に絡ませました。
一層強くなる視線に気づいていないのか、気にしていないのか……。
「あっ! あっちのお菓子おいしそうですよ! あの時の庶民の味とは違って、王宮の料理人のものですし、ルベニウス様も食べなれてますよね!」
そう言って腕を引っ張ってお菓子が並んでいる場所に向かっていきました。
流石にあそこまで場所が離れていると、通常の話し声では聞き取る事が難しいですよね。
私は食事が並んでいる場所に佇んでいたアングレサイト男爵令嬢に、さりげなく視線を向けました。
ちょうどこちらに視線を向けていたのか、それとも私の視線に気づいたのか、ちょうどいいタイミングで私を見たアングレサイト男爵令嬢と目が合い、アイコンタクトを取って私はフロリアナに視線を戻しました。
■ ■ ■
タンザナイト公爵令嬢からの合図を受け、私は第二王子殿下とオイドクシ公爵令嬢に意識を向けつつ、会場に散っているジュエリアの子供に視線を投げました。
各人とアイコンタクトをしたのち、さりげなさを装って第二王子殿下たちに近づきました。
「あ~、マカロンだぁ! あたしマカロン好きなんですよねぇ。ルベニウス様は何味が好きですかぁ?」
「別に、甘いものが好きなわけじゃないから興味はない」
「ええ~? 照れなくてもいいですってぇ。スイーツ男子かわいいじゃないですかぁ」
スイーツ男子? 意味が分かるようなわからないような……。
オイドクシ公爵令嬢は相変わらず、意味不明な言葉をよくお使いになりますね。
邪魔にならず、気にされない距離だけれど、会話内容はよく聞こえる位置で、近寄って来た友人と会話をしつつ、二人を観察していると、取り皿にサーブする給仕を無視して、オイドクシ公爵令嬢が自分でマカロンをつまみ、大口を開けて食べ始めました。
淑女教育ができていないとは聞いていましたが、庶民を見ているようですね。
公爵家に入る前は男爵家の令嬢だったはずですが……、教育を受けていないのがまるわかりです。
ジンカイト伯爵夫人も随分と努力したようですが、本人にやる気がなければどうしようもないという、いい例を見ている気がします。
「ん~、おいしぃ! イチゴかなぁ? あまずっぱ~い! ルベニウス様も食べてくださいよぉ」
そう言ってさきほどと同じように自分でマカロンをつまみ———
「ぇ!?」
私と話していた友人が、思わず小さく驚愕の声を上げてしまいましたね。
気持ちはわかりますというか、お二人に注意を払っていたほとんどの人が、その顔に驚きを浮かべています。
「はい、あ~ん♡」
「……は? むぐっ!」
「んふふ、おいしいでしょ~?」
第二王子殿下の口元にマカロンを無遠慮に持って行っただけでなく、何かを言おうと口を開けた瞬間にマカロンを無理に食べさせるなんて、オイドクシ公爵令嬢は不敬で死にたいのでしょうか?
第一王女殿下に同じことをすれば、タンザナイト公爵令嬢以外は即刻周囲のジュエリアや護衛に捕縛されていますね。
もっとも、アンディア嬢やタンザナイト公爵令嬢が近くにいる限り、そんなことがそもそもできませんけどね。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




