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その果実が堕ちる前に:乙女たちへの賛歌 ~享年92歳のおばあちゃまの幼女の姿で異世界転生、ツインレイの王女を救う~  作者: 茄珠みしろ
第六章 拝啓 なりそこない様

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その命にことほぎを①

挿絵(By みてみん)

 秋はあっという間に過ぎ、12月に入るとこの国でも雪がちらつくようになりました。

 年が明ければ、王都で暮らしている大人の貴族は王宮で開かれる新年の夜会に出席しますが、子供である私たちは特に出席は義務付けられていないため、お留守番となります。

 けれど、今年はお母様も私と一緒に屋敷でお留守番することになりそうです。

 なぜなら……。


「お爺様とお父様の方が倒れそうな顔色ですね?」


 今朝がた、産気づいたお母様が産室に運ばれてから、お爺様とお父様は落ち着きなくうろついては執事に窘められ、しまいには様子を見に行こうとしてお婆様に叱られるという状況です。

 この国では男性の付き添い出産など、まだありませんからね。

 そもそも、孫はひ孫を産むときに付き添った旦那さんに対し、「騒ぐなら出ていけ!」と怒鳴ったそうです。

 まあ……怒鳴りたくなる気持ちはわかります……。

 ともあれ、原作といっていいのか、毒を盛られていないお母様の体は健康ですから、突発的なことが起きなければ特に問題はないでしょう。

 けれど、出産は何が起きるかわかりませんし、用心するにこしたことはありませんけど……この国の用心というのが、神に祈ることなのですよね……。

 いえ、いいのですよ? 安産の神だっているのですから、間違ってはいないでしょうし、私だってお母様に安産のお守りを作って渡しています。

 産室も徹底的に清潔を保ってもらうようにしていただきましたし、経験豊富な産婆と侍医がついています。

 ただ、前世で色々な知識がある身としては、医学的に神頼みだけではどうしようもないことがあるのも理解しているわけで……。


「はぁ……」


 思わずため息をついてしまうと、私が呆れたと思ったのか、お父様とお爺様がビクッと動きを止めて、錆びたブリキ人形のようにギギッと音がしそうな様子で私を見ました。


「ち、違うんだよヴィヴィアナ。これはっその……あれなんだ!」

「そうそう、わしらはレスレクシアが心配なだけで」


 聞いてもいないのに焦って言い訳をする姿は、普段威厳を重視しているお爺様たちの姿とはかけ離れていますね。

 それだけお母様の出産が心配なのでしょう。わかりますけど……

 何とも言えない気持ちで二人に視線を向けたのが悪かったのか、二人が私の受けてさらに慌てて言い訳というか、アワアワと手足を動かそうとした瞬間、バシンッとお婆様が扇子でテーブルを叩く音が響きました。

 途端に部屋には静寂と、先ほどまでとは違った緊張感が広がり、お爺様とお父様は完全に動きを止めてしまいました。


「見苦しいですわね」


 静かな、けれども不機嫌さを一切隠す気のないお婆様の声がひどく重く聞こえてしまうのは、決して気のせいではないでしょう。

 お爺様とお父様は私の方には顔を向けることが出来たのに、お婆様の方には顔を向けることができないようです。


「貴方たちがここで何をしようとも、苦心しているのはレスレクシアと、それを補助している者には届きませんわよ。当然、関係ないと無関心でいるのはもってのほかですが、気をもみすぎたところでどうにかなるものではありませんわ」


 その通りですが……そこまではっきり言うのも少し可哀相では?

 狭くはありませんが、同じ部屋をウロウロとされて煩わしく思ったのはわかりますが……もう少し言い方を考えて差し上げてもよい気がしますね。

 いえ、お婆様もお母様のお産を心配して気が立っているのでしょうが……。

 ともあれ、お爺様とお父様が動きを止めたので、私とお婆様はゆっくりと息を吐き出してから、お茶を一口いただきました。

 お母様の出産に対して、緊張と心配をしているのは私たちも同じですからね。

 経験の差で表に出さないだけです。

 ……あら? お爺様はお婆様が出産なさった時も、お母様が出産なさった時もご存じのはずですから、経験の差ではなく、産んだことがあるか無いかの差でしょうか?

 私の場合は前世での経験ですが……。


 ———ところで……。


「なぜ、フィリーはともかく皇帝陛下までいらっしゃるのでしょう?」


 私の言葉に、なぜか部屋の隅のソファーに無言で座っていた皇帝が、ビクリと肩をすくませました。

 最初はお婆様の向かいに座っていたはずなのですが、いつの間にか隅に移動していたのですよね……。

 ちなみに、ずっと無言で緊張していますが、フロリアナはずっと私の腕にしがみついています。

 そろそろ私の腕がしびれて……というか血が止まるのではないかという気もしますが、言わないでおきましょう。


「ヴィヴィアナ、皇帝陛下……いえ、お兄様のことは気にしないでよろしいですわ。どうせ第一王女殿下やヴィヴィアナの出産には立ち会えなかったのを、今更悔やんでいるだけでしてよ」


 いえ、フロリアナが生まれる時はともかく、姪とはいえお母様が私を産むときに立ち会うことは、おかしいのですよね?

 それでいけば、今回ここにいるのもおかしいのですが……、本当にどうしていらっしゃるのでしょうか?

 そんなことを想いつつも、ちらりと私の腕にしがみついているフロリアナに視線を向けます。

 ガチガチに緊張した体は、お茶やお菓子を進めても無言で拒否し、ただひたすら目を閉じて耐え忍んでいるようです。

 ある意味、お爺様とお父様以上に緊張しているのではないでしょうか?

 お母様が産気づき、知らせを受けてフロリアナたちがこの屋敷に来てからもう4時間は経っていますよね。

 お婆様と私は適度にお茶を飲んだり、軽食を食べたりしていますが、フロリアナたちは飲まず食わずです……。

 流石にだめなのではないでしょうか?

 フロリアナの顔色が悪くなり始めているのも、緊張だけが原因ではないかもしれません。


「えっと、フィリー?」


 いい加減なにか口にした方が、と言いかけた時、私たちの耳に大きな嬰児の泣き声が聞こえ、全員が無意識に息を止めた数泊後、やっと私とフロリアナが同時に震える息を吐き出した直後、お父様がテーブルに大きく音を立ててぶつかりながら、部屋を飛び出していきました。


よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。


あ、この作品のPVあります。

見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)


↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!

https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB


↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)

https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r

https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL

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