一歩を踏み出しましょう
まず私たちが今後成すべきこと、それは夢の中でも話しましたが、現実でいかに親しい仲であるかを周囲に認識させることでしょう。
幸いなことに、フロリアナは私と同じ時期に記憶を取り戻し、すでに実母と同母兄の元を離れ、異母兄とその母親である皇女に保護されている状態だという。
「本当に賭けでしたわ。こんな早い時期に記憶を取り戻すなんてありませんでしたもの。けれども、だからこそ脱出が容易だったのかもしれませんわね」
どこか達観したように話すフロリアナに、私はそれもそうだろうと苦笑を浮かべてしまう。
私という存在が目覚めるまでのヴィヴィアナと同じように、記憶が戻る前のフロリアナは実母とその配下の言うことを聞き、ひどい扱いを受けてもなにも文句を言えないお人形のような子供だったそうです。
そんな子供だからこそ、ふいをついて実母のいる離宮を脱走し、異母兄とその実母の住まう本宮に逃げ込んだ。
「あの時のお兄様のお顔は、今思い出しても複雑そうでしたね」
ぼろきれをまとった子供はさぞ不審者に見えたのでしょうね、と笑うフロリアナに、私もその場面をぜひ見てみたかったものですと笑う。
被っていたぼろきれを取れば、ボロボロの、それこそ下層で暮らす下民が着るようなぼろぼろ服をまとった、骨と皮のような体の子供が現れた。
けれども、汚れてくすんでいるとはいえその髪の色も、見上げてくる瞳の色も間違いなく自分と同じものだと理解した時、異母兄である第一王子は何とも言えない複雑な感情を目に宿したそうです。
だって、時折見かけていた異母弟の第二王子はちゃんと王族らしい格好をして、健康そうな体つきでいかにも愛されているという様子だったのに、初めて目にした異母妹の第一王女はボロボロで、明らかに大切にされていないとわかるのですから、混乱もするでしょう。
「わたくし、すぐにお兄様に助けを求めましたの。経験上、お兄様が同じ色を持つわたくしに甘いと、わかっていましたから」
それはループを繰り返すうちに理解したことなのでしょう。
フロリアナはどこか寂しそうに、けれどもそれは幸せなことなのかもしれないという複雑な表情をしています。
王位継承権を持つ色を完璧に持っているからこそ、実母と同母兄に疎まれているという事実もまた、経験上知っているのですものね。
「本宮に移ってからも、いろいろありました。あの母親は、わたくしに支給されていたお金を自分のものにしていましたから、使えなくなると知って当然文句を言いに来たそうですわ」
それを追い返したのは、お金の流れを調べた異母兄の母親、つまりは皇女だそうです。
栄養失調という医師の診断書も付けて、正式に皇帝から養育権を皇女に移すように命じさせたと聞きました。
私がタンザナイト公爵家に籍を移すように努力している間、フロリアナもしっかりと動いていたんですよね。
そう考えると、なんだか嬉しくなってしまうのはどうしてでしょう?
「それにしても、これからどうしたらよろしいのかしら」
「どうしたら、とは?」
フロリアナとしては、今日はお茶会があったからこうして会うことが出来たけれど、今後はどうやって会う機会を作ればいいのかと困ったように眉を寄せてしまいます。
私的にはそんなに難しく考えなくてもいいと思うのですが、繰り返しの記憶に私と子供の頃に親しくしたことがないから、わからないというところなのでしょう。
「簡単な方法があるのですけど」
「え?」
私の言葉にフロリアナが疑問の声を上げた時、ドアがノックされ、皇女の訪問を知らせて来た。
ちょうどいいと私はフロリアナに頷き、フロリアナが「ぜひお入りください」と声に出したことで、侍女に伴われた皇女が入室してきました。
音もなく立ち上がった私とフロリアナが淑女の礼をすれば、すぐに頭を上げるように言われた。
頭を上げてすぐに私を一瞥した皇女の瞳に、私は内心で流石だと感心してしまう。
その視線は、この私を品定めしたものに間違いなく、可愛がっているフロリアナに近づく私を確認したのでしょう。
そのあと微笑まれた顔に、どうやら合格を出されたと察した私は、にこりと子供らしい柔らかい笑みを皇女に向けました。
「あなた方、お茶会を抜け出して二人で盛り上がるのはほどほどになさいね」
「申し訳ありません、お母様」
「申し訳ありません、皇女殿下」
揃って頭を下げた私たちに、皇女はクスクスと笑い、「一緒に会場に戻ってあげなさい」と言った後に、私に向かい「これからもフロリアナと仲良くしてあげて頂戴ね」と言ってきてくれます。
そのまま皇女は部屋を出ていきましたが、フロリアナはキョトンと閉まった扉を見つめていました。
「どうしました?」
「えっと、どういう……?」
困惑したようなフロリアナに私はクスクス笑いかけました。
「皇女様が私をフィリーの話し相手、要するにご友人だと認めて下さったのですよ」
「…………あ、そういうことですのね」
少し混乱したけれど、すぐに理解したのか、フロリアナはほっとしたように息を吐き出しました。
「ではフィリー、皇女殿下にも言われましたし、戻しましょうか?」
私は手をフロリアナに向かって差し出しました。
フロリアナは私の手をしっかりと掴み、作り物ではない本物の笑みを浮かべます。
「「いきましょう」」
私とフロリアナは同時にそう声に出すと、どこか不敵な笑みを浮かべ合いました。
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あ、この作品のPVあります。
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↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
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