触れ合うぬくもり
一筋だけ涙を流したフロリアナは、それでもどこか夢の延長線だと思っているのか、その眼には不安の色が浮かんでいます。
「そちらに行ってもいいですか?」
「え? あ、ええ……どうぞ」
戸惑いながらも頷いたフロリアナを確認して、私は立ち上がって間にあるテーブルを回りこんでフロリアナのすぐ横に並ぶように座りました。
かすかな衣擦れと、私の体重を受け止めるソファーの音が静かな部屋に響き、この場に二人しかいないのだと改めて実感できてしまいますね。
私の行動に驚いたように目を大きくしたフロリアナですけれど、私はにっこり微笑んでフロリアナの手を握りしめます。
「私はちゃんとここにいますよ」
「っ……ええ、……ええ……温かいですわ。夢の中と同じ……。とても、温かい」
握りしめた手を空いている方の手で上から重ねるようにフロリアナが握りしめたので、私もその上からさらに手を重ねます。
どちらからともなく、額を寄せ合うように顔を傾け、互いのぬくもりを確認してしまいます。
今ここが夢の中ではなく現実なのだと自分たちの心と体に教え込むように……。
「……ねぇ、夢の中と同じようにフィリーと呼んでもいいですか?」
「もちろんですわ。なら、わたくしはヴィアと呼んでもよろしくて?」
「当たり前ですよ」
至近距離すぎてお互いの顔がぼやけて見えるのすらどこかおかしくて、そんなことを話しながらどちらからともなくクスクスと笑い声が漏れだしてしまいます。
こうして笑い合う時間はとても幸せだけれど、今は時間が有限なことも忘れるわけにはいきませんね。
本当に、もったいないけれど、こうした時間はまた作ればいいだけです。
「フィリー」
すっと顔を離し、真剣な声を出した私になにか感じ取ったのか、フロリアナも顔を戻すと真剣な色を目に浮かべます。
ああ、そうしていると貴女の目の色は本当に綺麗に輝きを放ちますね。
絶望に曇るよりずっとずっとすてきですよ。
何度もループを繰り返した貴女の輝きは、曇らせていいものではないのですから。
「先日、アウリティアが母親ともども、オイドクシ公爵家に正式に籍を入れました。ご存じですね?」
私の言葉に、緊張したようにフロリアナが頷きます。
「ヴィアのお母様と死別したわけではないから、いつもより早い再婚になりましたわね」
そもそも、フロリアナがこの年齢に巻き戻る事が初めてだと夢で話していたことを思い出す。
何もかもが想定外なのか予定調和なのか……。
「接触はありましたか?」
心配そうに尋ねてくるフロリアナに私は静かに首を横に振りました。
「以前婚姻関係にあったとはいえ、今は縁を切った家です。オイドクシ公爵家では我がタンザナイト公爵家に簡単にアポイントはとれませんよ」
そう、同じ公爵家でもタンザナイト公爵家とオイドクシ公爵家では格が違いすぎるのですから。
しかも、オイドクシ公爵は私に毒を盛っていた侍女を黙認していたという事実は、貴族の間ではもはや周知の事実。
愛人とその娘を迎え入れるために、ないがしろにした。挙句の果てに妻の殺害も企てていた。
よくもまあ、処罰されなかったですね。一応未遂なのと、訴えない代わりに完全に縁を切ると条件を出したからでしょう。
「そうですか……けれども今の時点でわたくしの知っているどの流れとも異なっておりますわ。これから何が起きるのか……」
重ねられたままの手に力が入ったのを感じ取り、私は安心させるように笑みを浮かべました。
その目に恐怖や絶望が浮かんだのを私は見逃しませんでしたよ。
過去の記憶が貴女を離さないのは理解しています。けれど、それごと貴女という存在を作り上げる大切なものだと私は思います。
だって、だからこそ私たちはこうして出会っているのですから。
少しだけ冷えたフロリアナの手に、自分の体温を移すようにほんの僅かだけ力を込めて握りしめました。
「異なる流れでいいのですよ。だって、私たちは未来を変えるために、今こうしているのですから」
私の言葉にはっとしたようにフロリアナが息を呑んで、泣きそうに微笑みました。
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あ、この作品のPVあります。
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↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
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