重陽の節句イベント①
「そろそろ重陽の節句ですわね」
いつものように、原古神語の授業の後にお茶をしていた時、ふとフロリアナがそう呟きました。
七夕の節句は豊穣と技術の向上を祈願するのに対し、重陽の節句は無病息災祈願や収穫された作物などを使用し、王宮が支援し各所で屋台などが出されるお祭りに近いものになっています。
(……菊は我が家にありますが、栗はまだ収穫できないですね。領地の方から送っていただいても、お米がありませんし)
栗ご飯が恋しいと思いつつも、私はにっこりと微笑み、フロリアナのつぶやきに頷きます。
「王宮の外にもいろいろなお店が出るそうで、ヴェスペリオンお兄様が視察という名目で、遊びにいくそうですわ」
どこか期待をするようなフロリアナの目に、私は「なるほど」と頷きました。
「けれど、ヴェスペリオンお兄様もフィリーも、……私もですが髪色や目の色が目立ってしまうのではないでしょうか?」
一緒に行きたいというフロリアナの思いは叶えたいですが、皇位継承権を持つ兄妹がうろつくのは、お祭りを楽しんでいる方々の迷惑になるのではないでしょうか?
前世でも身分の高い方が行動する際は、いろいろ制限があるなど大変でしたからね。
「ふふ、お母様からお忍び用の魔道具を貸していただけることになっておりまして、ちゃんと4人分ありますわ」
「4人分?」
「わたくしとお兄様、ヴィアとウルフェナイト小公爵の分ですわ」
「なるほど」
4人で行動するという事ですね。
それであれば大丈夫でしょうと納得し、私はフロリアナたちと重陽の節句に街に出る計画を立てることにしました。
■ ■ ■
9月9日、重陽の節句当日。
私たちは魔道具を身に着けて街に出かけました。
当然、身を隠して護衛が付いているとは聞いていますが、さっと周囲を確認してもわかりませんね。
ループの中でもフロリアナが王宮の外に出たことはほとんどなく、今日のようなお祭りに参加したことは初めてで、緊張の中にも期待が滲んでいるのがわかります。
「ヴィ、ヴィア……」
「なんでしょう?」
恐る恐るというようにフロリアナが私のローブを引っ張りました。
「あんなに大口を開けて立ちながらというか、歩きながら召し上がって……あのように食事をいただくのが、平民の皆様の普通なのでしょうか?」
フロリアナの視線の先をたどれば、フランクドックのようなものを歩きながら食べているカップルがいました。
貴族のパーティーでも、少量の食事をお皿に取り、立っていただくことはありますが、あのように歩きながらや、大きな口を開けてかぶりつくということはありませんからね。
「普通ではありませんが、珍しくはありませんよ」
私がなんと説明すればいいかと考えていると、ウルフェナイト小公爵が変わって説明してくれました。
「屋台の醍醐味というか、お祭りの醍醐味というか……。普段は平民でもちゃんとテーブルについて食事をするし、テーブルがなくてもちゃんと座って食べることがほとんどですよ」
「そうですのね」
おっかなびっくりというようなフロリアナは、私の腕をしっかりと掴み、絶対にはなれないという意志を感じます。
変にはしゃいで動き回り、迷子になられるよりずっといいですね。
「ヴェス、2人にあそこの屋台でなにか買って来てあげたら?」
「は? 何で俺が?」
不服そうに眉を顰めた第一王子ですが、ウルフェナイト小公爵になにかを耳打ちされると、意気揚々と「お兄様に任せろ!」と張り切って屋台に駆けていきました。
「なにをおっしゃったのですか?」
不思議に思い、素直にウルフェナイト小公爵に尋ねました。
すると……。
「兄の株を上げるいい機会じゃないか? と言っただけですよ」
「まあ」
悪戯が成功したような表情を浮かべたウルフェナイト小公爵に、私は苦笑してしまいます。
「護衛が見ているとはいえ、1人で行かせて大丈夫なのですか?」
「平気ですよ。初めてのことじゃないし……って、これは内緒でお願いしますね」
実は、以前からこのお祭りに参加するために、何度か変装して遊びに来ているというウルフェナイト小公爵に、護衛の皆様に対して、思わず労りの念を抱いてしまいました。
「あと、あの屋台はこの辺を見張るために警護員が出しているものですから、ね」
ウインクをしてついでのように言うので、フロリアナと共に思わず呆れてしまいました。
それはともかく、第一王子が駆けていった屋台、随分と品物の種類がありますし、4人分を1人で抱えるなんて大変でしょうに……。
「あ、僕の分は買わないだろうし、自分の分も買わないだろうから、そんなに荷物にならないと思いますよ」
私の考えを読んだように、ウルフェナイト小公爵が笑いながら言い、私たちが何かの被害に遭わないようになのか、しっかりと壁際によせて守るように立ってくれつつ、第一王子の様子を確認しています。
こういうところは、流石ですね。
「あの屋台さ、基本はシンプルなメニューなんだけど、トッピングが豊富で味がだいぶ変わるんだ」
「事前に調査ずみなのですね」
「もちろん。あの屋台は護衛のための仕込みだから当然だけど、僕たちが通る道にある店の品物は、全部確認済みだよ」
にっこりと笑って言うウルフェナイト小公爵に、抜け目のない、と内心で苦笑してしまいました。
「……ヴィア」
「どうしました?」」
私にくっついたままのフロリアナが、ぐいっと私の腕を引っ張り、第一王子が向かった屋台とは別の屋台を見ています。
視線の先には……。
「え?」
「うわぁ」
隠れて護衛がついているのかもしれませんが、子供二人で歩いているように見える、第二王子とオイドクシ公爵令嬢の姿に、私だけではなく横目で確認したらしいウルフェナイト小公爵も、思わず声を漏らしてしまいました。
フードは被っていますが、あの特徴的な赤い髪は第二王子を知る人には、わかってしまうのではないでしょうか?
オイドクシ公爵令嬢は、色味的には平民とあまり変わりませんが……平民に扮しているようですが、二人ともローブから見える服は、どうみても貴族の子供のお忍びですよね……。
「ウルフェナイト小公爵……、あの二人に護衛はついていますか?」
「…………ついているようですが、距離がありますね。あれでは咄嗟の時に動きにくいでしょうねぇ」
むしろ、護衛をまこうとしているように見えるというウルフェナイト小公爵に、私とフロリアナも、呆れた視線を二人に向けてしまいました。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




