愛される王子と愛される王女の差
私を守護している……ですか?
この世界を管理している神が私を守護しているとは思えませんが、どこの神でしょうか?
人々が神と認識している方々とは面識がありませんし……。
そう考えていると、耳の奥でシャンという鈴の音や鞘鳴りのような、どこか懐かしい音が聞こえた気がします。
(……いえ、まさかですよね)
前世では祭主も務めていましたので、神という存在はどこか身近に感じてはいましたが、異世界に来ているのですからあの方々がいるはずはありません。
(というか、ここまで執着されると些か面倒ですね)
心の中で少しだけうんざりしつつ、アストリアンに視線を向ければ、「はいはい」と言って空間を元に戻しました。
過保護という事だけを伝えたかったのでしょうか?
戻って来た音と空気に、フロリアナがゆっくりと息を吐き出したのを感じましたが、表情には出ていなくとも、あの空間は苦手なのかもしれませんね。
周囲は私たちが祝福されたことを歓迎し、この国の発展を確信しているようです。
もっとも、一部の人はそうではなく、憎々しげにこちらを見ていますが、この場で表情管理ができないなんて、三流以下ですよ。
にっこりと微笑んでこちらに負の感情を向けている方々を見れば、驚いたように一瞬表情を硬くし、ほとんどの人が視線をそらしましたが、ジャキルピット男爵令嬢だけはにっこりと笑みを返してきました。
なるほど、肝は座っているのですね。
「教皇猊下、わたくしとヴィアへの祝福、心から感謝いたしますわ。この祝福に恥じぬよう二人で歩んでまいりますわ」
ふわりと微笑んだフロリアナに、教皇が満足そうに微笑み返し、「仲良くお過ごしください」と頷きました。
その後、皇帝や皇女、第一王子がこちらに顔を出し、席は一気ににぎやかになりました。
けれども招かざる客というのは、さきほどのようにどこにでも現れるようで、ジャキルピット男爵令嬢と、その息子の第二王子が近づいてきました。
「ごきげんよう、教皇猊下。あたくしたちもお話しに混ぜていただいてもよろしいでしょうか?」
愛らしい雰囲気で話しかけてくる様子は、女狐には見えませんが、だからこそ女狐と言えますね。
「ジャキルピット男爵令嬢。お前の息子は末席に座ることを許そう。だが、お前が混ざる? 身の程をわきまえろ」
皇帝の言葉に、ジャキルピット男爵令嬢はショックを受けたように顔を歪め、一瞬泣きそうに目を細めたあと、「申し訳ございません、皇帝陛下」と深く頭を下げ、第二王子を末席に座らせると、「口は出しません。息子の保護者として残らせてください」と頭を下げました。
その様子に、皇帝は溜息をつき、皇女はクスリと笑いました。
「溺愛している息子が心配なのはわかるが、お前の息子は親が見ていないと何も話せないのか? なら、そもそもここにいない方がいい」
「っ……いえ、出過ぎた真似をいたしました」
皇帝の言葉にジャキルピット男爵令嬢が再度頭を下げ、心配と悲しそうな雰囲気を残したまま、立ち去っていきました。
残された第二王子はフロリアナを睨みつけた後、にこやかな笑みを作り、教皇に頭を下げました。
「席に着くことをお許しいただき感謝します、教皇猊下」
「…………許可を出したのは、皇帝陛下だと思うが?」
「っ! し、失礼しました。ありがとうございます、皇帝陛下」
自分の失言に顔を青くした第二王子が、皇帝に頭を下げましたが、皇帝は呆れたように視線を向けただけで、何も言いません。
フロリアナは特に何の反応もしていないように見えますが、私の手を握りしめている手がかすかに震えています。
いままでのループで受けた心の傷は、深いのでしょう。
その傷が癒えることを待つのも重要ですが、血を流しながら前に進むことも時には必要です。
(それが茨の上を歩く道であっても、火の中を進むことになっても、水に沈むことになっても、私はフィリーと共に進むだけです)
「第二王子殿下は、今どのようなお勉強をなさっておいでですか?」
さりげなさを装ってアストリアンが尋ねると、第二王子は自慢げに習っている勉強内容を話しますが、その内容に彼以外が白けた視線を向けました。
確かに、王族として最低限のマナーは身に着けたのでしょうが、お勉強はまだまだのようです。
そうですね、前世で言えば足し算が出来たことを自慢するような……あら? 年齢からすれば十分なのでしょうか?
けれども私もフロリアナも受けている教育は、中学校レベル以上のものです。
語学に関してはすでに数か国語を習い始めています。
この教育の遅れは、心配ですね。本当に講師を変えた方がいいのではないでしょうか?
「なるほど、素晴らしいですね」
アストリアンがわざとらしく褒めれば、第二王子はさらに上機嫌になりました。
「第一王女殿下は、どのような勉強を?」
「わたくしは———」
フロリアナはチラリと第二王子を見てから、アストリアンと教皇に顔を向けます。
「実は周辺諸国の言語の基礎はほとんど習得いたしましたので、最近は原古神語に興味を持っておりますの。けれどなかなかいい教本が見つからず、図書室に通い詰めておりますわ」
その言葉に教皇は「なるほど」と頷き、アストリアンを見ました。
「それでしたら、このアストリアンはいかがでしょう? 第一王女殿下と似た年齢ですし、彼は原古神語を習得しているし……、話し相手としてもいいのでは?」
教皇の言葉に、私の手を握るフロリアナの力が強くなり、無表情ながらに鋭い視線がアストリアンに向けられましたが、アストリアンは「第一王女殿下がお望みであればいくらでも。よろしければタンザナイト公爵令嬢もご一緒にいかがですか?」と微笑みました。
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あ、この作品のPVあります。
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↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
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