立場の使い方
「毒は熟成すればするほど、濃く重く……」
(前世では数年かけて毒を抜いた食べ物も……いえ、今は関係ありませんね)
アストリアンの言葉に思わずそのように考えてしまいましたが、関係ないので今は忘れましょう。
それに、毒が沈殿していく危険性はこの体がよくわかっていますからね。
予定通りの星暦であれば、生家で基本的な貴族マナーを身に着けて、社交界デビューも終えてからの公爵家への移籍だった。
けれども実際はまだろくな教育も受けることが出来ていない、そして異世界の魂が入り込んだことで、まっとうな公爵令嬢にはならないだろうとアストリアンは笑います。
「ヴィヴィアナはマナーを身に着けているが、自覚を持つ前のアウリティアはまともに教育を受けていなかった。まあ、男爵家だからな。そんなものなんだろう」
今は公爵家の娘として教育を受けているが、まともに身についていないらしく、使用人の間でも、アレならヴィヴィアナの方がましだったと言われるほどらしいです。
「では、なぜ本日の式典にアウリティア様が同席していたのでしょうか?」
「まあ! 春のお茶会デビューもしていないのに、式典に参加をしておりますの? ありえませんわ……」
フロリアナが驚きに声を大きくしましたが、アストリアンは呆れたように頷きました。
「勝手に馬車に乗り込んだらしい。許す両親もどうかと思うがな」
馬車に置いておけば、恥をかくことはないだろうにと笑うアストリアンに、確かにと私とフロリアナは頷きました。
そして、ここから面白いことになると言ったアストリアンは、私とフロリアナに元の格好に戻るように言ってから、すっと目を細めました。
その瞬間、膜が消えていくように音が戻ってきて、周囲の空気が動き始めました。
フロリアナはその感覚に驚いて私を見ましたが、私は落ち着かせるように頷き、にっこりと笑みを浮かべました。
「教皇猊下、恐れ多いとはわかっておりますが、祝福を与えたあの品物は、どのような興味をお持ちになったのですか?」
戻った空気に平然としている私を見て、フロリアナは気づかれないようにゆっくりと息を吐き、「わたくしも気になりますわ」と教皇を見ました。
私たちの問いに、教皇はゆっくりと笑みを浮かべました。
「あれは新しい技術を使用したものなのです。この節句は技能の向上を祈願するもの。それであれば、新しい技術の向上を願い、祝福をするのは当然です」
「なるほど。確かにあのガラスの器は美しいものでしたわ。いったいどこの家門の献上品なのか気になってしまいますわ」
フロリアナが無邪気を装って、尋ねると教皇は頷きました。
そして私をチラリと見てから笑みを深くすると、フロリアナに視線を戻し「どこの家門かは教えることはできませんが、今後わかるでしょう」と楽しそうに言います。
それはそうでしょう。
あのガラス細工は小さい工房でしか作られていませんが、コンドロダイト子爵家が後ろ盾です。
そして貴族というものは……お金を持っている人というものは……さらに収集家というものは、数が少ない希少品であればあるほど、手に入れたがるものです。
世界が変わったとしても、それは変わらないでしょう。
「しかし、この茶は不思議な味わいですね」
教皇はそう言ってカップを取り、一口飲んでほっと息を吐き出します。
この香り、ヨモギ茶ですね。
フロリアナは香りで気づいているのでしょう、一瞬私を見ましたが、すぐに教皇に視線を戻し、「わたくしも、この香りのお茶をいただいたことがありますわ」と微笑みました。
「おや、そうなのですか」
「なんでも、体に良い効能があるお茶と聞いておりますわ。他にもいろいろ体にいいお茶があると、教えていただきましたの。ねえ、ヴィア」
そこで無表情に近かったフロリアナが笑みを浮かべて私を見ました。
なるほど。ここでタンザナイト公爵家の品物だと宣伝したいのでしょう。
「確かに、フィリーが我が家に来た際、一緒に楽しみました。他にもいくつか我が家で所有しているお茶などについて話しました」
あくまでも我が家の品物だというのではなく、所有しているだけだとしか言わない私に、フロリアナは一瞬驚いたような表情を浮かべましたが、目だけで頷くと教皇に視線を戻しました。
「わたくし、思いますの。確かに紅茶も美味しいですが、こういった珍しいお茶もまた趣深いのではないかと。それに、教皇猊下はご存じでしょうか?」
フロリアナはゆっくりと、けれども会場に通る涼やかな声で話し始めます。
もともと注目していた人々だけではなく、目を向けていなかった人々もこちらに視線を向けました。
「わたくしたち王侯貴族には当たり前の紅茶は、平民にとっては高級品ですわ。ですが教皇猊下が祝福なさった茶葉は、野草を使用したもので、平民にも手に入りやすいでしょう」
なぜフロリアナが平民の苦労を知っているとは思いますが、いつかのループで耳に入ったのかもしれません。
教皇は頷き、「第一王女殿下はよくお勉強なさっておられる」と満足そうです。
「下知の見ながら失礼いたします教皇猊下。効能があるのなら、医学にも活用できるのではありませんか?」
アストリアンが楽しそうに教皇に声をかけると、教皇は一瞬だけハッとしたように表情を改めたあと、穏やかに微笑んで頷きました。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




