ガラス細工への挑戦②
念のためと、一人の職人が当時の契約書を持ってきていたため、お養父様がその内容を確認し、他の職人の方々にも確認をしましたが、全員が同じ書式内容で契約を結んでいるとのことでした。
「雇用される側からの契約破棄は、それまでの修行代金……、つまり勉強代という借金を一括で返さなければいけないという、職人側から契約破棄をしにくい形になっているね」
お養父様は他にも、お給金から細かく天引きされている内容を確認し、本来貰うべき給与の三分の一ほどしか支払われておらず、そこから生活費や仕事に関わる道具を調整すれば、どう頑張っても借金を返済するような貯蓄が出来るわけがないと説明してくれました。
その言葉に、職人たちは驚きの表情を浮かべ、見習いなのだから当然だと言われていたと答えています。
もう少し頑張れば、一人前に認めてもらえる、もうすぐ契約が更新されるかもしれない、と口々に言いますが、お養父様はゆっくりと首を横に振りました。
「少し調べさせて貰ったが、あの工房で一人前と言われている職人は3人。全員が工房主の親戚だったよ」
お養父様の言葉に、思い当たる節があるのか、職人たちがぐっと息をのみ込みました。
けれど、職人側から契約破棄が出来ないのは、現状ではどうしようもなく、タンザナイト公爵家が違約金を立て替えれば、オイドクシ公爵家にタンザナイト公爵家がちょっかいをかけたと、社交界では話題になってしまうでしょう。
契約書をじっくり確認しているお養父様は、「まあ、方法はある」と先ほどと同じような、相手を安心させるような笑み浮かべました。
「職人側から契約破棄を申し出れば、違約金が発生するが……。雇用主側から契約破棄を言い出せば、違約金は発生しない」
お養父様の言葉に、職人たちはきょとんとしていますが、私は「なるほど」と頷きました。
「話は変わるが、君たちの職場での評価はいかほどなのかな?」
目を細めたお養父様に、職人たちは言いにくそうに「見習いの中でも、評価は低いです」と答えました。
理由として、試作品で作るものが評価されないことが原因だそうです。
既存のものよりも薄いガラス、色を混ぜたガラス細工は、工房主や一人前と言われる職人に気に入られるはずもなく、叩き割られて「役立たず」とののしられるそうです。
「なるほどわかったよ……」
お養父様がそう言って契約書を指で軽くはじき、「では、役立たずというのなら、向こう側に追い出してもらおうか」と爽やかにはっきりとした口調でいいました。
翌日から、お養父様にアドバイスをもらった職人たちが、今までの仕事をこなしつつも、工房主に見本として提出する品物は、変わらず薄いガラスを使った色付きの品物にするようにしています。
今までならすぐに既存の商品と似たようなものに切り替え、ご機嫌を取って来ていた職人たちが態度を変えない様子に、工房主の機嫌が悪くなっているそうです。
諜報を得意とするジュエリアに依頼を出しているので、情報は確かですし、領地から新しい職人を呼び寄せる動きもあるとのことで、その方々が到着すれば、私たちが目を付けた職人は解雇されるでしょう。
「なるほど、そのようなことになっているのか」
フロリアナとのお茶会に乱入してきた第一王子に事のあらましを説明すれば、面白いと笑いました。
「確かにガラス製品はオイドクシ公爵家の得意分野だな。とはいえ、他の領地でも作成はしている。タンザナイト公爵家で事業を開始したところで、文句をいう資格はないぞ」
普通はそうですが、オイドクシ公爵家とタンザナイト公爵家では因縁がありますからね。
「問題は私どもが主体となって、ガラス工芸の店や工房を運営したとして、社交界が噂にしないわけがありません。それに、我が家は目立つことが好きではないのです」
にっこりと微笑んでいった私の言葉に、第一王子とウルフェナイト小公爵は微妙な顔をしていますが、何か言いたいことがあるのでしょうか。
「我が家としては、お婆様がデザインしてくださったガラス細工のケースを入手できれば満足なのです」
特に新しい産業を興そうとしてはいないと伝えれば、フロリアナが「うーん」と何かを考えるよう首をかしげました。
「皇帝陛下にヴィアの作る薬草の話をしたのはわたくしなのですが、そのせいで手間をかけてしまっていますのね」
しょんぼりとしているフロリアナの頭をなでながら、「そうではありませんよ」と安心させるように言います。
「こうなった原因はこちらのお爺様が孫かわいさを自慢したのがきっかけです」
どこか疲れたように言った私に、第一王子とウルフェナイト小公爵が「あー……」と遠い目をしました。
よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m
こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。
あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




