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幕間 手を取り合いともに幽冥(エレボス)へ堕ちよう

挿絵(By みてみん)

 次のループが始まるまで、あとどのぐらいの時間がかかるのだろう。

 もう何度も何度も繰り返したこの空間は、回数を重ねるごとに歪んで壊れた時計や歯車が、転がり積み重なっていく。

 数えることももうしない、出来ない。

 それは私が失った命の数だから。絶望を繰り返した数だから。


 希望を、失った数だから……。


「ごきげんいかがでしょう、フロリアナ」


 今日もまた、ふわりと青い炎の花を咲かせて聞こえてくる声。

 振り向けばきっとそこには、わたくしのせいで死んだヴィヴィアナの顔があるのかもしれない。

 これは、罪悪感が作り出した幻覚なのか、それとも、本当に次への希望が形を作りだしているのか、もうわからない。


「……そういえば知っていますか? ツインレイというのは魂の片割れという意味です。もしくは、魂の双子というそうですよ」


 双子、という言葉に赤い髪の兄を思い出し、びくりと体を震わせてしまう。


「また、アンドロギュノスという言葉は、一説によれば完全体である人間をどこかの浮気者な神が引き裂き、男女に分かれてしまい、一つに戻ろうと求め合う……とか? まあ、そちらの知識はあいにくあまりないのですが、求め合うのが魂なのか肉体なのかはともかくとして、ともにファタールを表す言葉なのでしょう」


 優しく語り掛ける言葉に、何が言いたいのかわからず、思わずため息をついてしまう。

 わたくしのため息は聞こえているはずなのに、気にすることなく背後からの言葉は途切れることはない。


「私は、フロリアナの人となりは人……、まあ便宜上人にしておきましょう。人づてに聞いただけですし、私から見える貴女は幼い小さな少女の背中だけです。いえ、後ろ姿だけですね」


 まるで振り返らないわたくしを責められているような気がして、つい胸がいたくなってしまいましたが、まだこんな感情を持っていることに少し驚いてしまいました。

 そう感じた瞬間、背後の空気が僅かに揺れたような感覚があり、クスリと笑い声がきこえました。


「ねえ、フロリアナ。私は前世に未練は何一つ残していないと思っています。だって、結婚して、子供にも孫にも恵まれて、嬉しいことにひ孫の顔も見ることができました」


 最期の方は多少物忘れがありましたが、認知症と言われる症状とまではいかず、しっかりとしていました。

 そう続けられた言葉に、未練がないなんて羨ましいと思わずこぶしを握り締めてしまいます。


「でも、後悔はありました」


 それまで穏やかだった声が、暗く沈んだように感じ、なぜかドクリと心臓が音を鳴らしました。


「私の父は、炎に焼かれ死にました。私と母を助けるために」


 あの時、私がもっと動ければ逃げ遅れず父は死ななかった。そう話す声は確かに後悔の色が滲んでいて、なぜかわたくしの胸が苦しくなります。


「母は、無事に天寿を全うしましたが、私は父と同じように炎の中死んだ……と思います」


 その部分の詳しい記憶はないのですよ。と笑った声に、それは未練にならないのかと疑問もわきましたが、先ほどとは違うふわりとした声に、無理をしている気配はなく、わたくしは深く息を吐き出しました。


「炎は全てを焼き尽くし奪うもの。けれど、父も母も言っていました。だからこそ、炎は浄化をしてくれるのだと」


 いつものように、とりとめのない意味のない会話の終着点が近づいているのかもしれない。

 そのことを最近は少し寂しいと感じてしまう。


「ねえ、フロリアナ。貴女は知っていますか?」


 何を? と口にしなくても伝わったのかはわからないけれど、後ろにいるヴィヴィアナは言葉を続ける。


「貴女のループには……この世界のループには限界があるそうです」


 その言葉に、わたくしの心臓は今度こそドクリと音を立て、ハクリと息がもれました。


「詳しい事は、正直分かりません。ループによる蓄積エネルギーがなんとか……らしいですけど、まあそれよりも……フロリアナ、貴女の魂が限界なのです」

「っ!」


 繰り返して摩耗し、歪み、ひび割れた魂は、もう限界の一歩手前で、次のループで失敗してしまえば世界と共に、完全に消滅してしまうだろうとヴィヴィアナは言う。


「だから、貴女の最後のループを私と一緒に生きましょう?」


 一人より二人で生きた方が、失敗したってきっと楽しいですよ。そう言われて、背後の空気が揺れて、またどこか懐かしい香りが鼻先をかすめていきました。


「それに失敗した時に、一人で消滅するよりも二人で消滅した方が、寂しくはないと思いますし、私はそうありたいです」


 そう言って手が伸ばされた気配を感じ、わたくしは思わず振り向いてしまう。

 何度も見たヴィヴィアナを幼くしたような姿なのに、そこにいたのはわたくしの知っているヴィヴィアナではない、強い意志を瞳に宿した少女。

 その瞳に、わたくしは息を飲み、無言で手を伸ばしていました。


よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。


あ、この作品のPVあります。

見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)


↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!

https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB


↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)

https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r

https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL

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