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ですからヨモギは雑草じゃありません

挿絵(By みてみん)

 大声と共に入室してきたのは、間違いなくこの国の皇帝……なのですが、なんでしょう……この雰囲気にはどこか覚えがあるような?


「うんうん、ヴィヴィアナにも特別にお印の花を許可し———」

「お兄様?」

「っ!」


 皇帝が決定的な一言を口に出す前に、お婆様が私たちを視界に入らないような位置に移動し、表情は見えませんが、声に圧を込めて声を掛けました。

 表情も圧を感じるものかもしれませんね。少しだけ見える皇帝の顔が、一気に青ざめています。

 ともあれ、相手が皇帝ならフロリアナに害をなすことはないでしょう。少なくとも今は……。

 咄嗟にした庇う体勢を戻し、「お婆様?」とあどけないふりをした声をかければ、お婆様の向こう側から「おお! ヴィヴィアナの声だな?」と明るい声が聞こえてきました。

 同時にお婆様のため息も……。

 スッと一歩横にずれたお婆様の横を通り過ぎ、皇帝がしっかりと私の姿を目に映しました。


「クレメンティアの子供のころにそっくりだな! その髪色も、……いや、内側はタンザナイト公爵家の色か。その瞳も歴代に類を見ない美しい色だ。うんうん、フロリアナに似合いの子じゃないか」


 一気にまくしたてられ、咄嗟にお婆様に視線を向けましたが、視線で「放っておきなさい」と言われました。


「もし君が男の子だったらフロリアナの婚約者に……いや、ヴェスペリオンが黙っていないか……。だが、君ほど完璧な相手もいないだろうに……本当にもったいない……いやいや、女性同士だからこその友情というのもやはりいいな。愛らしさが段違いだ」


 一人、うんうんと頷く皇帝ですが、気配もなく背後から接近した男性に襟首を引っ張られ、「おごっ」という声とともに後ろに反り返り、やっと発言が止まりました。


「失礼、淑女の皆様。この馬鹿……いえ、爺馬鹿が大変失礼を」

「構いませんわ、パパラチャ侯爵。お忙しいのにご足労いただきありがとうございます」


 皇女の言葉でわかりましたが、なるほど、この方が皇帝の片腕であるパパラチャ侯爵ですか。

 ペツォッタイトより赤みの強いピンク系の瞳、髪色も似た系統ですが、こちらは薄い桃色なのですね。

 似合っていますが、本当にジュエリアの髪色は色とりどりで分かりやすいですね。


「……で? 今度はどんな馬鹿をしでかしましたか?」


(馬鹿なことをした前提で話すのですね……)


 二人の間にある気安さは、第一王子とウルフェナイト小公爵の関係のように、上下関係というよりは対等だからなのかもしれません。


「お父様が、ヴィヴィアナにお印の花を許可しようとしかけたのを、叔母様がとめてくださいましたの」

「はあぁ? 馬鹿かお前、本当に馬鹿だな? 知っているけど馬鹿だな!」

「馬鹿って言う方が馬鹿だって知らないのか!?」

「うるさい、黙れ馬鹿。お印の花をタンザナイト公爵令嬢が貰ったって、本人が困るだけだろう!」


(遠慮のない関係なのですねぇ)


 微笑ましく見ていると、じっとパパラチャ侯爵の視線が私に向きました。

 軽く会釈をすれば、にっこりとした笑みを向けられ、「ご安心ください」と視線で語られました。


「なんでお印なんて大仰なものにする必要があるのです」


 急にかしこまったパパラチャ侯爵の言葉に、皇帝が「でもぉ」と拗ねたように声を出しましたが、気にせずパパラチャ侯爵が言葉を続けました。


「単純に、シンボルの花と言えばいいだけでしょう」

「……天才か、お前!」

「今知ったのか?」


 二人の会話に、私は思わずまたお婆様を見ましたが、珍しくこめかみに手を当てて深くため息をついていました。


「……ヴィアのシンボル……ヨモギかお芋ですかしら?」

「「「ヨモギ? (お)芋?」」」


 ポソリと口にしたフロリアナの言葉に、お婆様を除く3人が揃って聞き返しましたが、そんなに印象に残るほどのものでしたか?


「芋は、わかりますが……ヨモギ、とは?」

「マグワートですわ」


 フロリアナの返答に、質問したパパラチャ侯爵は「雑草……」と絶句しました。

 ですから、雑草じゃありませんよ?


「なんだ? それは」

「あー……少なくとも王宮の主だった庭園にはない……雑草ですね」


 皇帝は本当に知らないのか、「そうなのか」と不思議そうに私とフロリアナを見ますし、皇女はフロリアナの発言に私が気を悪くしないかと、不安そうな目を向けてきています。


「念のためもうしあげますが、ヨモギ……マグワートは薬効のあるハーブの一種です」


 説明後、お婆様に同意を求めるように視線を向ければ、お婆様もゆっくりと頷いてくれました。

 お婆様もハーブの栽培と食用に用いるのは、気に入っていますからね。


「ヴィヴィアナの提案で、タンザナイト公爵領での酪農改革が進んでおりますの」

「あの土地でか!?」


 皇帝が驚いたように声を出しましたが、小麦などを栽培できるような肥沃な土地ではありませんからね、驚くのも無理はないかもしれません。

 ですが、そのような場所でも育つ作物はありますし、そういう場所だからこそ生息する生物もいますからね。


「…………でも、雑草だから花じゃないですわね?」


 皇女の言葉に、ヨモギがどこまでも雑草扱いなのがなんともいえませんが、雑草に花は咲かないとでも思っているのでしょうか? と少し不安を覚えました。



よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。


あ、この作品のPVあります。

見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)


↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!

https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB


↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)

https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r

https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL

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