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準備不足は揚げ足をとられますよ

挿絵(By みてみん)

「まぁ! ジャキルピット男爵令嬢がそんな勘違いを? ふふ、あまり推測で勝手なことを公言しては、貴女の品に関わりますわ」


 皇女がやんわりと嗜めるように言えば、ジャキルピット男爵令嬢は困ったように僅かに眉を寄せ、「そうですね、今後は気を付けます」と頭を下げずに(・・・・・・)謝罪の言葉を口にしました。

 挨拶はこれで終わりか、次こそは皇女に話題を振るかと思いましたが、フロリアナに視線を向けたジャキルピット男爵令嬢は、今度は悲しげに目じりを下げました。


「元気そうね、フロリアナ」

「…………」


 声をかけられたフロリアナは無表情になり、ジャキルピット男爵令嬢から視線を外しました。

 テーブルの下でさりげなく私の方に手を伸ばしてきたので、大丈夫だと伝えるようにそっと握りしめました。


「皇女殿下が離宮から貴女を連れて行ってしまってから、とても心配していたの。でも、まさかこんなに幼いのに、このような場に連れてこられるなんて……」


 全身全霊で心配していると語るような雰囲気を出していますが、ジャキルピット男爵令嬢の目の奥は、冷淡な色を浮かべています。

 確かに、このお茶会に私たちのような年齢の子供が参加することは物珍しいでしょうが……。


「あら、ジャキルピット男爵令嬢はご存じないのかしら?」


 フロリアナにかけられた言葉に答えたのは、皇女でした。

 ジャキルピット男爵令嬢の視線が皇女に向いた瞬間、その目の奥に浮かぶ冷淡さに、憎悪の色が加わったのを感じます。

 同じように感じ取ったのか、フロリアナが少しだけ手を握り締める力を強めました。


「このお茶会は、主催者が招待することこそが参加資格ですわ。それに、各家が自信をもって当人が社交マナーを身に着けていると判断しなければ、参加辞退を申し立ててきますの。お分かりになりまして?」


 にっこりと、わかりきった常識を子供に話すように言う皇女に、ジャキルピット男爵令嬢の指先がピクリと反応しました。


「わたくしも、お母様が主催したこのお茶会に初めて参加したのは五歳の時でしたわ。ねえ、叔母様」


 皇女がにっこりとお婆様に微笑みかければ、お婆様は静かに頷きました。


「わたくしも初めてこの初夏のお茶会に参加したのは、五歳の春のお茶会デビューが済んですぐでしたわ。しっかりと教育を受けた王族なら、そのころには基本的なマナーは身に着けておりますもの」


 あくまでも、しっかりと教育を受けていれば……と、言外に滲ませたお婆様は、今度はフロリアナに視線を向けました。


「その点、第一王女殿下はマナーに何も問題はないですね。いったい、どのような講師に習ったのか……興味がありますわ。ねえ、皇女殿下」

「本当に……わたくしが養女にした時には、しっかりとマナーを身に着けておりましたわ」


 母性を浮かべ誇らしげにフロリアナを見て頷いた後、皇女はゆっくりと視線をジャキルピット男爵令嬢に戻しました。


「もちろん、教養費として申請はいただいておりましたが、正しく使われたとしても、あの金額ではあまりいい講師は雇えないでしょうし、離宮に淑女講師が出入りしたという記録はありませんの。不思議ですわねぇ」


 視線を受けたジャキルピット男爵令嬢は、平然と微笑み……。


「息子の教育係が、フロリアナにも教育を施してくれていました」


 親切な方ですからと、当然のことのように言いましたが、私たちだけではなく、こちらの会話を聞いていた皆さまが、ザワリと空気を揺らしました。

 それはそうでしょう。

 王女に対する教育を、王子の教育係がこなせるわけがありません。

 淑女教育と紳士教育は、全く異なるものなのですから。


「まあ!」


 そこで私は驚いて思わず、というように声を出しました。

 視線が私に集まり、見る角度によっては、私とフロリアナがテーブルの下で手を繋いでいることがわかるでしょう。


「…………なにか? タンザナイト公爵令嬢」


 ジャキルピット男爵令嬢の視線も私に向けられ、こんなところで声を出す子供を嗜めるような色を乗せたように尋ねてきましたが、私は不思議そうに首をかしげました。


「第一王子殿下の教育係は、王侯貴族の序列は教えないのでしょうか? 先日のお茶会で、フィリーよりもまるで上の立場のようにおっしゃっていました。そのような方が、淑女教育が出来るのですか?」


 あどけない子供特有の、まっすぐな質問。

 だからこそ、下手な誤魔化しは悪手にしかなりません。


(さぁ、どうお答えになるのでしょう?)


 じっとジャキルピット男爵令嬢を見つめれば、僅かに頬が動き、奥歯を噛み締めたのがわかりました。

 必死に言い訳を考えているのでしょうが、即答できない時点で手遅れですよ?


「……あの子は、妹に対する癖がまだ抜けていないのでしょうね。お恥ずかしいわ」

「それは、もしかして離宮で過ごしていた時から、第二王子殿下の方が格上だとでも思って過ごしていた、ということですか?」


 それはおかしいですよね? と私は間髪入れずに追撃の言葉を放ちました。


よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。


あ、この作品のPVあります。

見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)


↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!

https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB


↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)

https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r

https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL

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― 新着の感想 ―
しょうもないマウント取りなんぞしようとするから羽虫は叩き潰されるんだよなぁ……(笑)
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