タンザナイトの娘②
椅子に座ったお爺様は、やはりいつもきっちりと整えられている髪が乱れていて、指摘すべきかと悩みましたが、さりげなくお婆様が髪を直しました。
直されて乱れに気づいたのか、お爺様は気恥ずかしそうにお婆様に感謝を伝えます。
何でもないというようにお婆様は微笑むと、視線を私に戻したので、お爺様も私に視線を戻します。
「ヴィヴィアナ、体調はどうだ?」
声は重圧を感じるものですが、そのタンザナイトの目には心配の色が浮かんでおり、髪の乱れもあったことから、私が目覚めた知らせを受けて急いで駆けつけたのだとわかります。
「大丈夫です、お爺様。少し体が重いですけど」
「そうなのか!? すぐに侍医に診てもらおう」
慌てたように侍女に指示を出そうとするお爺様を、お婆様が「旦那様」と引き止めます。
「侍医はすでに手配済みです。わたくしたちがいるのに、していないわけがないでしょう」
「うっ」
冷静な声に、お爺様が小さく声を「そうか」と呟き、少し考えた後、「なら!」と思いついたように声を明るくします。
「食事はどうだ? 三日間も食べていないからな。水は侍女に指示を出して多少は飲ませていたが、お腹が空いただろう。お前の好きなものを用意させよう。なんでもいいぞ、好きにリクエストしなさい」
「それも手配済みですし、久しぶりの食事は固形物よりスープですよ、旦那様」
「うっ」
またもやお婆様に遮られ、お爺様はしょんぼりと肩をすくめました。
普段は威厳があるのに、お婆様の前だと形無しですね。
しばらくして食事より先に到着した侍医に診察してもらい、肉体に疲労が残っているので、栄養を取りゆっくり休むよう言われました。
食事も胃に負担のかからない物から始め、食べられるかをその都度確認しながら、食事内容を変えていくよう指示を受けました。
残念なことに、この国にはお米がないので、パン粥になるかと思いますが、嫌いではないのですが、好きかと言われるとちょっと……。
芋粥じゃだめでしょうか? 離乳食のようなものにはなりますが、パン粥よりは私的には食べやすいのですよね。
その後、届いたスープにはドロドロに煮込まれた野菜も入っていましたが、お母様が笑顔で「スープ部分だけにしましょうね」と譲らなかったため、いただくことはできませんでした。
食事後、すぐに横になるのは体に良くないと、そのまま待機している侍医の言葉もあり、クッションをたくさん置かれたベッドの上で体を起こしたまま、何があったのかを簡単に家族に話しました。
「世界を管理する神に呼び出されると、体に負荷がかかるとは以前言っていたが、ここまでとは」
お爺様が呆れたようにため息をつき、お母様がどこか怒ったように唇を尖らせているのを、横にいるお養父様が宥めています。
「それで、どのような話をしましたの?」
「時間がないとか、世界を救えとか、特に今までと変わりのないことを言われただけですね」
「……それだけでして?」
「はい」
お婆様の問いかけに素直に答えると、お婆様も呆れたようにため息をつきます。
確かに、そんな今更な情報を言うためだけに急にあの空間に呼び出された結果、三日間も目を覚まさないなど迷惑千万ですからね。
「私が寝ている間、なにか変わったことはありましたか? フィリーから連絡があったとか……他のジュエリアからなにか報告があったとか」
最後はあえて少し低い声で言えば、お爺様とお養父様が視線を合わせ、すっと私に視線を向け直しました。
「お茶会でお前が感じた視線のようなものだが、いても問題のない人物まで確認したそうだが、取り立てて怪しい動きをした者はいなかったそうだ」
「そうですか」
お爺様の言葉に、やはりあの時感じた視線は星の守護者のものだったのかと思いますが、続けられたお養父様の言葉に僅かに空気が重くなりました。
「ただし、第二王子派……というか、女狐に取り込まれているやつも数名いたのも事実だね」
「不審人物には含まれないのに、ですか?」
私の言葉にお養父様は「ああ、そうだよ」と頷きます。
警護として配置されている兵士、仕事をする使用人、皇女や第一王子、フロリアナが住まう場所にはいなくても、王宮の中にはどうしてもそういう派閥がいるそうです。
「……皇女殿下の夫君が、女狐に誑かされているからな。このままいけばあの男は皇帝だ。皇女殿下との夫婦仲が冷めきっていることは有名で、寵愛を受けている女狐について、甘い汁を吸おうとでもしているのだろう」
愚かしいことだとお爺様が冷たく言い放ち、お婆様もため息をつきます。
王女であったお婆様は、この中で王家の役目を何よりも理解していますから、皇女の夫君が皇帝になったところで、短い間のお飾りになるだけなのにと、呆れているのでしょう。
「でも、まあそういうヤツラも、不審な行動はなかったそうだよ。どちらかといえば、気になる行動があったのは第二王子と……女狐だ」
お爺様の言葉は重く響き、私はどういうことかと問いかけようとしましたが、ぐらりと視界が揺れて横に倒れ込みそうになるのを、咄嗟にお母様が支えてくれました。
「ありがとう、ござい……ます」
聞くべきことも、確認すべきこともあるのに、あの空間にいた体への影響はまだ回復しておらず、侍医にもうこのまま休むように厳命を受ける羽目になってしまいました。
なによりも、お母様がお爺様とお養父様を睨みながら、疲れている子供に無理をさせないように怒っていますからね。
お母様の体調も考えて、今日は大人しくしておきましょう。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
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