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タンザナイトの娘①

挿絵(By みてみん)

 純白と静寂が支配する空間にいた私は、喉が渇くような感覚に、神に文句を言おうと口を開こうとしました。

 その瞬間、純白の世界を遮るよう音もなく、霧雨が広がり私の意識は溶け込んでいくような重みを感じ、ゆっくりと沈んでいきました。


 次の瞬間はしっかりと体の重さを自覚でき……いえ、いささか重すぎるような気がします。

 体が動かせないほどではありませんが、動くのが億劫に思えます。


「はぁ……」


 それでも起きなければ、と深く息を吐き出せば、傍にいたのか侍女が「お嬢様、お目覚めですか?」と声をかけてきました。


「はい」


 答えた声は、寝起きとはいえ思いのほか掠れていて、侍女が慌てて傍にあった吸い飲みを口元に持ってきてくれました。


(…………吸い飲み?)


 水を一口飲んでから、私の部屋にそんなものは常備していないのに、と思いましたが、侍女はすぐに「皆様を呼んできます」と吸い飲みをサイドテーブルに置きながら言い、すぐさま部屋を出て行ってしまいました。

 すぐに入れ替わるように別の侍女が部屋に入ってきて、丁寧な仕草で寝たままの私の髪を整えていきます。

 まるで病人扱いのような印象に、何事かと思っていれば、勢いよく寝室のドアが開けられ、息の荒いお婆様がいつにない速さで近づいてきました。


「お婆様?」


 まだ少し掠れ声ですが、さきほどよりは幾分ましになっているのに、お婆様はなぜか目に涙を浮かべ、じっと私を見てきます。無言で……。


(なんでしょう?)



 しばらく見つめ合っていると、「きゅぅ~くるる~」と、布団の中から小さな音が聞こえ、私は思わず「う……」と恥ずかしさに、唇を尖らせてしまいました。


「はぁ……。なにか用意させますわ」

「ありがとうございます」


 深くため息をついてお婆様が侍女に、消化のいい具を使ったスープを持ってくるように伝え、今の状況と合わせて、もしや自分が思っているより寝ていたのでは、という考えに辿り着きます。


「あの、お婆様……もしかしなくても、私って」

「就寝の挨拶をしてから、三日目のお昼すぎですわね」

「あらぁ……」


 それは確かにこんな状態にもなると理解すると同時に、心配をかけてしまったことを申し訳なく思ってしまいます。

 お婆様は侍女が用意した椅子に座ると、「気分はどうですの?」と尋ねてきました。


「意識ははっきりとしていますが、体が重いです」

「後で医師に診察をさせましょう。痛みや他の不調の自覚はありまして?」

「いいえ」


 しっかりと目を見て答えれば、嘘ではないと信じてくれたのか、ゆっくりと頷いてくれました。

 浮かんでいた涙はもうなくなっていますが、安心して思わず涙が浮かんでしまったのでしょう。

 わかります、年齢を重ねると涙もろくなってしまいますよね。日常のささやかなことでも、なぜか涙がでてしまいそうになるのです。

 心の中で一人頷いていると、今度はゆっくりと寝室のドアが開き、お母様と付き添うように支えるお養父様が入室してきました。


「ヴィヴィアナっ」


 駆け寄りたいという雰囲気のお母様を、お養父様が宥めるようにしながら、お婆様がいる側とは反対側に用意された椅子に座りました。


「ヴィヴィアナ、体は大丈夫ですか? 気分は? 吐き気などはありますか?」


 かつて、生家を出る演出に使用した嘔吐の場面がお母様には少しトラウマのようで、何かにつけて吐き気はないかと尋ねられてしまうのは、本当に申し訳ないと思っています。


「大丈夫です、お母様。体が重く感じますが、それ以外の異常は自覚していません」

「自覚がないだけかもしれません。すぐに医師が来ますからね。しっかり診察をしてもらいましょう」


 お母様のご懐妊が判明してから、タンザナイト公爵家には一人だった常駐侍医が、二人に増やされています。

 確かに、お屋敷にいる人を一人で診て回るのは大変ですし、万が一の時には一人より二人ですよね。


「体が重いというなら、起き上がるのは無理かな? 頭痛を感じたりはしているかい?」

「頭痛はありませんよ。ただ、やはり体が重いので、お婆様が用意させているスープが届いてから起きても構いませんか?」


 お養父様の問いかけに困ったように眉を寄せて言えば、「当然だ」と頷かれましたが、その横でお母様が「食べても大丈夫なのですか?」と不安そうな声を出しました。

 まあ、オイドクシ公爵家から出る直前と出てしばらくは、毒のせいで臓腑が弱っていて、なかなか食事そのものを受け付けることが難しかったですからね。

 お母様はまだそのことを鮮明に覚えているから、余計に不安を感じるのでしょう。


(あの家と縁を切るためとはいえ、やりすぎたのは認めるしかありませんね)


 改めて大丈夫と伝え、もう一口水を飲もうと吸い飲みに視線を向けた時、「ドンッ」と空気が揺れるほどの音を立てて寝室のドアが開きました。

 流石に驚いて視線を向ければ、そこには髪が少々乱れたお爺様が肩で息をしています。


(走ってきたのでしょうか?)


 タンザナイト公爵家の人間たるもの、常に冷静であれ。などと常日頃口にするお爺様が? とじっと見つめれば、「ゴホン」と咳払いをして早足でベッドに近づいてきて、お婆様の隣の椅子に座りました。


よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。


あ、この作品のPVあります。

見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)


↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!

https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB


↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)

https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r

https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL

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うーん、愛されてるー(笑)
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