守護せしは…
「さあ? 試してみますか?」
そう言ってわざとらしいほどにっこりと笑みを浮かべる少女、ヴィヴィアナにこの世界の神は何をさせるつもりなのか……。
(星に関わることならしかたないけど、それが世界に関わるなら、教えておいて欲しいけどね)
自分の守護範囲は世界ではなくこの星。数多の星の守護者がそうであるように、僕も全身全霊をかけてこの星を守護する。
でも神は違う。
正確には、星に住まう人々の信仰する神ではなく、世界を管理する神はこの世界の始まりから終わりを管理している。
世界樹の集まる場所から、世界が正しく循環するように、ただ管理する。
(それなのに……この星に住まう人間に干渉した)
ありえない、いや、あってはならない。
世界を管理する神の干渉は、そのまま世界の理が歪められた時なのだから。
いまだに笑みを崩さないヴィヴィアナは、心の底からフロリアナを救う事しか考えていないようだ。
(それが本当なら……)
「その前に聞きたいね。君が守ろうとしている王女は、世界に関りがあるの?」
尋ねた瞬間、ほんのわずかだけヴィヴィアナの唇が震え、何かを言おうとした瞬間、糸の切れた人形のように力が抜け、音を立ててソファーの上に崩れ落ちた。
「ちょっ!?」
気絶でもしたのかと思ったが、それにしても唐突すぎる。
咄嗟にテーブルを乗り越えてヴィヴィアナを確認し、思わず舌打ちが漏れた。
開かれた目に先ほどまであった、青く強い炎のような揺らめきの光はなく、無機質な人形のように鈍く窓から差し込む光を反射している。
力の抜けきった体は、寝ているのかとも思えるが、そうじゃない。
「神に、持っていかれたか」
先ほどの言葉を呼び出しとでも思ったのか、それとも別の意図があったのか……。
どちらにせよ、幼い子供をこの状態で放置するのは、流石の僕でもできない。
「よっと……ええ? この年の子ってこんなに軽いものなの?」
抱き上げれば、驚くほどの軽さに驚きを通り越して不安すら感じる。
記憶が正しければ、6歳の子供ってもう少し重くなかったか?
ベッドまで運んで寝かせ、布団をかけるけど、神に呼ばれたのならしばらくの間は起きないどころか、魂が摩耗する可能性だってある。
あの世界樹の森は、ただ人が滞在するには苛烈な場所だから……。
「…………なんのためかは知らないけど、本当に……なんでそんなにあの王女に命を懸けるんだよ。こんな風に神に利用されていたら、早死にするよ?」
そう呟いて頭を撫でようと近づければ、パチンっと邪魔をするように青い静電気のようなものが走る。
(守られてはいる、ってことなのかな?)
それとも必要以上に触るなという警告か。
(…………いいね、面白い)
星暦では当面の間、星間戦争など予定されていない。
他の星からの侵入者も予定されていない。
平行次元の亀裂が発生することも、まだまだ先の話。
人の信仰する神のいさかいは終わりを迎えて久しい。
(退屈しのぎに、もうしばらく見ていよう)
ヴィヴィアナから離れて、窓を開ける。
風が吹き込み、消えていた音が動き出す。
「またね、ヴィヴィアナ」
音もなく窓から抜け出し、そのまま星の守護者のテリトリーに体を戻した。
■ ■ ■
ふと気づけば、一切の音もなく、ただ視界に広がる白に息が詰まりそうになります。
とはいえ、初めて来る場所ではありませんので「ふぅ」と、息を整えるように、深く息を吐き出しました。
「なぜ、急にこちらにお呼びになったのでしょうか」
尋ねたのに答えはなく、どうしたものかと思っていれば、チリッと髪先が音を出した気がしましたが、視線を向けても特に変化はありません。
先ほどの音以外何の音もなく静かすぎて、逆に耳鳴りがしそうな空間に、私の声だけが響いたのです。
下には純白の葉や根、左右前後には真っ白な幹や枝、上を見ても純白の葉や果実を支える枝が見えるのみ。
重力すらあるのか不安を感じてしまうような空間は、どこまでも続き終わりは見えません。
「……なにもないなら、戻りたいのですが?」
以前、ここに来た時、只人が長時間入れば、魂が摩耗すると言っていたのは、どこのだれだったでしょう?
なんて思っていると、パチンと目の前で白と緑を混ぜたような気泡がはじけるような音が響きました。
『種が、堕ちる時が始まろうとしている』
「だから私が呼ばれたのですよね」
何をいまさら、と飽きたように言えば、キンッと刃をはじいたような音がし、静寂が広がります。
ただ白い空間での静寂は、精神の修行のようですし、まるで私という存在を消そうという重みを感じます。
『世界を……フロリアナを、救ってくれ』
「世界など知りません。私は、フィリーを救いたいだけです」
彼女の状況を説明し、救ってくれといったのは貴方でしょう……。
(この世界を管理する神様)
声に出さず静寂の中で問いかければ、沈黙という名の静寂が続く。
話に聞いて、なぜあんなにフロリアナに魂が惹かれたのかは、今でもわからない。
けれども、彼女は私のツインレイなのだと、なぜか本能が、魂が理解していました。
離れない、離さない。
【今度こそ、最期まで一緒に生きていく】
音もなく風が吹いたのか、私の髪が舞い上がり、ゆらりと青い炎が花びらのように広がっていきました。
『毒は再び世界に紛れ込んだ……』
アウリティアのことでしょう。けれど、私は思うのです。
「毒とわかっているなら、早々に排除してしまえばいいではありませんか」
それが、若き命を摘むことになったとしても。
自分でもわかるほど冷たい目をして口にしても、返ってくるのは、ただただ静寂の時でした。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




